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映画『ヤクザと憲法』


花崎哲さん(「憲法を考える映画の会」)
                                                           


(C)東海テレビ放送

 ヤクザは嫌いです。ドスのきいた言葉ですごまれると、それが自分に向けられたものでないとわかっていてもドキドキしてしまいます。
 ヤクザは法律を守らないから嫌いです。法律スレスレのところで金儲けをしている、そんな印象があります。人をおどしたり、腕力にものをいわせて人を従わせている印象です。
 だからこの映画を見るのは、ちょっとためらったのですが、題名に「憲法」の文字が入っているので、見に行かなくてはならないと出かけました。

 映画を見たからといってヤクザに共感する気はあまり起きませんでした。
 でもヤクザの人たちにもいろいろ言い分はあるだろうし、法律のことで相談しなければならないから、彼らを弁護する人がいて当然と思います。
 ところがそうした弁護士が、ヤクザの弁護士の仕事をしたばっかりに摘発されて、有罪が確定し、弁護士資格を失い、仕事ができなくなるという話が映画の中で起きます。
 ヤクザ自身も何かにと理由をつけられ、(警察にでっち上げられ、とヤクザの側では言いますが)あっさり逮捕されてしまい、家宅捜索をされ、裁判で有罪になって刑に服す結果になります。ごく些細な自動車保険金をめぐるトラブルなんかでも。映画の中でもその過程が日常の中に突然入り込んできて驚かされます。

 今ヤクザの数はこの3年間で2万人が減った、全国で6万人を切ったと言われます。それは相当な数です。取り締まりの効果、抜群です。
 突然逮捕されてしまうというだけでなく、日常的にもヤクザは銀行の口座を作れない、保険に入れない、子どもが幼稚園に通えない、まっとうな仕事ができないと、どこへ行っても締め上げられているようです。ヤクザであることを隠して口座を作っただけで詐欺罪で逮捕されてしまう。ヤクザでも社会生活を営むために必要なことがあるがいろいろありますが結果、社会から「しめ出されて」しまう。排除の論理が公務員によってなされている。
 暴力団だからとひっくるめて、公務員がせっせとそうした人権を侵害しているのです。誰も反対しにくい理由をつければ、それが憲法に反していても通ってしまう、あるいは捜査や逮捕や裁判の方法が憲法の決めていることに反していても無理押ししても、それを誰も問題にしない。ヤクザだから彼らが悪いのだ、と決めて強引に押し切ることが暴力団対策法の名の下に進められています。

 「本来の人間としての基本的権利まで暴力団関係だっていうことで無視されていく社会っていうのはやっぱり怖い社会じゃないですかね」映画の中での弁護士の言葉。

 「反社会的行為」と言いますが反社会的であるということを誰がどのように決めるのか。
 いつ「反社会」という言葉が、「反国家」とすり替わって、権力に対して異議申し立てをすることも「反社会的」とされてしまうことになるか、その怖さが今の社会にあると感じます。
 そして個々のそうしたことを誰も「おかしい」と言わない、誰も守ってくれないそんな世の中がもうそこまで来ているのではないか。この映画を見ながらそんなことを考えました。直接、害が自分におよばなければ基本的人権が守られていないことにも、権力の側が憲法を守っていないことに無関心であり続ける自分に気がつきました。それは国の政策に対してもきっとでも同じでしょう。

 今、国のトップが法律のおおもとになる憲法を守っていない。それをおかしいと言っても、聞く耳を持たない、質問してもはぐらかすばかりで何の回答、説明も得られない。そのまま憲法に反する法律が次々に作られ、国民はそれに従わないと逮捕され、刑を受けなければならない。あるいは戦争に行かなければならなくなる。

 ヤクザの暮らしがどのようなものであるか、その悩みがどんなものであるか知らされることはないし、私たちは知ろうともしていない。そうした中で、排除され、人としての権利が奪われていく、その無関心が自分たちにも降りかかってくる。憲法に保障された国民の権利である平等権と生存権が脅かされています。映画のパンフレットの中でこの映画のプロデューサーが書いています。「蹂躙されているのは憲法第9条だけではない。国家権力は、第14条も先取りしてぶっ壊していると」
 映画に描かれたヤクザの人たちがやっていることには結局、最後まで共感できませんでしたが、こうしたヤクザを知ることから人権を脅かしている権力を、そして法律や憲法って何だろうと見直し、映画に「憲法」という名前を入れた制作スタッフには深く共感しました。

【公式ホームページ】

【映画情報】
プロデューサー:阿武野勝彦
撮影:中根芳樹
音楽:村井秀清
音楽プロデューサー:岡田こずえ
音響効果:久保田??根
編集:山本哲二
法律監修:安田好弘
映像協力:関西テレビ放送
監督:?方宏史
制作・配給:東海テレビ放送
配給協力:東風

1月2日よりポレポレ東中野にて、ほか全国順次公開


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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