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牡蠣工場


花崎哲さん(「憲法を考える映画の会」)
                                                           

 相田和弘監督は何日間、この牛窓に滞在していたのだろうか?
 おそらくその間の、ほとんどあまり変哲のない日常が繰り返されているこの瀬戸内海に臨む牛窓という過疎地の町の漁師の仕事場に、相田監督は日本の今の社会のさまざまな問題と世界をも映し出している。過疎化、少子高齢化、就職難、後継者問題、第一次・第二次産業の苦境、労働問題、移民の問題、そしてそこに震災の影響、グローバリズムの影などである。
 
 岡山県瀬戸内市牛窓は、瀬戸内海にのぞむ美しき万葉の町。そして岡山は広島に次ぐ、日本でも有数の牡蠣の産地である。
 はじめ相田監督は、海で魚を獲る「普通の漁師」を撮ることをイメージしてこの地を訪れたので、漁業の中味が「牡蠣工場」だったのでやや面食らった、という。「しかし観察映画には『予定』もなければ、そこから外れる『想定外』もない。」こうして第6作となる相田監督の「観察映画」の撮影が始まる。

 観察映画と呼ばれる相田監督の手法は、ナレーションがなく、音楽もなく、作為が一切ないまま、ただひたすら対象のありのままの姿をとらえていく。観客はそこに映し出されるものをひたすら見つめることになる。ところが観客は作為的に意図的につくられたものより、ずっとあれこれ想像し、そのことがかえっていろいろ考えさせることになる。
 見る者はその場に居合わせて、そこにいる人たちの話を傍らで立ち止まって聞いているような気持ちで距離がだんだんなくなっていく。

 養殖された牡蠣の殻を取り除く「むき子」の仕事は、代々地元の人々が担ってきた。しかし、かつて20軒近くあった牛窓の牡蠣工場は、いまでは6軒に減り、過疎化による労働力不足で、数年前から中国人労働者を迎え始めた工場もある。
 東日本大震災で家業の牡蠣工場が壊滅的打撃を受け、宮城県から移住してきた一家は、ここ牛窓で工場を継ぐことになった。そして2人の労働者を初めて中国から迎えることを決心した。
 映画の後半は、中国人労働者を受け入れることになった一家の不安と期待の入り交じるどぎまぎした気分ですすんでいく。
 カレンダーの脇の紙片に「9日、中国来る」と書き込まれている。中国人とは言葉が通じず、生活習慣も異なる。隣の工場の中国人の一人は、仕事や生活のつらさに耐えかねてか、5日目にして国に帰ってしまった。
 はたして今度自分たちのところへ来る中国人労働者は、あたりなのか、はずれなのか。やってきた二人にぎこちなくここでの暮らし方を案内する。彼らが素直でまじめそうなので一安心、映画を見ている私たちも、彼らを受け入れた気持ちになってほっと安心し、何だか仲良くなれそうな気がしてうれしくなっている自分に気がつく。「互いに言葉の通じ合わない相手とのコミュニケーションの、おかしみを伴った緊張が過不足なく伝えられる。」(港千尋さんの評)

 相田和弘監督は、この牛窓に18日間滞在、約90時間の撮影素材から9ヶ月間を編集に使って145分のこのドキュメンタリー映画をこしらえたと解説にあった。
 「本作では多くのドキュメンタリーが好んで扱うような過酷な貧困も搾取も社会の不正義も描かれていない。世界を揺るがした大きな事件の痕跡は垣間見えるが、事件そのものが目の前で起こるわけではない。そこに映し出されるのは、愛すべき漁師や労働者たちの淡々と続く地道な日常である。にもかかわらず、本作は「変化」についての映画だと僕は解釈している。」(相田和弘さん)「映画で世界を変えるなんて、無理なことかもしれない。しかし相田和弘監督の映画は『変わりゆく世界』の見方を教えてくれる。」(オレリー・ゴテさんの評)

劇場予告編:https://www.youtube.com/watch?v=2rLHAJktbgM
映画『牡蠣工場』公式サイト:http://www.kaki-kouba.com/
第68回 ロカルノ国際映画祭 正式招待
ナント三大陸映画祭 コンペティション部門 正式招待
バンクーバー国際映画祭 正式招待
モントリオール・ヌーヴォー・シネマ映画祭 正式招待
【映画情報】
監督・制作・撮影・編集:相田和弘
製作:柏木規与子
撮影協力:平野かき作業所 豊田水産 中丸水産 加藤水産 林かき作業所 岡山漁連
製作・宣伝・お問い合わせ:東風
2015年 日本・米国 ドキュメンタリー 145分

2016年2月20日(土)よりシアター・イメージフォーラムにてロードショー


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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