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映画『グラニート 独裁者に爪をかけろ』(原題 "Granito: How to Nail a Dictator")


花崎哲さん(「憲法を考える映画の会」)
                                                           

 中米のグアテマラで1980年代の軍事政権下で先住民族のマヤ族の虐殺がありました。その数は20万人とも言われています。軍事政権はその虐殺の事実を公表しないばかりか、認めようともしませんでした。その時の責任者である司令官はその後、大統領になっているのです。

 映画は、30年前、虐殺があったとされるグアテマラにドキュメンタリーの取材に入ったことのあるアメリカの映画ディレクター・パメラに、スペインで開かれようとしている国際法廷の関係者から協力の要請が入ったところから始まります。
 彼らは30年前に先住民族虐殺があったことを証明する証拠や証人を探していました。そしてパメラのもとには当時のグアテマラに取材した膨大なフィルムが眠っていました。
 はたして国家が長い間、隠し続けてきた虐殺の真実を明らかにし、権力のトップを虐殺の罪で訴追することができるでしょうか?作品に使わなかったフィルムを探しながら30年前の中南米、政治の混乱の中にあったグアテマラ・シティの街やゲリラが潜むというジャングルを取材した時の記憶が少しずつよみがえってきます。映画はあたかもサスペンスドラマのように緊張感をもって混沌とした、むせかえるような中南米の歴史をさかのぼっていきます。

 映画を見て、まず知りたいと思ったのは、この裁判はこの後どうなったのだろう?ということです。このような虐殺がどうして起きたのだろうということです。さらにこのような軍事政権を維持させ、民衆を弾圧させていたものは何なのかということです。

 それにしてもこの映画を見て、中南米の国々と歴史について、またそれぞれの国の「いま」がどうなっているのか、自分たちが全く知らないでいるということを痛感しました。
 この映画は、国際法廷が開かれ、いろいろな事実が暴かれていったところまでで、エンディングのタイトルで、大統領が出廷している思わせぶりな画面で終わっています。
 実際、スペインの国際法廷に大統領は出廷せず、国際法廷自体は訴追できなかったのですが、その後の2013年5月にグアテマラの裁判所はリオス・モント元将軍に対しジェノサイドと人道に対する罪で80年の刑を宣告しました。元国家元首が自国の司法制度の中でジェノサイドの罪で裁かれ、しかも有罪判決が出たというのは世界中、あるいは歴史をさかのぼっても例がありません。
 この映画を見たことから、にわかに中南米の政治と歴史に関心を持って関連書籍を読み始めました。それらからペルー、チリ、アルゼンチン等々、権力を掌握した軍事独裁政権が引き起こす弾圧には、すさまじいものがあることを知らされます。しかしそれらと闘い、民主化を勝ち取った民衆の粘り強さ、したたかさ、そしてたゆまぬ情熱にはまた目を見開かされるものがあります。
 この映画の中でも脅しや圧力にも負けず、自分たちの国の歴史の闇の部分を明らかにするために、集団埋葬された身元不明の遺体の発掘調査をしている研究者や膨大な公文書の記録に立ち向かって、虐殺が命令によって起こされたことを証明しようとする公務員、また行方不明の父親の遺志を継いで法律の道を進もうとする娘などが紹介され、その真摯さに感動させられます。そしてそうした民主化への歩みを進める彼らが因って立つものとして憲法や法律があり、また裁判所が公平に機能していることが希望に導きます。
 民主化への動き、その方法、強く負けない民衆の意志、それらをまとめていく政治にも中南米の国々からいまの私たちは学ぶことが多いのではないでしょうか。

 さて、いま私たちのこの国で、権力者が隠そうとしている歴史的真実とは何でしょうか。それらを明らかにする上で司法は有効に働くでしょうか?そしてまた私たち自身がそうしたことに目をそらそうとはしていないでしょうか?

【上映情報】
第24回「憲法を考える映画の会」の中で上映します
と き:2016年3月26日(土)13時半?16時半
ところ:東京体育館第1会議室
   (JR総武線千駄ヶ谷駅・都営地下鉄大江戸線国立競技場駅2分)
映 画:『グラニート 独裁者に爪をかけろ』+トークシェア
料 金:一般1000円・学生600円
配 給:現在、日本語版を制作された長谷川ニナさん、八木啓代さんのご紹介で日本語版の上映やDVD販売について「憲法を考える映画の会」で制作会社のSkylight Picturesに交渉しようとしています。映画の上映およびDVDをご希望の方は「憲法を考える映画」のページにお問い合わせ下さい。
【映画の詳細の案内・問合せ】
憲法を考える映画ホームページ 

【映画情報】
映画『グラニート 独裁者に爪をかけろ』(原題: "Granito: How to Nail a Dictator"))
■スタッフ
製作 : Skylight Pictures
監督 : パメラ・ウェイツ
日本語版制作:長谷川ニナ 八木啓代
2010年制作・アメリカ・スペイン・グアテマラ合作映画・105分

■受賞
2011年度「ヒューマン・ライツ・ウォッチ国際フェスティバル」オープニング上映作品
2011年度「パリ国際人権フィルム・フェスティバル」ベスト・クリエイティブ・ドキュメンタリー 作品賞
2011年 「Politics on Film」審査員特別賞
2011年 「サンダンス映画祭」公式招待作品
2014年 「Britdoc Impact Award」受賞(社会に対し最も偉大な影響を与えたドキュメンタリー映画に与えられる賞)


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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