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映画『無音の叫び声』


花崎哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 福島菊次郎さん(映画『ニッポンの嘘』)は写真を撮る という方法によって、益永スミコさん(映画『死んどるヒマはない』)は街頭に立って憲法を訴える、という方法で、そして木村迪夫さんは詩を作ることを通して「二度と戦争を繰り返してはならない」と戦後を通して反戦を訴え続けてきました。

 木村迪夫さんは1935年(昭和10年)山形県の小作農の長男として生まれました。中学を卒業する15歳の時、働き手がないから高校には通わせられないという母・祖母の反対を押し切って入った上山農高の定時制課程で「やまびこ学校」出身の佐藤等三郎と出会い、文学に目覚めます。
 20代は青年団活動の中心メンバーとして活動。以降、原水爆禁止運動、安保反対闘争、農業基本法制定反対闘争、三里塚農民の空港反対運動支援、減反反対運動、文革期の中国訪問など、長年にわたる社会運動に次々と参加していきます。そしてそれら活発な運動の時期にも、村にこだわり,村から離れることなく詩を創り続けてきました。

 木村さんの詩を時を追う形で順に読んでいくと、戦後日本の農業史が見えてきます。まさに生活の中で感じた矛盾を、個人として発したひとつひとつの活動が,社会を変革する運動につながっています。
 そのおおもとに強い意志として「反戦」の意志があります。それは子どものころ聞いた母や祖母の嘆きに根ざしています。祖母は夫と二人の息子を戦争で失いました。つまり木村さんは父と叔父と祖父を戦争で失ったのです。その嘆き、悲しみ、怒りが彼の活発な運動と詩作の出発点にあるようです。

 39歳の時に沈滞した村にすがすがしい風を呼ぼうと、三里塚の空港反対闘争を記録し続けていた小川紳介の小川プロを村に招きます。はじめ冷ややかだった村の人たちも10年をかけて村に溶け込んでの撮影は村人たちの共感を呼び、ついには村人全員が映画制作に協力することになります。
 
 映画を通してみていると、その活動は飽くことを知らない、休むことがない、と感じます。何が彼をそうさせているのでしょうか。新たな「変革」へのチャレンジであり、人々の仕事と、生活と文化、あるいは創作、次々に新しいものへ向かっていきます。そして青年の、壮年の心に映った悔しさや怒り、悲しみの感情がそれぞれの詩作に表れるのです。
 木村さんはイデオロギーとは無縁かとは思いますが、だが、ということでないが、一貫して左翼であり、革新の人です。「孤独に考えて、個から発して、革新の活動をつくっていく」力にあふれている。
 これだけいうとガチガチの闘争家、理詰めの理論家に聞こえてしまいますが、そうではありません。感情が豊かな行動家で、語り方とそのたたずまいは穏やかで、そこに話を聞く人も映像も見る人も穏やかに引き込まれてしまいます。詩作というやわらかな表現の手段をもっているからなのでしょうか。

 農村の人々の怒りは見えにくいものがあります。都市の人であれば、怒りをもった人は集まってある程度見えやすいのですが、農村に生きる人はもともと仕事、あるいは生活が広がりの中にあるので見えにくいのでしょうか。
 でも木村さんは「詩」を通してその怒りや思い、また自分たちはどう生きていくが共感という形で伝えるものをもっています。
 都市で行き詰まった特に若い人たちは農村や農業をもっと知った方が良い、個にかえって、働くとは何か、社会を変えていくというのはどういうことか、そのようなものを考えさせる映画です。まだ農業というものがまだその懐をもっているような気がします。

【映画公式サイト】
http://www.eiga-muon.net/
フェイスブック 

【映画情報】
スタッフ
監督・構成・編集:原村政樹
撮影:佐藤広一 渡辺智史 原村政樹
音楽:佐々木良純
語り:室井滋
朗読:田中泯
題字・絵画:草刈一夫
音声:佐藤広一 松田健史 渡部一徳
制作助手:松崎光博 石坂康平
写真:阿部洋子
宣伝美術:玉津俊彦 
配給宣伝協力:きろくびと
企画・制作・配給:映画「無音の叫び声」制作委員会
日本映画/2015年/122分

【上映情報】
http://www.eiga-muon.net/info2016.html
2016年4月9日よりポレポレ東中野でロードショー
順次全国上映


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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