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映画『ザ・思いやり』


花崎哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 日本が負担する在日米軍の駐留経費、通称「思いやり予算」に疑問を呈した映画がこの『ザ・思いやり』です。

 この映画を制作し、監督もしているリラン・バクレーさんはアメリカ人。バクレーさん自身も、もう16年間も米軍厚木基地の飛行ルートの下に住んでいて、夜中に飛来する軍用機の爆音で子どもが飛び起きて、泣き出してしまうというような経験をしてきました。

 映画は、バクレーさんの素朴な疑問から始まります。「東日本大震災もあり、日本の経済が困難な中で、米兵の娯楽費まで日本の税金から出している。なぜこんなに米軍を"思いや"らないといけないか?」在日米軍人の住宅や学校だけでなく、娯楽のためのゴルフ場、ファストフード店などに日本の税金が支出されている状況を解き明かします。米兵が犯罪を犯したその賠償金も日本人が働いて納めた税金からでています。これって変ですよね。

 「思いやり予算」は、1978年から始まってすでに6兆円以上が税金から投じられています。米兵1人当たりに使われている金額は年間1500万円にのぼります。こうした具体的な数字を出されると、貧困と格差をこの社会に感じている私たちは正直言って納得できません。

 そうした「思いやり」をふんだんに払って、いったい何を守ってもらっているのでしょうか?

 映画は、どうしたら問題を感じて自分たちのこととして考えてもらえるか、工夫が凝らされています。ポップでテンポの良い、ときに笑いを交えた語り口で語られていきます。表現の柔軟さは、発想の自由さ、「てらい」や「とらわれ」のなさ、上手な例え、的確な数字の示し方に感心します。取材力、フットワークの良さ、カリフォルニアでも、被災地石巻でも、基地の沖縄でも出かけていって「これって変だと思いませんか」とフレンドリーに語りかけます。

 たとえば、カリフォルニアの街頭では「このアメリカに外国の軍隊が駐留してもらい、その費用を税金から払う?自慢のカリフォルニアのビーチを埋め立てて他の国の軍事基地を作るってどう思いますか」と聞いていきます。誰もが「それは無いよね」と答えます。自分の意見を押しつけるのではなく、相手が素直にそう感じてもらうためにどのような問いかけ、仕掛けを用意すれば良いか、こうした話の持って行き方は学ぶところが多いです。
 
 「在日米軍の駐留経費」という暗く、重い話題を、あまりそうしたことは考えたがっていない人々にその気になって考えてもらうためにこうした表現の柔軟さ、明るい語り口が巧みに取り入れられています。優れたプロパガンダの映画といえるかもしれません。

 バクレーさんはなぜこのような基地の問題や在日米軍の政治の問題に関心をもつようになったのでしょうか?それはインターネットでイラクにおいて米軍が無差別殺戮をしている映像を見てからだということが語られます。身近に見ている米軍の基地、そこにいる兵士、軍人。彼らはどこで何をやっているのか?それをさせているものは何なのか?つまりバクレーさんのこうした行動の動機のおおもとにあるものは「反戦」の気持ちであることがわかってきます。

 私がいちばん印象に残ったシーンは、クリスマスにバクレーさんが送られてきたダイレクトメールを見ているシーンです。イラクで亡くなった兵士の墓にクリスマスリースを送ろうという募金の呼びかけの葉書を目にしたときのシーンです。「クリスマスリース…」バクレーさんは絶句してしまいます。丘いっぱいに並んだ十字架、ずらっと並んだ戦没者の墓の写真。何でこの若者たちは死ななければならなかったのか、心優しいバクレーさんの心の内が手に取るように伝わってきます。

 私たちは一昨年来、集団的自衛権行使容認反対、自衛隊を海外で戦争させる安保法制反対の市民運動の声を上げてきました。そのなかで、日本国憲法の下、日本の自衛隊員が海外に出て戦争に加わることによって戦争に巻き込まれることに反対してきました。しかしそれは、日本の若者さえ戦争に行かなければ良い、ということだけではないのだと思いました。

 当然のことながらバクレーさんは,全世界の若者たちが戦争に行かないようにしたいのです。アメリカの若者たちもまた殺し、殺されてはならない。もちろんイラクの、アフガニスタンの、シリアの、パレスチナの若者たちも死んではならない。戦争そのものをなくしていくことが世界の人々の願いであるはずなのだ。そのための日本国憲法だったはずじゃないか、という思いがこみあげてきました。

 私たちの国の中だけの問題としてでなく、世界中にいるそうした戦争そのものに反対していこうとしている人たちと手を携えていかなくては、いけないと思い感じさせるものがありました。

 明るいバクレーさんの深い悲しみ、それが私たちに伝わってくる映画だと思いました。

【公式ホームページ】https://zaomoiyari.com/about/

【予告編】https://www.youtube.com/watch?v=-IaAo3uvHbE

【制作スタッフ】

監督:リラン・バクレー
撮影:高尾徹 ヘンリー・バクレー
音楽:ダレン・チルトン
美術制作:岡田久幸 村永泰 
字幕協力:堀純司
出演:松本ヒロ(コメディアン) 山口洋子(思いやり予算を被災地の支援へ) 
呉東正彦(弁護士) 前泊博盛(沖縄国際大学教授)
日本映画 2015年 88分 

【上映貸し出し】
参加者数20人まで1万円、40人まで2万円、60人まで3万円、61名以上は参加者数×500円
「ザ・思いやり」事務局 メール:zaomoiyari@hotmail.co.jp
平沢清一(090-4135-2563)佐藤契(090-2625-8775)


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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