法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>

 

映画『ジョン・ラーベ 〜南京のシンドラー〜』(原題 JOHN RABE)


花崎哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 とても良くできた映画だと思いました。
 日本軍の南京侵攻に立ち向かったドイツ人、ジョン・ラーベの実録(「南京の真実 ジョン・ラーベの日記」など)をもとにしたドラマです。ナチス党員でありながらも、日本軍から南京残留の欧米人や市民を守ろうとした彼の奮闘を見つめるものです。ドラマとしての演出と演技も、主人公ジョン・ラーベ自身の苦悩と奮闘、その結果、多くの中国人を救うことになった物語を表現して見る人の気持ちを引き込んでいきます。極限状況下における人間模様に加えて、美術も当時の南京の街を始め、細やかに再現して重厚な印象を与え、それがリアリティと緊張感を高めています。

 でも見終わって何か落ち着かない気持ちをどこかにもったのも事実です。何がそうした落ち着かない気持ちにさせたのでしょう?

 この映画は、配給会社が南京事件という材料にした映画であることから上映妨害などの動きが起きることを嫌って、配給をしたがらなかった、それを市民団体が自主配給し、自主上映の形で私たちが見ることができるようになった作品です。
 私はそうした上映妨害は、表現の自由と私たちが映画を楽しむ権利(知る権利)を侵す憲法違反であり許せないと思っています。映画配給会社がそうした妨害や一方的なクレームと混乱をおそれ、配給を見合わせるということがあるとすれば、それは配給社が制作者や観客に対して向き合っていないのではないかと思ってしまい、残念に思います。

 この映画が上映されるまでのそうした事情を聞いていると、この映画を応援しなければ、という気持ちになります。でもそのことと映画の批評あるいは感じ方はまた別のことと思います。なぜ落ち着かない気持ちになったのか、私は、この映画の作り手は「何を伝えようとして,この映画を作ったのだろうか?」というところから考えてみることにしました。
 「南京の虐殺に至る混乱に巻き込まれ、中国人たちを守ったジョン・ラーベの苦悩、その活躍を描いた人間ドラマ」が作り手の意図と思います。少なくとも南京大虐殺の悲惨な事実を後世に伝えようとしてこの映画を作ることが第一目的ではなかったように思いますし、監督自身も「この映画は日本を批判するものではない」とくり返しコメントしています。
 しかし、今私たちがこの映画を見よう、あるいは見せたいとする気持ちの多くは、後者の南京大虐殺の真実をちゃんと知り、伝えていかなければならないと思うところにあるのだと思います。とくに「南京大虐殺なんて無かったことにしよう」と企図しているような人や妨害をしてまでこうした歴史があらわになっては困ると考える人がいるからなおさらその思いは強まります。そして、どうしても「真実はどちらなのか」という気持ちで、こうした映画を見ることになります。
 ところが、この映画はその表現においてはフィクションであることは明確にしています。
 主人公の苦悩や奮闘を描くためにお話を作っていく上で、虐殺の光景を描いて観客に「こんなひどいことが行われたのだ」という強い印象を持ってもらわなくては話が成り立ちません。それは史実にできるだけ忠実に即して描かれているものであっても、表現としては真実ではない。
 ここに「映像で表現する」ということと、「真実を伝える」ということの違いと難しさがあります。ドキュメンタリー映画などで、事実をカメラによってありのままを捉えたものであったとしても、撮影者によってどう切り取られたものであるか、編集者によってどのように選ばれたものか、また演出者によって作品としてどう作られたものであるか、そこの作為は当然含まれていて「ありのまま」はあり得ない、極端な場合、真実などあり得ないと言うこともあります。
 では、映画に描かれたものは、真実でないのだからそんな映画は上映されることが許せない、ということが直接・間接の妨害行動としてあってもいいものでしょうか?それは表現の自由を奪うものであるし、知る権利を奪うものになると思います。そう予測し、無難な配慮をするということだけでも自由は束縛されていきます。
 映画を配給する立場にある人にとっては映像の作り手、また観客に対して,何がいちばん大切なことであるかを考えて向き合って欲しいと思います。またいろいろな困難を予測しながら自主配給、自主上映を進めた市民団体に敬意もってエールを送りたいと思います。自主上映を進めようとしている自分たちもそれに習っていきたいものです。
 そう考えていって映画を見た後に感じた落ち着かない気持ちを少し落ち着かせることができました。この映画を是非見て欲しいと思います。いろいろなことを考えさせる映画です。

【公式ホームページ】http://johnrabe.jp/
【予告編】https://www.youtube.com/watch?v=exSppCOM6tE
【制作スタッフ】
監督・脚本:フロリアン・ガレンベルガー
製作:ベンヤミン・ヘルマン ミシャ・ホフマン ヤン・モイト
音楽:アネッテ・フォックス
出演:ウルリッヒ・トゥクレール ダニエル・ブリュール スティーヴ・ブシェミ,
  香川照之 杉本哲太

ドイツ・フランス・中国共同製作 2009年 134分 

【配給・上映貸し出し】
南京・史実を守る映画祭実行委員会(info@jijitu.com)
1回の上映につき ・会場席数100名まで 5万円 ・会場席数100名以上 10万円
【DVD販売】東風


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]