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映画『クロンビ、風が吹く』(原題 "Gureombi - The Wind Is Blowing")


花崎哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 韓国済州島(チェジュ島)のカンジョン海軍基地建設に反対する人々の闘いの記録映画です。その闘いは2007年に始まって、映画は2013年に完成しています。
 韓国海軍のカンジョン基地は2016年2月に竣工式がおこなわれました。

 反対闘争のポイント、つまり住民の怒りはいくつかの側面があります。
 一つは住民の多くにきちんとした説明をすることなしにこのカンジョン基地建設が決まって、住民が先祖代々大切に守ってきた海岸を力ずくで取り上げようとしたこと、そのことがカンジョン村の人々を分断することにもなりました。また反対する住民を強権力でもって逮捕し、刑務所に入れるやり方で反対運動つぶしが行われたこと。
 つまり手続きとやり方の問題、そこには人権侵害も公然と行われました。
 もう一つは、韓国の天然記念物保護区域やユネスコの生物圏保全地域に指定された自然の宝庫である海岸を壊し環境破壊して基地建設が進められたことへの怒りがあります。
 題名にある「クロンビ」は建設現場のカンジョン村海岸にある、長さ1.2kmにもおよぶ巨大な一枚岩の名前で、様々な絶滅危惧種などが生息する貴重な生態系がありました。
(このあたりの「カンジョン基地建設をめぐるいきさつ」については、http://amanakuni.net/gureombi/gangjeon.htmlに詳しい資料がありますのでご覧下さい。)

 さらに「平和の島」済州島に軍事基地は作りたくないという多くの住民の気持ちがあります。済州島には四三事件という悲劇の歴史があります。1954年に起きた多数の住民虐殺事件。警察や韓国政府軍によって三万人近い島民が殺された事件です。
 この事件のきっかけとなった住民蜂起は長いこと北朝鮮による陰謀とされてきましたが、2000年から真相解明が始まり、2003年にノ・ムヒョン大統領は島民に謝罪し、済州島を「平和の島」と指定しました。
 そうした中でこの海軍基地建設の裏には、中国封じ込めを狙う、それを韓国軍に肩代わりさせようとしている米軍の思惑があります。

 こうした基地反対運動のポイントと背景を見てくると、多くの人が今、沖縄の辺野古で続けられている基地建設反対の闘いを連想するのではないでしょうか。
 ちょうど同時期に進められた基地建設と、その反対闘争です。実際、辺野古とカンジョン、それぞれの基地反対闘争をする人同士の行き来もあるそうです。

 それにしてもこうした基地闘争が日本ではほとんど知られていないと思います。
 隣の国の反政府運動など、ほとんど知る機会がなかったということを強く感じます。
 韓国の国内では、この基地闘争はどのように報じられ、韓国の国民の多くはどのようにそれを受け止めている(あるいは受け止めてられていない)のか知りたいと思いました。
 もしあまり知らされていないのだとすれば、この映画の意味はとても大きかったのだと思います。

 辺野古でもたくさんの優れた記録映画、ドキュメンタリーが作られていますが、この『クロンビ、風が吹く』も、闘争が進むと共に記録映像としての質が高まっていき、伝えたいことが明確になっていったように思えました。
 まさに撮影スタッフが体を張っての撮影ですし、映画を作ること自体が、闘争そのものです。闘争が広がりをもって行くに従って、撮影者、製作者もまた成長し表現が深化していくように感じます。

 韓国の闘う人々の強さ、激しさを感じます。
 次々と闘争の中心人物が逮捕されて長いこと収監されてしまう(裁判はこの国では、いったいどうなっているのだろう)。
 でも次々と新しい中心人物が現れて闘争はさらに力を強めていく。
 「台風も味方して建設中の基地を破壊し」「台風でもないのに桟橋が壊された」という語り口には、住民の海に対しての愛情と共感を感じさせユーモアさえも感じます。

 それでもかつて軍事独裁政権の国で、ある意味では戦争中であると同じ情況にある国で、軍のやることに反対してこうした闘争を堂々とやっていける、それが共感を持って広がって行くということは驚きを感じました。
 私たちは「もし軍部が権力を握る時代になってしまったら、とてもそれに反対することなどできない」と思い込んで、あきらめ、すぐに黙り込んでしまうそうだという気がするのですが、そんなことはない、そんなことではダメだ、という思いになりました。こうした闘いに強い意志を持った国の人々に学ぶところがたくさんあると思います。
 権力の暴走に「NO!」と言っていける市民同士という立場から、もっとお互いの闘いを知り、互いに力を集めていく道を求めていきたいと思います。
 権力に対して闘って、勝ったわけではないけど、やれることはまだまだある、勝利は我らにあると感じさせる気持ちになる映画でした。

【「クロンビ、風が吹く」自主上映実行委員会ホームページ】

【映画情報】
■スタッフ
監督 : チョ・ソンボン
2013年制作・韓国映画・100分

■「クロンビ、風が吹く」自主上映実行委員会事務局:
sihomura@occn.zaq.ne.jp 080-1522-9817(松村志保)
■受賞
2013年釜山国際映画祭ドキュメンタリー競争部門「特別言及賞」受賞


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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