法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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映画『ハトは泣いている 時代の肖像』


花崎哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 いま、新しい「憲法を考える映画」ができました。表現の自由についての映画です。
 今、この国が、どのように表現の自由が守られない国になっているのか、基本的人権が脅かされている社会になっているのか、この映画は気づかせてくれます。
 この映画では2014年に相次いで起きた「都美術館彫刻撤去事件」と「さいたま市『九条』俳句事件」の二つの事件とそれに関わった人々の動きを描いています。「表現の自由」に関わる二つの事件が映画の進行とともに進み、それに関わる人と「活動」も映画とともに力強く成長していくかのように見えてきます。
 「都美術館彫刻撤去事件」は、同美術館の彫刻作家展で中垣克久さんの立体作品に添えられた現政権に批判的文言に対し、右翼からの抗議、脅しを受け、美術館側が作品の撤去を要求、撤去させられた事件です。「さいたま市『九条』俳句事件」は、公民館が「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」の句を公平中立の場である「公民館の意見と誤解される」と月報への掲載を拒否した事件です。
 両方の事件に共通しているのは、改憲に向かう政権の意向を気遣う行政に蔓延する「忖度(そんたく)」の判断です。

 しかし、都美術館から作品を撤去させられた中垣さんのその後の動き、および9条をめぐる俳句を記載しない公民館に抗議している俳句の会の人たちの活動を見ていると、ある種の「柔らかさ」が感じられます。
 中垣さんは「また撤去させられてはかなわないから」と次の作品の表現にユーモアを取り入れようとします。俳句の会の人たちも「相手は意地になっている」と相手の立場を正確に見て取ろうとします。
 そうした柔軟性がゴツゴツとしたぶつかり合いの運動とはまた違ったものを感じさせます。当面している窓口の役人が問題なのでなく、それをそうさせているのは誰なのかを見ようとしているからでしょうか。あるいはものを創り出そうとしている人のもっている柔らかさなのでしょうか。

 さいたま市の公民館の俳句会の人々は、公民館や市の当局へ不掲載の抗議、再掲載の要望、交渉を通してその発言が力強くなって説得力も増していくことがわかります。そしてこの問題は今、裁判へと進んでいます
 この表現の自由が押さえ込まれてしまうことの問題は、今まさしく私たちが抱えているこの国の憲法の問題です。

 東京都美術館で自分の彫刻を撤去させられた中垣克久さんはその彫刻をドイツで個展を開かないかと誘われてドイツに向かいます。
 そこで中垣さんは、「表現の自由」の侵害を危惧するドイツ人の反応を知ると共に、「歴史の負の遺産をどう記憶し、伝えていくか」を問い続ける国の決意を強く感じます。
 戦争を国民がきちんと受け止め処理しているドイツ、翻ってそれをしていない日本の国民との違い、そのもたらすものを強く認識します。
 戦争の加害責任をきちんと反省しなかったばかりか、戦前の強圧的な国家体制を作り、民主主義や人権を壊し、報道の自由や表現の自由、知る権利を脅かし、抑圧と弾圧への道を開こうとしている、それが今のこの国の情況ではないか。そうした自由と権利が脅かされていることに国民がきわめて鈍感であることに気がつきます。憲法で保障されている自由も権利も、自立していない国民にとって自分たちのものとして考えることができない。

 それは「そんたく」することばかり考え、「ことなかれ」に終始する行政の役人の姿にも表れています。
 公務員である彼らはどこを見て,何におびえているのというのでしょうか?そうした服従を公務員に強いて、それを支配の方法だとしてきた戦後70年の政治がそのもとにあるのではないか、そんなことを考えさせます。

 でも、中垣さんがしたたかに次の作品に向かっていきます。俳句会の人たちがあきらめることなく「公務員」の幹部を教え諭そうとしているところに、まだまだ希望がある気がします。自分たちもあきらめてはいけないと勇気づけられる思いがします。

 中垣さんの新しい作品は「立て看」が、モチーフです。
 学生時代、大学に行けば必ず見られた「立て看」が今はないことに想を得ています。
 創造と表現を大切にしている人の中から、新しい自分の表現の仕方、闘い方が作られようとしていることに力づけられます。私たちも自分の考えたことを人に向かって呼びかけていく個性的な方法である自分の「立て看」を手にしたいと思います。
 映画を作っていくこと、こうした映画を上映してより多くに人に見てもらって、考えていくことが民主的でよりよい社会、世界を作っていく私たちの方法であると,ささやかでもそうしたところから運動を始めようと思っています。

【映画の情報】
撮影:土岐昇三 谷澤明 奥井義哉
ビデオ編集:星野満
ナレーション:岡部政明
音楽:T・NANBA
歌:Mariko
企画・演出:松本武顕
制作:「時代(とき)の肖像」制作委員会
お問い合わせ:070-4227-1549 / 045-479-1424
e-mail: I_continua@yahoo.co.jp

2016年 日本映画 130分

【上映の情報】

『ハトは泣いている 時代の肖像』上映会
と き:2016年6月25日(土)13:30?17:00
ところ:さいたま市ほまれ会館(浦和市西口より10分・玉蔵院横)
料 金:1000円
※ 「9条俳句」提訴1周年の集い(「九条俳句」市民応援団主催)のなかで上映されます。

【予告編】

 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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