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映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』(原題:"CITIZENFOUR")


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 「事件を起こす」ことと「事件をとらえる」こと、そして「事件を伝える」ことが一緒になった映画です。しかも世界的な大事件です。

 1日で世界が変わる。それをこれから引き起こすことになる。いい知れない緊張感。その場に居合わせたような臨場感。引き返せないところに立っている個人の孤独。でも断崖に立っていた彼を一歩踏み出させたのは、その正義を共感したジャーナリストとディレクターです。共犯関係、あるいは共闘とでも言うべきでしょうか? 映画を観る人は、その事件が起こる前から、その現場に居合わせることになります。

(あらすじ)
2013年6月、ある内部告発で全世界に衝撃が走った。スノーデン事件……それは米国の二大諜報機関、CIA(中央情報局)、NSA(国家安全保障局)に属した若者が、国家による一般市民の通信データ収集の実態を証拠となる内部資料とともに暴露した上、自ら実名で名乗り出るという、かつて類を見ない大事件だった。
その一部始終をリアルタイムで記録した、驚くべき"時代の生の証言"が本作である。スノーデンからの接触、香港で密かに行われた独占インタビュー、スクープ記事の公表と反響、そしてスノーデンの脱出まで、一大センセーションを巻き起こした事件のすべての真相を観客は目撃することになる。国家がテロ対策と位置づけ、アップル、グーグル、フェイスブック、マイクロソフトなど世界のIT企業のサーバーに直接アクセス、そして、米最大の通信会社AT&Tから個人のデータを収集していたという現実は、私たち日本人にとっても、決して絵空事でも他人事でもない。今、この瞬間にも私たちの個人情報は違法に流出しているのかもしれないのである。(映画『シチズンフォー』チラシより) 

 彼の起こしたことは犯罪です。
 仕事で知り得た秘密や情報を、その企業が不利益を被るような形で暴露したのと同じです。でもその企業や組織が法に触れる悪質なことをやっていたとしたら?環境破壊や健康被害をもたらすものだったら、それは内部告発と呼ばれるでしょう。
 スノーデンの場合、その企業(組織)は国家です。国家という雇い主の秘密を明かしたのですが、その国家はさらに本来の雇い主の国民に対して組織的に不利益なこと(国民の通信データの収集)をしていたわけですから正義の行動と言えるのではないでしょうか。
(ふと福島菊次郎さんを描いた映画『ニッポンの嘘』の中で、福島さんが言っていた「問題自体が法を犯したものであれば報道カメラマンは法を犯してもかまわない」という言葉を思い出しました。)
 スノーデンの場合、秘密の公表と同時に自ら実名で名乗り出るという方法をとりました。その方法が、暴露が国民に届くもっとも効果的な方法と考えたこと、そして告発の信憑性を明確にする方法と考えたからでしょう。そのことによって巻き起こされる危険、のしかかってくる恐怖。それに対抗するものをジャーナリストとディレクターに求め、彼らはスノーデンを支えたのだと思います。

 ジャーナリストは、この秘密の暴露を実現した共犯者ですが、映画にするということは、それだけでない面をもっていると思いました。映画は伝えるものが違うのです。
 このような事件があったということを伝えるだけでなく、当事者たちの頭の中の動きや心の動きを観る者に想像させるのです。
 スノーデンがカーテン越しに香港の街を眺めている長〜いカットがあります。秀逸なカットです。スノーデン自身の頭と心の中に浮かぶよしなしごと、迷いやら、この取り返しのつかないことをやってしまった後に起こることの想像やら、見ている者にちゃんと伝わってくるのです。映画を観るものはその心情を察し、「自分に引き替えて」考え始めます。自分だったらどうだろうと。

 私は「企業の中の個人」「組織の中の個人」ということについて考えました。企業の利益、あるいはお金儲け、そうしたものにがんじがらめになっていて、不正を行っていても見て見ぬ振りをしたり、気にそまない「良くない」と思っていても、それでも忠実に仕事をしてしまう自分、それが蔓延している今の社会、そんなことを想像しました。
 公務員しかり、マスメディアの関係者しかり、軍事産業の従業員しかり、電力会社の社員しかり、みんなが自分たちだけの安定を求めて、何が問題か考えず、よりよい社会を作るための方向に想像が行かないのではないか?私もその中の一人です。
 「それは正しくない」そのことを国民に伝えるのは自分しかいない、そう考えたときにスノーデンは立ちあがって、それを伝えるのに何が効果的かを考え、共闘するための最良の方法をもっている人間を求めたのだと思います。

 日本でもこれから「おかしいことをおかしい」と言っていくことが、犯罪扱いされる、そうした社会になりつつある、それが今なのだと思います。秘密保護法などによって国家がどんな不正をやってもそれを告発できず、闇に葬り去られる。このスノードンの例は、それに個人が対抗していくために、綿密に用意し、力を合わせ、勇気を振り絞ることを私たちに伝えようとしています。

 今回の映画を観て、つくづく自分のプライバシーや権利意識が、自分を含めて日本では希薄というか鈍感だなと思いました。何が問題なのかさえよくわかってない。そのように権利も人権も空気のようにその存在意義を感じないでいる。そしてそのことが、権利が脅かされている人に対して想像力を働かなくさせている。そうしている間に、それら自由や権利が、権力や金持ちの手によって奪われてしまって、取り返しのつかないところに進もうとするのが今だと思います。
 そうしたところに想像を働かせ、スノードンや、文字通り身をなげうって彼と共闘したジャーナリストやディレクターの勇気に感心し、感動することから自分たちのことを考えられる映画だと思いました。

【公式ホームページ】
【予告編】

【スタッフ・キャスト】
監督・撮影・プロデューサー:ローラ・ポイトラス
制作総指揮:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:エドワード・スノーデン、ローラ・ポイトラス、グレン・グリーンウォルド
2014年/アメリカ・ドイツ/114分
第87回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞

提供:ギャガ、松竹 配給:ギャガプラス
イメージ・フォーラムほか全国順次ロードショー


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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