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映画『さとにきたらええやん』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 「子どもが親のしんどさを抱えて生きていかなきゃならないという状況は変わらない。子ども達は親が大切で、大好きな『宝』なので、親を何とかしたいといつも思っている」
 このことばに映画の中で出会って、「子どもってそうなんだ。ずっとそうだったんだ」と目を見開かされました。映画の中の子ども達の目や表情がそのことを語っています。
 貧困や家庭の崩壊など子どもをめぐる問題が問題にされる時、子どもはその被害者として「かわいそう」「恵まれない」子ども達だからと想像して、自分の尺度で片付けようとしていないでしょうか。この映画の子ども達は十分にそうした「境遇」にありますが、そんな思い込みをひっくり返すくらいのエネルギーをもっています。
 「さと」の大人たちも、また子どもたちをとらえるカメラも、「子どもたちが教えてくれる」「ここを幸せな場所にしてくれているのは子どもたちだ」「子どもたちから元気をもらう」という感じ取り方で動いています。
 そしてそれらの「子どもからもらう感動」は、映画を見ている私たちも、十分に味わわせてもらうことになります。

【映画の概要】
 大阪市西成区釜ヶ崎。"日雇い労働者の街"と呼ばれてきたこの地で38年にわたり活動を続ける「こどもの里」。
 "さと"と呼ばれるこの場所では 0歳からおおむね20歳までの子どもを、障がいの有無や国籍の区別なく無料で受け入れています。地域の児童館として学校帰りに遊びに来る子や一時的に宿泊する子、様々な事情から親元を離れている子だけでなく、子どもの親たちも休息できる場として、それぞれの家庭の事情に寄り添いながら、貴重な地域の集い場として在り続けてきました。
 本作では「こどもの里」を舞台に、ときに悩み、立ち止まりながらも力強く成長していく子どもたちと、彼らを支える職員たちに密着。子どもたちの心の揺れ動きを見つめながら、子どもも大人も抱えている「しんどさ」と格闘する人々の切実な姿を描き出しました。
(映画『さとにきたらええやん』案内チラシから)

 デメキンこと「子どもの里」の館長の荘保共子さんが倒れて入院したと聞いたときの高校生マユミちゃんのびっくりして見開かれた目。カメラはその固まった表情をとらえ続けます。「どうしよう、どうしたらよいだろう、何が出来るだろう」という考えが頭の中を駆け巡っているンだな、ということが伝わってきます。マユミちゃんにとっての「さと」という居場所やデメキンという信頼している人に対しての「何とかしなくては」という気持ちの強さが表れています。マユミちゃんは小学校の頃から「子どもの里」で生活していて、離れて暮らすお母さんのことも大好きなのです。自分にとって大切なものが何か、自分に何が出来るか考えています。

 館長の荘保さんはこの釜ヶ崎の子ども達に初めて出会った時のことを「釜ヶ崎で出会った子どもたちはけっこう言葉も荒いし、行動も賑やかだったんですけど、目の輝きが全然違っていたんです。何でこんなきれいな目をしているんだろうって。」
 この目の輝きが違うっていうのは何でなのでしょうか。それはきっと厳しさの中でも、人の痛みがわかる子ども達であるからかもしれません。
 「子ども達にはそれぞれに抱えるしんどさがあり、心が苦しいときがある。そんな時でも親や他人を思いやる優しさがあるということ。ほんとうに他人を労る心が強い」「明るいだけでない、人の痛みがわかる子ども達」…。
 
 映画を見る私も、子ども達からいろいろなことを教わることが出来る、と言うことをあらためて学びました。子どもの問題を簡単に考えてわかったつもりでいたことを気づかされました。
 さて自分は、何をするか?この映画の監督の言葉からさらに引用します「『さとにきたらええやん』は『さと的な所、さとに居るような繋がれる人がみんなにいればいいよね』というメッセージです。"さと"にくれば何とかしてくれるって、ずっと来てる子は知ってるんです。」
 この映画から得た感動をもとに、自分のまわりを見回し、自分のやれることを探して子ども達と共に社会を作っていく気持ちを持とう、子どもも大人も安心できる居場所を作っていこうと。
 ドキュメンタリーは、時代と社会に向き合って未来を考えさせます。そのことを感じさせる映画でした。

 あちこちで子どもが良く泣いています。それを隠そうともしない。ここでの大人も真剣にぶつかり合って涙を流しています。映画を見るほうも目頭が熱くなることがしばしば。何か素のままでぶつかり合う、ここに生きている人たちに感動します。その先にある、澄み切ったものを感じて素直になれる気がしました。これも子ども達が教えてくれたものかもしれません。

 釜ヶ崎で生まれたSHINGO★西成の音楽が、この街の気分を知っています。映画の冒頭、その音楽と共に肩で風を切って釜ヶ崎の街を自転車でかけ抜けて「さと」に向かう中学生のジョウくんの背中がそれを語っています。この街を知り抜いている音楽と映像が一つになってこの街と子ども達の気分の良さを語っています。

【公式ホームページ・予告編・自主上映】
http://www.sato-eeyan.com/

【スタッフ】
監督・撮影:重江良樹 
音楽:SHINGO★西成
プロデューサー・構成:大澤一生
編集:辻井潔
音響構成:渡辺丈彦
制作協力:神吉良輔、五十嵐美穂、上田昌宏、吉川諒 
機材協力:ビジュアルアーツ専門学校大阪 
特別協力:小谷忠典
助成:文化庁文化芸術振興費補助金 
企画:ガーラフィルム 
宣伝・配給協力:ウッキー・プロダクション 
製作・配給:ノンデライコ 
2015年/日本/100分

【これからの上映館】

2016年7月30日(土)〜8月12日(金)神奈川県 川崎市アートセンター
2016年8月20日(土)〜    横浜シネマジャック&ベティ
2016年7月23日(土)〜8月12日(金) 名古屋シネマテーク
2016年7月2日(土)〜8月19日(金) 大阪府第七藝術劇場
2016年7月23日(土)〜8月5日(金) 神戸アートビレッジセンター
2016年8月1日(月)〜21日(日)  広島県 横川シネマ
2016年7月30日(土)〜    福岡県KBCシネマ
2016年8月27日(土)〜9月2日(金) 愛媛県 シネマルナティック
2016年7月23日(土)〜8月19日(金) 宮崎県 宮崎キネマ館



 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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