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映画『軍旗はためく下に』 (英語名:Under the Flag of the Rising Sun)


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           


 新文芸座の「終戦の日特別企画8・15反戦・反核・映画祭」で『野火』と一緒にこの映画を見ることができました。二つの映画を見比べて、『野火』もたしかに戦場のリアリティが感じられる十分に凄みのある映画でしたが、『軍旗はためく下に』には、まだ戦争の臭いの残っている時代、人々の気持ちの中に、戦争と戦後の実感が残っていた時期の映画だと思いました。1972年の制作・公開の映画です。

【ストーリィ】
 敵前逃亡の汚名を着せられた兵士の未亡人が夫の死の真相を追及していく過程を通して軍隊の非人間性と戦争の不条理を描き出す。
 昭和27年、富樫勝男の未亡人サキエは"戦没者遺族援護法"に基づき遺族年金の請求をするが、政府はこれを却下した。理由は富樫軍曹の死亡は"敵前逃亡"による処刑で援護法の対象外というもの。しかし、"敵前逃亡"の確たる証拠はなくサキエは以来、昭和46年の今日まで夫の無罪を訴え続けていた。
 そして、ある日、サキエはついにその小さな手掛かりを手にするのだったが……。(「Yahoo!映画『軍旗はためく下に』解説」より)

 演じる役者も、脚本家も、監督も、まだ戦争がどの様なものであったか、その戦後処理や戦争責任というものについての問題意識をきちんととらえている時期の作品だと感じました。まだ戦争の記憶が体感としてわかる人たちによる演技、演出です。
 おそらくそれはこの映画を見る当時の人たちの側にとっても同じだったのだと思います。戦争に悲惨さ、非人間性、不条理さから始まって、戦争責任をきちんと取らない権力、その中にあって苦しみ続ける弱い人々など、戦争の当事者の感覚がまだ生き続けていて、そうしたことを放置している権力に対する怒り、告発する力を感じます。

 この映画を見て感じたことは、これは特別な、めったにない話ではなくて、戦場においては数限りなくあった話ではないかという思いです。
 アジア太平洋戦争の戦争犯罪を裁いた軍事法廷でB級C級戦犯の容疑で死刑判決を受けた人の数は、約1000人を超えるといいます。この映画のように軍法会議によって処刑された兵士の数は知れず、また正確な記録もなお残っていないのが現状といわれます。そのいずれもが上官の命令で軍事行動としてやったことに対して、個人が戦争犯罪人あるいは罪人とされました。ナチスのアイヒマン裁判に関わる映画の中で、「私は命令に従っただけだ」というアイヒマンの陳述がありますが、軍事行動として兵士が行った(行わざるを得なかった)「犯罪」によって命を奪われる形で責任を問われるということは、どうしようもなく行き場のない苦しみに満ちたことと思います。そして、それらは真実が明らかにされることも、見直されることもないまま放置され続けてきました。

 本来そのような理不尽は戦争に付きものと言えば付きものなのかもしれません。日本軍だけの問題でない、軍という体制の中ではどこの国にもあるものだとも言われます。
 軍事体制、戦争、戦場の現実というものを全く知らない私たちにとってこんな理不尽なことに対してどうして抵抗や反発ができなかったのかとすぐ思ってしまいますが、反対や不服従を行えば、自分自身の生存も危うくなるのが軍という組織体制です。その軍事の組織体制がいま、この国においても戦争できる国の常識として復活されようとしています。

 これまで我が国はとりあえず戦争をしない国だったので、個人が「戦争犯罪」の責任を問われることも、武器を持たない人を殺すことも70年間なかったのですが、それが今、集団的自衛権の行使による戦争をする普通の国になることで、あり得ることになろうとしています。その準備は着々と進められています。
 同じような戦場の悲劇、不条理、非人間性に満ちた軍組織体制が作られることになる、そのようなことにまでイメージを拡げるものがこの映画にはありました。

 この映画はビデオテープによって発売され絶版になって以来、DVDでの発売は一部海外で行われている以外に行われていません。インターネットなどでも「今こそ見るべき映画」とDVDでの販売を希望する声があります。
 この映画の他にも、今あらためて反戦と平和について考えることのできるすぐれた映像、映画がたくさんあると思います。そうした映画を探し、自分たちで活用し、戦争や軍事体制、戦争責任と言ったものに対して考え、あらゆる戦争に反対していく力をつけていきたいと思います。

■スタッフ
監督:深作欣二
製作:松丸青史/ 時実象平
脚本:新藤兼人 長田紀生 深作欣二
原作:結城昌治 
撮影:瀬川浩
照明:平田光治
美術:入野達弥
録音:大橋鉄矢
編集:浦岡敬一
音楽:林光

■キャスト
丹波哲郎(富樫勝男)
左幸子(富樫サキエ)
三谷昇(寺島上等兵)
夏八木勲(堺上等兵)
麦人(小針一等兵)
中村翫右衛門 江原真二郎 山本耕一

■1972年キネマ旬報ベストテン日本映画第2位
■1972年 東宝・新星映画提携作品・96分



 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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