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映画『高江−森は泣いている』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 正直言って、この映画を見るのはつらいところもありました。
 もともと気の弱い私は、若い機動隊の隊員が無抵抗の年寄りを暴力的に排除する光景を見るだけでドキドキしてしまいます。無意識に歯を食いしばってしまっています。市民はけして力での抵抗をしないとわかっていて、結果的に暴力的なことをやっている機動隊隊員を殴りかえしたいと柄にもなく感情的になってしまいます。
 でも実際の自分は、とても怖くて、あんな機動隊を前にして声を上げることすらもできないと思います。つくづくいろんな知恵を絞って、自らを奮い立たせて抵抗している、正面から抗議している人たちは「強いなあ、偉いなあ」と思います。

 この映画を見て感じるもうひとつのつらさは、なにもしないでいる自分が責められることです。こうした無法の権力の行使を見ていると、自分もなんとかしなければと思う自分と、そう思ってもいろいろと言い訳をして何もしないでいる自分とが争いを始めます。
 辺野古に行かなきゃ、高江に行かなきゃ、東京で応援の気持ちだけで動かなくていいのか、自分の中の自分が自分に責められます。沖縄に行ってがんばって活動している人に後ろめたさを感じます。
 しかしあれこれ迷った結果、こうした映画を見ることが、一緒に闘って行く第一歩なのだと気がつきました。見れば知ることになる、知れば考えることになる。どうしてこんなことが許されるのか、止めさせるにはどうしたらよいか。
 (沖縄の二つの新聞は別ですが)特に本土のメディアが今、沖縄で起きていることをほとんど報道しない中で、そのことを問題にし、知って考える人を拡げていくことが自分たちにできることなのではないだろうか、と。
 藤本監督は、映画の後のお話の中で「辺野古で、高江で起きていることは、日本のどこでも起きることになる。私たちの未来をどのように作っていくかに関わってくる」と言われていました。そう、まずは自分の問題だと考えて、これからどうしてったら良いかを考えることです。
 わたしは、人にこの映画を見せる、多くの人に映画を見てもらい、考えてもらえるようにしていくことが、沖縄に行かなくてもできることかもしれない。

 森の映画社の藤本さん、影山さんの映画はこれまで何本か見てきました。自分たちで上映したものもあります。今回は『圧殺の海 第2章』 と一緒に見たのですが、とてもモダンになってきているという印象を持ちました。以前は「闘う映画」を強く感じ、アジテーションの強さを感じてしまったのですが、今回は誰にもわかりやすいものに出来上がっていることにちょっと驚きました。気持ちを休めるかのような情緒的なシーンもあります。場面の切り替えもシャープです。編集の力でしょうか。影山さんの落ち着いたナレーションがあるからでしょうか。「早く、短く作って見てもらうことだ」と藤本さんも話しています。高江でも今、森の中で起きていることをすぐまとめて「第2章」ができるそうです。少しでも多くの人に、できるだけ早く「今沖縄で起きていること」を伝いたいという意志と使命を感じます。

 機動隊員との対峙場面では、沖縄平和運動センター事務局長の山城さんたちの呼びかけの「味」にもよりますが、どこかユーモラスな明るさもあります。そして東京や各地から市民排除のためにはるばるやってきた機動隊の若者たちに向ける視線にも、ある種、気の毒に、難儀やなといった気持ちのこもったものさえ感じます。
 若い、どちらかと言えばひ弱な感じさえ感じる機動隊員の若者たち。その戸惑いの表情に、彼らにも話せばわかるのではないかと思わせる画面もありました。しかし彼らは上からの命令で暴力を振るう。彼らに自分で考えることを禁じ、暴力を振るうことを無理強いしているのは誰なのか。
 ふと、この若者機動隊員の表情に、これから海外に派兵されようとしている自衛隊員のことが重なりました。警察官も海上保安官もいわば権力が認めた暴力装置、これがある日、軍隊に入れ替わると、彼らは確実に人を殺すことをいとわない、ひるまない、戸惑ったりしない暴力装置になる。おそらく派遣される(派兵される)南スーダンの住民から見ればそう映るのだろう。そして、そこで人を殺すことになる自衛隊員もこの機動隊員のような気弱な若者なのかもしれない。
 藤本さんが、かつて海兵隊の新兵訓練を描いた映画『One Shot One Kill』を撮影したときに、新兵達が幼い、屈託ないという印象を受けたという言葉を思い出しました。「沖縄の海兵隊員たちの顔が、それでも、なぜ幼く、屈託なく見えるのか。それは、彼らが、まだ人を殺していないからだ。戦場は、沖縄の先にある。人を殺したら、元の自分には戻れない。」という言葉が重く心に残りました。

 

監督:藤本幸久 影山あさ子
撮影:栗原良介 小田切瑞穂 藤本幸久
編集:栗原良介
音楽:海勢頭 豊
ナレーション:影山あさ子
2016年 日本映画 64分 
配給:影山事務所

ホームページ:http://america-banzai.blogspot.jp/(森の映画社 札幌編集室)

■これからの上映
◎東京・ポレポレ東中野 映画「高江-森が泣いている」10/15(土)より
◎沖縄・桜坂劇場 映画「高江-森が泣いている」10/15(土)より
◎愛知・名古屋シネマテーク 映画「高江-森が泣いている」10/29(土)より
◎兵庫・元町映画館 映画「辺野古」 10/15(土)より



 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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