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映画『あの日の声を探して』(原題:The Search)


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

チェチェン、イラク、シリア、アフガニスタン、ソマリヤや南スーダン……、この映画のような話は、生活の場が紛争や戦場になったところでは、世界中のどこでも、無数にあったことだろう、そしてそれは、今、現在も至るところで続いているのだろう。
そう想像させる映画でした。
ニュースフィルムやドキュメンタリー映像が、悲惨な戦争の現場をとらえることがあります。しかし、この映画は現場につながる人々の家族、とくに子どもたちのそれからの話を劇映画、フィクションの形で描き、そうした戦禍の中にあった人々のこころの奥底にあるものを私たちに見せてくれます。これはどこにでも、紛争や戦争のあるところで今も、これからもある話だということを見るものに強く感じさせます。

1999年、チェチェンに暮らす9歳のハジは、両親を銃殺されたショックで声を失ってしまう。姉も殺されたと思い、まだ赤ん坊の弟を見知らぬ人の家の前に捨て、一人放浪するハジ。
戦火を逃れ街へたどり着いたハジは、EUに勤めるフランス人のキャロルに拾われる。戦争を目の前に自身の無力さを痛感するキャロルは、せめてハジだけでも守ろうと決意する。(「あの日の声を探して」公式ホームページINTRO & STORY より)

チェチェン紛争を舞台に、家族を失って言葉を無くした子どもハジと、国際支援に携わる女性キャロルが出会い、心がつながり、ハジが言葉を取り戻していく話が軸にして描かれています。
その話とは別に、自由を謳歌していた穏やかなロシアの若者コーリャが兵隊に取られ、(文字通り「取られ」)異常な訓練を経て、人の心を失っていく過程がもうひとつの軸として描かれます。話が交互に進み、それがあるところでつながって交錯します。

この映画を見るまで、チェチェン紛争という名前だけは聞いていても、チェチェンでどのような戦いがあり、人々がどのようなつらい思いをしているかは想像すらできませんでした。
この映画を見て、自分は何も知らないでいたということをあらためて知りました。
おそらく劇映画という描き方ですから、ここに描かれている紛争や戦争の光景は真実ではないでしょう。作り手の意図もそこにありません。しかしだからこそ、これまでの紛争や戦争のどこにでも、数限りなくあった、そして今もこれからも繰り返されていく光景を、私たちに想像させます。家族を奪われ、未来のない苦しみの続く人々の気持ちを想像させます。それらに目を背け、自分たちだけの安定の中だけに安穏としている自分たちを認識させます。
映画は、そうした人々を苦しめている兵士そのものもまた、被害者であるということをわからせ、なんとも言えない気持ちにさせます。どちらが悪いではない、戦争そのものが悪なのです。

映画は巧みな構成でこうした戦争と人々の苦しみ、悲しみが繰り返されていくことを私たちに投げかけます。
こうした映画もまた自主上映会で、みんなで一緒に見ていったらどうだろうと思いました。
知識としての戦争ではなく、加害者も被害者の苦しみも想像できるものとして。

集団的自衛権容認の安保法制によって、自衛隊は南スーダンに、武力行使できるという新たな形で入っていきます。それはこの映画のような紛争、戦争に加わって、武器を持って人々を苦しめる側に入っていくということなのだ、と私たちは考えなければなりません。この映画は、その結果がどういう一歩を踏み出すことになるのかということを想像させてくれるものです。
今、私たちにもっとも求められることは、戦争を想像すること、自分につながるものとして想像できることではないでしょうか。

スタッフ

監督:ミシェル・アザナビシウス
製作:トマ・ラングマン ミシェル・アザナビシウス
製作総指揮:ダニエル・ドゥリューム クリストファー・ウッドロウ モリー・コナーズ 
      マリア・セストーン サラ・E・ジョンソン
原案:フレッド・ジンネマン
脚本:ミシェル・アザナビシウス
撮影:ギョーム・シフマン
キャスト
ベレニス・ベジョ(キャロル)
アネット・ベニング(ヘレン)
マキシム・エメリヤノフ(コーリャ)
アブドゥル・カリム・ママツイエフ(ハジ)
ズクラ・ドゥイシュビリライッサ
原題:The Search
2014年製作・135分・フランス・グルジア合作作品
配給:ギャガ
公式ホームページ:http://ano-koe.gaga.ne.jp/
DVD・ブルーレイ販売中:http://dvd.gaga.ne.jp/ano-koe/



 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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