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映画『横浜事件を生きて』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           


証拠とされた慰安旅行の写真

 「横浜事件」をご存じですか?
 横浜事件は、第二次世界大戦中、雑誌に掲載された論文がきっかけとなり編集者、新聞記者ら約60名が治安維持法違反の罪で逮捕され、30人が有罪、4人が獄死した戦時下最大の言論弾圧の事件といわれているものです。
 私たちは、臨時国会での提出が検討され、次の国会で必ず提出されるだろうとされている「共謀罪(テロ等組織犯罪準備罪)法案」が、「平成の治安維持法」と言われていることを聞いて、治安維持法についてよく知ることのできる映画はないかと探した中で、この『横浜事件を生きて』という映画があることを知りました。

横浜事件は1942年から45年にかけて多数のジャーナリスト・知識人が検挙され、事実無根の共産党再建をでっちあげられ特高から激しい拷問を受けたもの。死亡者も出た。
出版記念の慰安旅行の1枚の写真が、共産党再建準備会の証拠とされた。
拷問による自白をもとに有罪とされたが、戦後関係者が立ち上がった。このビデオはその生き残りのひとりである木村亨さんの再審請求のたたかいを中心に構成されている。
今も続いている事件なのだ。元特高警察官が電話インタビューで語る本音。古いニッポンはまだ生きていた。(映画『横浜事件を生きて』解説ホームページより)

 映画『横浜事件を生きて』は1990年制作の作品ですので30年近く前の映画です。
 しかし、横浜事件で弾圧、拷問を受けた木村亨さんはじめ当事者の生々しい証言は、生涯をこの事件によって費やされてしまった木村さんたちの悔しさと憤り、「何とかそれを伝えなくてはならない」という、止むに止まれぬ気持ちが強く伝わってきます。
 
 同時に強く感じたのは、ここでも官僚、政治家による戦争責任が何らとられていないことです。映画の中で治安維持法を「まさにこの法律が、アジアの3000万人のいのちを奪った日本の侵略戦争を支えました」と解説しています。
 こうした言論を弾圧し、人権を蹂躙する方法で政治を行い、多くの国民と侵略した国々の人々の生命と生活を奪った政治家、官僚が、その反省もなくそのまま戦後の統治を引き継いでいったということです。
 映画の中でも戦前、内務省警保局長として特高警察の元締めの役をしていた内務官僚唐沢俊樹が、戦後、岸信介内閣で法務大臣を務めている例が紹介されます。

 戦前、戦時中にやったことに対して反省も責任も取らないで、同じ形で引き継いだのは司法、裁判所も同じです。
 治安維持法は終戦後、1945年10月までの間、法律として持続されました。その間に、裁判所はこの横浜事件の容疑者に対する有罪判決を駆け込みのように行ったのです。
 木村さんたちが1986年と1988年に行われた再審請求においても、裁判所は自分たちで記録を焼き捨てておきながら「裁判記録がない」とい
う理由で再審できないとしています。
 戦後の政治は「侵略」を行ったという国外に対する戦争責任をとらないとともに、司法、裁判所も人権を蹂躙し、国民の弾圧を行ってきた国内の政治に対して何の責任もとっていないのです。だから繰り返されることになるのだと痛感しました。

 映画は人権を無視したほとんど暴力的な取り調べが今も行われている横行していることを明らかにします。
 そしていま、責任をとらなかっただけでなく、戦前と同様、こうした権力のやりたい放題に道を開く政治と法制が矢継ぎ早に進められています。
 2014年に戦前の軍機秘密法に該当する「秘密保護法」を強行採決し、すでに自衛隊の派兵に関する書類は黒塗りにされ、国民にはわからないようにされています。2015年9月には戦後70年、曲がりなりにも平和を守ってきた憲法を解釈改憲し、戦争できる国にする「安保法制」を強行採決しました。
 そしてこの治安維持法以上に警察権力が思いのままに取り締まりに利用できる危険をはらんだ共謀罪新法案が提出されようとしています。

 私たちは、来年1月29日の「憲法を考える映画の会」で、この映画の上映を決めました。これから進められようとしている共謀罪新法案がいかに治安維持法と同じ危険性をはらむものなのか、憲法が守ってきた人権や国民主権、民主主義というものを壊していくものなのかをきちんと把握して反対していくために、この『横浜事件を生きて』を選びました。
 この映画を活用して、今の危険について考える機会を是非、作って行きたいと思っています。

 木村さんは映画の最後、早稲田大学で行われた講演で次のように訴えています。
「人権問題の最後の砦だと言われるのが最高裁判所なんですが、はたして民主的な裁判ができるのかどうか、むしろ我々はこれを監視しなければいかんと思っております。みなさんもひとりひとりが主権者ですよ。国の主権者であるひとりひとりは裁判官を監視する権利があります。われわれは、もしこれを却下するようなことがありましたら断じて許しません。」「我々は情けないことに、あの侵略戦争に屈し、拷問に屈し、敗北に敗北を重ねましたが、もうこれ以上は許せない、私たちは、とことんまで闘いますからどうぞ主権者であるみなさんが最期まで見届けてください。」
 木村さんが生きておられたら、戦争できる国にし、言論を封殺できる法律を再び作ろうとしている今の日本の政治状況を見てどう思われるでしょう。

【スタッフ】
語り手:常松 理美子
企画:庄 幸司郎
撮影・演出:松原 明
取材:浅沼 幸一 友寄 貞丸 町田 昌志 矢野 功
マンガ:片寄 みつぐ 野中 ひろし 森熊 猛
題字:ヤマザキサダオ
資料提供:赤塚 久仁子 水島 一子 中村 智子 渡邉 悦次
協力:酒井栄 藤井 良平 安達 晴子、日本評論社 紋左旅館 わだつみ会 社会文化会館
制作:「横浜事件を生きて」ビデオ制作委員会 映像事務局
解説ホームページ:http://vpress.la.coocan.jp/yokohama.html
1990年制作・日本映画・58分

【上映・販売利用の問合せ】
DVD頒価5000円 団体15000円
問合せ:ビデオプレスTEL03-3530-8588 FAX03-3530-8578
mgg01231@nifty.ne.jp

【上映案内】
第31回憲法を考える映画の会
と き:2017年1月29日(日)13時半?16時半
ところ:千駄ヶ谷区民会館集会室(渋谷区神宮前 1-1-10 )原宿駅徒歩10分
映 画:『横浜事件を生きて』
参加費:一般1000円 学生600円



 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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