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映画『いのちの森 高江』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           


 映画『いのちの森 高江』を見ていて、ふと基地建設によって壊されていく自然を見て、「環境保護」「自然保護」という言葉は、この日本の社会からずいぶん遠くの方へ、遠い昔の話のようになってしまったのだと思いました。もう「環境問題」など何の政治の材料にも、社会へのアピールポイントにもならない国になってしまったのだと思いました。

 『標的の村』、『圧殺の海』、『うりずんの雨』、『辺野古』、『戦争ぬ止み』、『泥の花』、『森は泣いている』、『森は泣いている』……沖縄の辺野古、高江の基地闘争を描いたドキュメンタリー映画には、すぐれた作品がたくさんあります。どれも基地反対運動を闘う人々とともに、地道に、長い時間をかけて弾圧の恐怖と闘いながら、現地で撮影を続けてきたからこそといった映像です。その撮影の粘り強さ、負けないぞ、という気概が画面に現れていて力強さに敬服させられるものばかりです。それらは、基地建設反対闘争を闘う人々を押さえつけようとする権力の横暴に抗議しながら、それぞれに個性的で違ったアプローチから、作品を創ろう、見る人に伝えようと演出の工夫をしていることがわかります。
 この『いのちの森 高江』は、基地建設に伴う自然破壊というアプローチから、沖縄北部の森がいかに貴重な、豊かな、美しい自然に満ちたものであるか、それが戦争の準備のために壊されていくことを痛切に訴えようとしたものです。一度失ってしまったらもう戻らない、そのような自然の豊かさ、美しさを語るところから映画を描こうしています。
 何度か森の中に分け入り、水辺に憩い、そこに生きる生き物の気持ちになったように溶け込んでいく描写があります。大空に羽ばたく鳥の目線で見たどこまでも続く森の描写があります。しかし今、長い年月を生きてきた樹々を重機が有無を言わせず次々と切り倒し、そこに空から見ると円形脱毛症のような奇怪なヘリパットを作り上げます。
 おそらく撮影を続けていく中で、ますますその強引さを増していく政府の実力行使に、怒り、抗議する力がさらに強くなっていったのでしょう。うっとりするような前半の自然の描写と対比もあって、基地反対運動を一緒に闘っていかなければという感覚が見る者にも強まってきます。そうならざるを得ない後半の描写です。

 それにしても思うのは、高江、辺野古の沖縄の基地反対運動を伝えない「内地」の報道です。たとえばヘリパットの建設現場を空からとらえれば、ここで何が壊されようとしているのか、一目瞭然です。イメージとしても直接、包み隠さず伝わると思うのですが、「内地」の報道はあまりそうした紹介の仕方をしようとはしません。テレビ局も新聞社も、この映画がとらえているようにヘリ一つ飛ばすことはそんな難しいことではないと思うのですが、それをそういう形での報道すらしなかったのは、報道する気が無かったのか、そうすることを抑え込まれていたのか。

 ふと脱原発の集会が国会を取り囲んだとき、代々木公園や明治公園を埋め尽くしたときの報道の仕方を思い出しました。あの時もテレビニュースはデモ参加者を至近から捉えるばかりで、どれだけ反対している人が詰めかけているかがわかるとらえ方で伝えようとはしませんでした。どうしたら映像を見ている人が、自分なりのイメージを持ってもらえるか、そう考える努力も工夫もなされていないのではないか、と、この映画のヘリパット建設現場を空からの撮った場面を見て思いました。

 もう一度、環境問題としての辺野古や高江の問題。
 そういえば、公明党は憲法を改正することに肯定的な「加憲」の例として「環境権」をあげていました。そのような「環境権」を、憲法を変える必要にあげている公明党は、いま、この高江の森を壊して、戦争の準備を急ぐ政権に対し、いったいどのように考え、説明しているのでしょうか。
沖縄の基地闘争を描いた映画は、それぞれに個性的なアプローチと描き方をしていて、いろいろなことを考えさせられます。

監督:謝名元 慶福
語り:佐々木 愛
撮影:中川西 宏之 宮城 秋乃 比嘉 真人 新里 しんじ 照屋 真治 謝名元 慶福
音楽:島袋 霞
編集:新里 しんじ
録音:シネマサウンドワークス
題字:岸本 一夫
協力:新里 勝彦 古謝 将嘉 安里 嗣頼 屋富祖 昌子 屋富祖 建樹 高江洲 義一 
高江洲 義政 伊礼 一美 野村 岳也
制作:「いのちの森」 高江製作委員会

問い合わせ先 文化工房慶(080-3225-1854)bunkakoubou-kei@yahoo.co.jp
2016年11月制作 65分

紹介動画:https://www.youtube.com/watch?v=Vun5jCn1DBw

「上映権(人を集めて映画会を開くことができる)」付きDVD:1枚1500円



 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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