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映画『小林多喜二』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           


 「今、論議されようとしている「『共謀罪(テロ等準備罪)法』は、平成の治安維持法だ」という言葉を聞いたときに、治安維持法について知っているつもりで、実はなにも知らないでいる、と気づきました。私の中で治安維持法と言えば真っ先に頭に浮かぶのは小林多喜二の写真です。そしてこの映画です。
 今、進められようとしている共謀罪法の危険をより多くの人に想像させ考えて行くものとして、この映画を役立てたいと思いました。

 この映画が制作されたのは1974年。その頃、社会を変えようと一途に向かっていった若者のひたむきさと挫折が色濃く出ている作品だと思いました。小林多喜二という人、たしかにそうした人がいて、生きて、活動をして、無残に殺されたということがしっかりと記憶の中に刻みつけられる映画です。
 官憲、特高警察がその権力を使って、志ある若者をたくさんたくさん痛めつけ、殺していった、歴史をねじ曲げていった事実が十分に観る者に想像できる作品です。あの時代、正義感をもって社会を変えようとした若者が何を感じ、何を考え、どのように生きたかということが描かれています。

 小林多喜二の人と人生を描くときに大切なモチーフとなる田口タキについてのエピソードも、多喜二が、タキに対して、どのような思いを抱いていたのか、丁寧に描かれています。小林多喜二その人とその内面を、まるで身近にいる若者のことのように感じさせます。多喜二がタキの過去を責めるところなども、責められる方にとっても、責めている方にとってもどうしようもない、やりきれなさがあって、共感できる描き方がされていると思いました。

 小林多喜二を描いた映像作品には、この1974年の劇映画に加えて、2008年に北海道放送が作ったドキュメンタリー番組『いのちの記憶 小林多喜二・二十九年の人生』という作品があります。同じ小樽出身の文学者、伊藤整との対比など小林多喜二の文学者としての側面や小樽での生活、多喜二を育てた風土が描かれています。
 今月、東京でも公開される新作劇映画『母 小林多喜二の母の物語』は、三浦綾子の原作『母』をもとに母セキと多喜二、あるいは家族とのことが熱く描かれています。
 1974年に制作されたこの映画とともに、それぞれに中心になったテーマとアプローチは違っても、多喜二という人の一途さがよく描かれています。そうした彼がどうしてプロレタリア文学、あるいは政治活動に向かったのか、おそらく彼の正義感がそうさせたのだと想像はつきますが、もっと、もっと知りたいと思いました。そうした中で、今の社会と政治の問題、今、それに対し自分はこれからどうするのかを考えるものとしてこの映画を上映会に選びました。

 ずいぶん褪色してしまったものですが16mmフィルムの試写を見ました。
 この映画を作った人たちはどのようなことを伝えようとして、あるいはどのようなことが起きないことを願ってこの映画を作ったのだろうかと考えました。治安維持法が奪っていったいのちと自由、それが支えた戦争の悲惨さ、しかし、それらは時代を経て、記憶と認識が薄れていって「そんなこと知らない」という世代になり代わってしまいます。ドキュメンタリーであっても、劇映画であっても、その時代、その社会に向けて作った人々の思いをもう一度振り返って、それを今の時代、今の私たちが当面している社会を考えるのに役立てていきたいと思いました。

 2月20日は多喜二忌だそうです。
 築地の留置所で息絶えた多喜二。そのいのちを奪ったことを官憲は、日本の権力はまだ認めていません。そして同じ過ちを、また繰り返すことに道を開こうとしています。天国の多喜二は今の時代の動きを見て何を思うのでしょう。

●スタッフ
監督    今井正
脚本    勝山俊介
製作    伊藤武郎 内山義重
撮影    中尾駿一郎
美術    平川透徹 
音楽    いずみたく
録音    安恵重遠 
照明    平田光治
編集    渡辺士郎 
助監督   臼井高瀬
スチル   木庭鴻志

●キャスト
山本圭   小林多喜二
中野良子  田ロタキ
森幹太   多喜二の父
北林谷栄  多喜二の母
南清貴   多喜二の弟
佐藤オリエ 傍藤ふじ子
森居利昭  宮本顕治
冨士眞奈美 宮本百合子
津田京子  織田勝恵
杉山とく子 タキの母
麦人    島田正策
滝田裕介  志賀直哉
日恵野晃  芥川龍之助
西沢利明  里見とん
杉本孝次  立野信之
原田一雄  蔵原惟人
小夜福子  蔵原の母
長山藍子  美都
鈴木瑞穂  山本懸蔵
下絛正巳  多喜二の伯父
生井健夫  鈴木源重
地井武男  渡
永井智雄  毛利特高課長
横内正   ナレーター

製作   多喜二プロダクション
1974年制作・119分

【上映・配給の問合せ】
●共同映画株式会社 03-5466-2311 mail:info@kyodo-eiga.co.jp

【上映案内】
第32回憲法を考える映画の会
日時:2017年2月25日(土)13:30〜16:30
会場:千駄ヶ谷区民会館 集会室(渋谷区神宮前1-1-10 原宿駅10分)
参加費:一般800円 学生500円
  


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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