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テレビ番組『大東亜戦争』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           


大東亜戦争

 大島渚監督が1968年に制作したテレビドキュメンタリー番組です。
 私はこの作品を「第8回 座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル」で見ることができました。冒頭に次のようなタイトルが表れます。
 「このフィルムは、すべて大東亜戦争当時、撮影されたものである。言葉、音、音楽もすべて当時、日本人によって録音されたものである。外国から購入したフィルムもすべて当時に日本人の言葉でつづった。これは私たち日本人の体験としての大東亜戦争の記録である。」
 私たちには「太平洋戦争」と教えられてきた真珠湾攻撃から敗戦までを当時のフィルムを使って描いています。構成、編集、音声の再録音以外は一切の追加撮影や主観的なナレーションなどを入れていません。極力そうしたものを排し、演出に枷を作っています。
 しかしそのことが、見る者に実にいろいろなことを考えさせ、主体的に映像に向き合うことになります。そこに制作者の意図があったのではないでしょうか。

 ミッドウェー海戦あたりまでなのでしょうか。勝ち戦のときは日本側の戦闘場面は、フィルムがたくさんあるのに、負け戦に転じるととたんに少なくなります。出撃する特攻隊の映像はあっても、彼らがどう戦ったのか、戦えなかったのか、そして無念の、無残な死に方をしたのかの映像は日本側にありません。大島渚監督の「敗者は映像をもたない」という言葉がここにはっきり実証されます。
 日本側に無い戦闘の場面には、アメリカ側の撮ったものが使われます。しかし音声つまり戦闘の解説は「すべて日本人の言葉」なので、勇ましく鼓舞するものが延々とその負けている画面に重ねられていきます。
 そこに見ている画面と耳に聞こえてくる国の公式発表「大本営発表」などの音声との乖離,相反がどんどん拡げられていきます。大本営発表、つまり国がいかに嘘をつき、真実を伝えず、国民をだまし、どうしようもない間違いの戦いに多くの生命を失い、奪っていったかがありありと浮かびあがってきます。

 メディアの嘘、それは嘘をついている自分たち自身をもだまし、その結果、自分たちの都合良いようにしか判断せず、戦況を見誤り、それが「悲劇」を重ねる結果になったことがじわじわと伝わってきます。
 これはまさに今の私たちが今抱えている問題と同じなのではないでしょうか。何が起きているのか、事実を見極めようとせず、それを伝えようともせず、自分たちに不都合なことは目をつぶっている間に自らも欺かれていく。防衛省の情報隠匿や嘘を並べる首相の答弁などにもそれは感じられ、それでも通ってしまうところに、危険がすでに進行しつつあることを感じます。

 『大東亜戦争』の映像を見て、もう一つ強く感じたことがありました。
 この作為を避けて、見る者の前にありのままを投げ出したような映像の画面にこそ、それを見ているうちに、人によっていろいろな想念がわいてくることです。
 とくに戦時下の人々の表情をじっくり見ていく機会をこの「作品」は与えてくれます。
 こういう人たちが戦争を起こし、それを続けていったのか、こういう人たちが嘘の報道に踊り、戦争に疑問を持つことを断念し、あきらめ、戦場に向かっていったのか。子ども達を無為に死なせていったのか。
 ニュースフィルムの事件の合間に見える戦時の生活の中での、そうした表情のひとつひとつが見えます。つまり騙し、うそをついてそう仕向けた側だけでなく、騙され、戦争を支えた人たちの側の表情をじっくりと見ることができます。「私たちはだまされていた」「知らされていなかったのだ」ということで、自分は被害者であったのだからと言ったであろう多くの人々です。
 「戦争を起こしたのは国であって自分たちではない」「国は自分たちのものではなかったのだから」という言い逃れです。そしてそうした人たちは、まごうことなき私たちの母や父や祖母や祖父なのです。ではその後、どういう国を作ろうとしたのか。
 そして今、その国は同じ間違いを繰り返しているのではないか、それを知っていながら、私たちはそれを止めることが出来ないでいるのではないか。

 この『大東亜戦争』の映像作品を是非自分たちの上映会で上映したいと思いました。
 詳細はまだ未定ですが、4月29日(土・祝)30日(日)に日比谷図書文化館で開催を予定している「憲法映画祭2017」の中で上映させていただけることになりました。
 「今はもう戦前ですか?」をテーマに、「戦争と憲法」について考えるための上映としたいと思っています。

【スタッフ】
ディレクター:大島渚
アシスタント:白井哲郎
編集:上野孝
音響:森本喬雄
語り手:戸浦六宏 小松方正 清水一郎
制作:日本記録映像センター
初放送日:1968年12月8日(前編)12月15日(後編)日本テレビ「20世紀アワー」

1968年/96分/モノクロ

【上映案内】
憲法映画祭2017
日時:2017年4月29日(土)30日(日)(30日の上映を予定)
会場:日比谷図書文化館地下コンベンションホール
主催・問合せ:憲法を考える映画の会(〒185-0024 国分寺市泉町3-5-6-303花崎気付)
E-mail:hanasaki33@me.com


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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