法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>

 

「憲法映画祭2017」のご案内(1)


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           


 憲法を考える映画の会では、70年目の憲法記念日を前にした2017年4月29日、30日の二日間、日比谷図書文化会館コンベンションホールで「憲法映画祭2017」と称した映画会を行います。私たちがこの憲法映画祭を企画し、プログラムを選ぶに当たって考えたことを上映作品の解説とともに紹介させていただきます。
 今回のテーマは「今は、もう戦前なのですか?」
 自民党と公明党が支える安倍政権は,政権成立以来、「戦争できる国」をめざし、法律や制度や解釈を強引に変えることで着々とその実現を図ってきました。しかもそのやり方は、まともな論議をせずに、話を聞かず、数の力のみで強行するしか能のないこともあきらかですが、私たちはそれを止める手立てもないまま押し切られてしまっています。 
 こうした状況について思うのは、かつて戦前の政治においても同じようなことが行われてきて、それが繰り返されてきたのではないかということです。

 そこで今回、私たちは戦争と国民の政治をもう一度、今の時点でとらえ直すために、ドイツと日本の戦前、戦中、戦後をとらえた映像を見て「どのように戦争への道は用意されたのか」また「どのように報道は国民に事実、真実を伝える役割を放棄し、権力にすり寄っていったのか」「戦後どうして戦争責任や戦争を起こした責任が自分たちであるという認識をしなかったのか」という点について、映画を見ることをきっかけに考えていきたいと思いました。

 取り上げた映画は、製作された年代も、製作の背景も、また表現の形態も違うものですが、こうした問題意識を持って、映像を見て、考えて、それぞれ話し合っていただきたいと思っています。

【憲法映画祭2017】のご案内
と き:4月29日(土・祝)30日(日)
ところ:日比谷図書文化館・コンベンションホール
テーマ「今は、もう"戦前" なのですか? 」
憲法施行70年の今年、憲法記念日前の二日間。戦争と憲法の"いま" を考えます。

4月29日(土・祝)10時30分〜16時40分 「ドイツにおける戦争責任」

10時30分〜11時10分 
『意志の勝利』(114分・1934年・ドイツ)*ナチス党大会の第一日目のみ上映
11時20分〜13時30分 
『白バラの祈り ゾフィー・ショル最期の日々』(121分・2005年ドイツ)
13時40分〜14時20分 
『夜と霧』(32分・1955年・フランス)
14時30分〜16時40分 
『顔のないヒトラーたち』(123分・2014年・ドイツ)

4月30日(日)10時30分〜16時40分 「戦争と日本国憲法」

10時30分〜12時20分 
『戦争しない国 日本』(90分・2006年・日本)
12時40分〜14時20分 
『大東亜戦争』(98分・1968年・日本)*この作品のみ入場無料
14時20分〜15時00分 
お話「報道の欺瞞と"いま"(仮題)」金平茂紀さん(ジャーナリスト)
15時10分〜16時40分 
『天皇と軍隊』(90分・2009年・フランス)

入場料:1日券一般1500円 学生500円

【第1日目のプログラムの作品紹介と上映のねらい】

4月29日(土・祝)10時30分〜16時40分 「ドイツにおける戦争責任」


「意志の勝利」(35分/114分・1934年・ドイツ)

《映画の解説》『意志の勝利』は、古都ニュルンベルクで、1934年9月4日から6日間行われた国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)の第6回全国党大会を撮った記録映画。
ヒトラーの直接命令で、宣伝相ゲッペルスのもと、レニ・リーフェンシュタールが監督したナチスのプロパガンダ映画の典型。多くのドイツ国民は,何に酔わされ、何に歓喜したのだろうか。(今回は党大会の第一日目のみ上映)

《上映会のねらい》ナチスが短時間の間に独裁政権を作り上げた力になったものに、大衆の不満を吸い上げていったことと、その宣伝が上手だったことがあると言われています。
とくに映像を活用したことは有名です。よく知られているのは、この作品と同じレニ・リーフェンシュタールが監督した1936年のベルリンオリンピックを描いた記録映画『民族の祭典オリンピア』です。『意志の勝利』はそれより前のまさにヒットラーが総統として国家の最高権力者になった直後の映像で、興隆期のナチスを描いて映像の効果を知らしめた作品です。いわばプロパガンダ映像の代表で、広告代理店などにおいても映像を利用する役割の原点ともとられています。

2020年の東京オリンピックをどのように政治的プロパガンダと企業利益に活かし、利用していくか広告代理店もメディアも、政権もこぞって画策しています。いま改めてこのナチス宣伝映画を見ると、その熱狂の裏に感情を揺すぶられて正確に批判的に物事を見たり、しっかり自分で考えたりすることを放棄した結果があのような狂気を生んだことを感じます。そして今の私たちはどうなのでしょうか?
 


「白バラの祈り ゾフィー・ショル最期の日々」(121分・2005年ドイツ)

《映画の解説》ヒトラー政権下で反ナチスを掲げ、抵抗運動を行なった学生グループ"白バラ"の紅一点、 ゾフィー・ショルの壮絶な最期を描いた真実の物語。ゾフィーが大学構内で逮捕され、わずか4日後に"大逆罪"によって処刑されるまでの詳細を、90 年代に東ドイツで発見された尋問記録を軸に再現、新たなゾフィー像を浮かび上がらせるとともに、巨悪に敢然と 立ち向かった一人の若き女性の勇気と悲愴な運命をスリリングに描き出す。
(作品の詳しい解説は「シネマ・DE・憲法」2006年3月20日にも)
http://www.jicl.jp/now/cinema/backnumber/20060320.html

《上映会のねらい》そのような宣伝力によって圧倒的な支持を得たナチスは、周辺各国に向け戦争を始め、国内ではどのようなことをやっていたのでしょうか。
ここではそうしたナチスの政治に疑問を抱き、戦争に反対するビラを撒いた罪で処刑された女学生ゾフィー・ショルの4日間が劇映画の形で描かれています。
ここでは警察国家としてナチスが国内に向けてどんな弾圧をしてきたのかという面を見たいと思います。ナチスは国民をこうして戦争の道へと推し進めた。反対のビラを撒いただけの学生を4日間で処刑してしまった裁判所を含めて戦争によってどんなことでもできる国にするため、軍事国家、警察国家を作り上げてしまった。処刑された犠牲者は3000人に及んでいます。
でもそれと同じことは日本でも起きていた。それも知らされず、国民は考えず、迎合さえしていた。そして今もそうした戦争への準備、戦争に反対するものへの弾圧の準備が進められています。


「夜と霧」(32分・1955年・フランス)

《映画の解説》第二次世界大戦中、ナチがアウシュヴィッツのユダヤ人強制収容所でユダヤ人を虐殺した事実(ホロコースト)を告発したドキュメンタリー映画。全32分という短い作品だが、撮影当時の映像のカラーフィルムと、戦時中のモノクロのニュースフィルム・写真が交互に往還するコラージュの手法でナチズムを告発した斬新な表現は、当時、世界に衝撃を与え、論争が巻き起こった。

《上映会のねらい》国内において戦争に反対するものへの弾圧が続けられた間にも、戦場とは違うところで多く罪のない人が無残に殺され続けました。そしてそれを多くのドイツ人は全く知らなかった。それを世界に知らしめた映像の第一作がこのアラン・レネ監督の『夜と霧』です。こんなことが人間にできるのだ。しかも独裁と戦争国家においては国民に知らせずに行われたのだ。そのこと自体に衝撃を受けます。
しかし日本軍も重慶爆撃,南京大虐殺、731部隊による人体実験と、戦場の至る所で同じような虐殺をやってきました。それは軍人、兵士以外に国民の誰が知り得たのでしょうか。それは戦後、正しく語られ、伝えられてきたでしょうか。
そこに軍隊のもつ秘密性と閉鎖性があり、そうしたことを維持していけるようにする軍事国家、独裁国家、そして警察国家を作ろうとする企みが浮かび上がっています。
たとえば自衛隊員が何をやっているかについても都合の悪いことは一切、軍事機密の名の下に知らそうとしない権力者の支配構造はすでにできあがっています。そしてさらに今また「戦争のできる国」にするためこの国の中で繰り返されようとしていることです。


「顔のないヒトラーたち」(123分・2014年・ドイツ)

《映画の解説》フランクフルトを舞台に、ナチスドイツによるホロコーストに関わった収容所の幹部を戦後ドイツ人自身によって裁いた1963年のフランクフルト・アウシュビッツ裁判開廷までの道のりを、フィクションを交えつつ事実に基づいて描いたドラマ。この裁判は、ドイツ社会を「過去との対決」へ突き動かした、重要な出来事だった。
(作品の詳しい解説は「シネマ・DE・憲法」2016年10月31日にも)
http://www.jicl.jp/now/cinema/backnumber/20161031.html

《上映会のねらい》「天皇も政治家も役人も、もちろん軍人も日本では戦争責任をきちんと取ろうとしてこなかった」といわれる中で「その点、東西に分けられたドイツでは徹底してナチズムは払拭され、戦争責任問題は政治家や国民の意識になっている」と聞いていました。ところがその責任追及と完全なナチス払拭は、戦争からずいぶんたってからの1960年代、この映画にも出てくるバウアー検事総長らの努力によって起こされたアウシュビッツ裁判を契機にしてからのことだと言うことをこの映画を見て知りました。ならばどのようにドイツ国民の中に戦争責任問題は認識されていったのか,この映画を見て考えたいと思いました。

今の安倍政権や自民党政治は戦後、一貫して戦争を起こした責任問題から目をそらし、それを伝えようとするものを妨げようとしてきました。それもやはり「戦争をする国」にするねらいのもとにあるものです。国民の認識として戦争責任を自覚し、歴史に学ぶことを通して作り上げていかなければならないことをこの映画は教えてくれます。

来週は、引き続き「憲法映画祭2017」2日目のテーマ「戦争と日本国憲法」のご案内をさせていただきます。

 

 

 


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]