法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>

 

映画『標的の島 風かたか』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 今度は何を見せてくれるのだろう?沖縄の何を考えさせてくれるのだろう?そう期待して三上智恵監督の新作を見せていただきました。
 期待にたがわず、『標的の村』の高江、『戦場ぬ止み』の辺野古に続いて,新作ではこれから始まろうとしている宮古島、石垣島、与那国島など先島諸島での自衛隊配備、基地建設とそれに反対してたたかう住民の心意気が描かれていました。
 もちろん高江、辺野古のたたかい、2016年の沖縄の人たちのたたかいが、そのたたかっている人たちに寄り添って克明に描かれていきます。

「標的の島」とは、沖縄のことではない。?それは今あなたが暮らす日本列島のこと。
2016年6月19日、沖縄県那覇市。米軍属女性暴行殺人事件の被害者を追悼する県民大会で、稲嶺進名護市長は言った。「我々は、また命を救う"風かたか"になれなかった」。「風(かじ)かたか」とは風よけ、防波堤のこと。
沖縄県民の8割の反対を黙殺した辺野古の新基地建設、全国から1000人の機動隊を投入して高江で強行されるオスプレイのヘリパッド建設。現場では多くの負傷者・逮捕者を出しながら、激しい抵抗が続く。さらに宮古島、石垣島でミサイル基地建設と自衛隊配備が進行していた。(『標的の島 風たかた』公式ホームページより)

 沖縄三作品、三上監督の作品は、ますますその描き方の中に、「人(住民)の強さ」だけではなく、しなやかさを描くことに磨きがかかってきたかのように思います。悲壮なたたかいの中にあっても明るさを感じてしまう。それは沖縄の人々の日常生活、祭りや歌や踊りが生活の中にあって、これまで長い年月をたたかいに生きてきた民俗の強さのようなものさえ感じました。三上監督もそこに感じていることがこうした描き方になるのだろうと思います。
 三上監督はそうしたひとりひとりの意志、営みをていねいにとらえ、この闘争の実相を描こうとします。三里塚の闘争を描いた小川紳介の表現の円熟に近いものを感じます。

 同じく高江のたたかいを描いたドキュメンタリー映画『森は泣いている』を見たときには、何か機動隊の若者のひ弱さのようなものを感じてしまいましたが、沖縄のたたかいはそんなことを感じてどうなるものでもないということがわかりました。「何で女の首まで絞めるんだ」と号泣する山城さんの姿がそう感じさせます。
 それでもあの作品でも思った、機動隊の若者たちの姿に、集団的自衛権の解釈改憲によって戦場に向かわされる自衛隊の若者たちを重ねる気持ちは、雨の中、機動隊の若者を負けずににらみ返す反対闘争の若い女性の姿や、最後に流れる「兵士Aくんの歌」を聞く基地に反対する人々の姿に語られているように思います。みんな戦争に反対しているのです。

 この映画には主役がたくさんいます。それぞれが考えていることがそれぞれの話の中によく表れています。気負わず理屈張らず、わかりやすい言葉で、そして気持ちに伝わる言葉で、語られています。歌や踊りとともに、そうした彼ら彼女らの自然な日常的語り口に、この映画のもつ柔らかく、しなやかなものが感じられます。これからたたかいを創っていくであろう先島諸島の若い世代、女性の話にとくにそれを感じました。たたかいは彼女たちの生活の中にあります。

 この沖縄の2016年の基地闘争の中で、山城さんの力は圧倒的であり、また魅力的であったことがこの映画を見た感想の大きなものとして残ります。
 それだけに、この映画では描かれていませんが、この基地闘争がさらに続いている中、山城さんたちを不当逮捕し、半年もの間、留置した警察と裁判所への怒りは高まります。
 それは今、用意されようとしている共謀罪法が、警察権力にとって、今まで「不当」とされてきたものをすべて捜査の対象として容認させてしまうものと見えてきます。共謀罪法の先取り、先行事例をつくっているようです。そしてそうした警察指揮をさせている政権のなりふり構わぬ態度、理を通さない傲慢な権力の姿を感じます。

スタッフ
監督:三上智恵
プロデューサー:橋本佳子 木下繁貴
撮影監督:平田守
編集:砂川敦志
監督補:桃原英樹
音楽プロデューサー:上地正昭 三上智恵
ナレーション:三上智恵

配給:東風
2017年 日本映画 119分
公式ホームページ:http://hyotekinoshima.com/theater/
上映情報:http://hyotekinoshima.com/theater/

シアターキノ(北海道)、ポレポレ東中野(東京)、名古屋シネマテーク(愛知)、第七藝術劇場(大阪)、横川シネマ(広島)、桜坂劇場(沖縄)で上映中、以降全国上映。

 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]