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映画『知事抹殺の真実』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

「2008年8月8日、東京地裁は福島県知事であった私と私の弟に対し、収賄罪で有罪判決を言い渡しました。私にとって全く身に覚えのない弟との"共謀"、土木部長に対しての"天の声"。ゼネコンから多額の利益を得たという事実が認定されました。それはある目的のために東京地検特捜部が作った"偽りのシナリオ"を司法が認めた形となったのです。」
映画の冒頭で語られる元福島県知事佐藤栄佐久さんの語る"事実"です。

検事のでっち上げによる事件のねつ造、取り調べの中で自白を強要することは、これまでもいくつもの例で語られてきました。この映画を見たのと相前後して「厚生労働省元局長事件」で身に覚えのない「偽の公文書を発行した」として逮捕、起訴された村木厚子さんのお話を聞く機会がありました。そこでもこの検事の"偽りのシナリオ"に基づく自白を強要し、調書を作り上げるやり方を聞いて身震いがしました。
そして今、"共謀罪法"によって、警察が怪しいと思う者、政権が自分の政策に反対する不都合な者に対しては、逮捕、取り調べできるという形で、誰でも陥れることができる"武器"を警察、検察が持つことになります。

この映画の中で語られる取り調べの経過を知って、私自身も、到底そうした"取り調べ"に耐えられないだろうな、と思いました。言われるままに"自白"してしまうだろうなという気持ちになってしまいました。逮捕されるということは心理的にこんなにも過酷な状況に追い込まれることだと、改めてわかりました。そう感じただけで、お上に逆らうようなことは言うまい、警察に睨まれるような言動は慎まなくてはという小市民の気持ちになってしまいます。そうした萎縮効果が"共謀罪法"のねらいの一つなのだと思います。

一方において佐藤栄佐久さんたちを陥れたこと自体が、裁判によって認められてしまい、何一つ論証されず、「収賄額ゼロで有罪」という判決が正しいとされたままになっていることに深い怒りと強い危機感を感じました。人ごとでないという思いを強くしました。
佐藤さんたちにはあくまで再審の請求などの闘いを続けて欲しいと思いますし、ひとつひとつのそうした闘いについてもっとよく知って、力を合わせて支援していかなくてはならない、自分自身、私たちのために、という思いを強くしました。いずれにしても今の政治、社会の現状と照らし合わせて、いろいろ考え、気持ちを揺さぶられるドキュメンタリー映画でした。

もう一つ考えなければならないのは、どのような力がこの検事の"暴走"の裏に働いているか、ということです。
一つは佐藤元知事が、それまで県民の安全という点から、そのブレーキともなるような施策によって原発と闘ってきたことに対して、原発を推進したい"原子力ムラ"経産省が失脚をねらって後押しをしたのだろうかということ。
また全国知事会など地方自治体の発言力が強まり、中央に従わない地方自治体が増えることに対して、それを抑え込むために "汚職捜査"という武器を使ってつぶしにかかったのだろうか、ということです。特捜検事が佐藤さんの弟に語ったという「知事は日本にとってよろしくない。いずれ抹殺する」という思い上がった言葉がそれを表しています。
この佐藤元福島県知事が逮捕されて1ヶ月半の間に和歌山と宮崎でやはり県知事が"汚職"容疑で逮捕され失脚に追い込まれているという一致がそのことを感じさせます。

メディアの責任についてもこの映画は突いています。汚職事件に限らず、取り調べを受けた時点でもはやクロであるかのように報道し、むしろ煽って話題性がなくなるとその後の責任を取らないという姿勢には今のマスメディアの劣化と知性の無さがどうしようもないところまで来ていることを感じさせます。そしてそう感じさせること自体権力の側からみれば思うツボの仕向けられたものなのではないかと感じてしまいます。

佐藤栄佐久さんが知事の座から引きずり降ろされたのは、2006年第一次安倍内閣の時期と一致します。こうした裏側での政治の進め方、社会批判のつくりかたはその後ますます強まり、とくに第二次安倍内閣以降、ますますやり方がひどいものになり、強行になっています。
そうしたごり押しを後押しする法整備が秘密保護法であり、刑事訴訟法改悪であり、今回の共謀罪法です。その先にあるものは、これも早くしろとせき立てられはじめた"憲法の改悪"です。
わたしたちはそうした動きに対して、いま進められている事実を知らせ、拡げ、あらためて、智恵をしぼって闘い続けていかなくてはならないと思うのです。

スタッフ
監督:安孫子亘
プロデューサー:ナオミ
企画:三田公美子
撮影:安孫子亘
録音:沼尻一男 本橋大輔
音楽:野崎洋一
エンディング曲:佐藤孝雄
音楽コーディネート:DAIJI
ナレーション:高橋春樹
制作ディスク:塩谷奈津紀

出演:佐藤栄佐久
2016年制作 80分 日本映画 ドキュメンタリー

ホームページ:http://eisaku-movie.jp/

■ 配給・上映の問合せ:
ドキュメンタリー映画 「『知事抹殺』の真実」 製作委員会事務局
〒969-5343 福島県南会津郡下郷町落合字ジイゴ坂1604-1
電話:070-3524-2781 FAX:0241-67-4426
E-mail:clerk@eisaku-movie.jp
FaceBook:https://www.facebook.com/eisakumovie

■上映情報:
・ 憲法を考える映画の会では5月27日(土)にこの映画を緊急上映します。
第35回憲法を考える映画の会
日時:2017年5月27日(土)13:30〜16:30
会場:千駄ヶ谷区民会館 集会室(渋谷区神宮前1-1-10 原宿駅10分)
  参加費:一般1000円 学生500円
・ そのほかの詳しい上映情報についてはhttp://eisaku-movie.jp/theater/をご覧ください

 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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