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映画『テロリストは誰?』
原題:WHAT I'VE LEARNED ABOUT U.S. FOREIGN POLICY (THE WAR AGAINST THE THIRD WORLD)


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 安倍政権は「共謀罪」法を「テロ等準備罪」法と言い換えて、「テロリストを対象にしたもので一般人は関係ない」という印象を演出しました。では、いったい一般の人にとって「テロとはどのようなイメージを持たれているのか」そう考えたときに、この映画の題名が目に止まりました。 
 この映画のガイドブックに、ジャーナリストの伊藤千尋さんが「テロという言葉は本来、フランス革命の際に反政府派の市民を殺した当時の独裁政権に付けられた言葉である。本来は国家による市民の人権弾圧を指した。」と書かれています。目からウロコの思いがしました。「テロ」という言葉は、今、言われているのと全く逆の意味になっているのではないか、と。

 この映画は、米国政府が第三世界に対して仕掛けてきた「数々の戦争と政権転覆の真相」を描いた10本の映像によるオムニバス作品です。2004年の作品ですから、ちょうど9.11事件の後、ブッシュ大統領が「テロとの戦い」と称して、主にイスラム過激派をテロリストと呼ぶことが盛んに行われた時期です。
 しかしこれら10本の映像を見ると、「国家としてテロを行ってきたのは、実はアメリカ自身なのではないか」という気持ちがわき起こってきます。10本の映像の内容を紹介します。

(1)「マーティン・ルーサー・キングJr.牧師」
キング牧師によるベトナム戦争非難の演説。

(2)「元CIA高官、ジョン・ストックウェル」
元CIA高官の告発:自衛や報復の手段を持たないアジア(朝鮮や中東、ベトナム、ラオス、カンボジア、インドネシア、アフガン)やアフリカ(アンゴラやコンゴ)、中南米(エルサルバドルやニカラグア)などでの殺人や麻薬密輸、秘密工作への関与について。

(3)「影の政府:憲法の危機」(4)「隠ぺい工作 イラン・コントラ事件の裏で」
国家安全保障の名のもとに形作られ、「影の政府」の中核でもあるCIAがさらに関与したとされるのは、油田を国有化した後のイラン(1953)や、共産党を認め、農地改革に着手したグアテマラ('54)、自国資源の権利を主張したブラジル('64)やガーナ('66)、チリ('73)での軍事クーデターによる民主政権転覆工作、キューバでのカストロ大統領暗殺計画、ベトナム戦争('60〜'75)、イラン・コントラ事件('87、脚注あり)などなど。「多くの隠された世界戦争が当たり前になってしまった今、永久戦争国家と民主主義は両立するのか」とジャーナリストは問う。

(5)「スクール・オブ・ジ・アメリカズ 暗殺者学校」
中南米から軍の指導者や将校を年間約2千人受け入れ、戦闘や暗殺、拷問の仕方を訓練してきたスクール・オブ・ジ・アメリカズ(現在の西半球安全保障協力研究所)というジョージア州にある施設の存在が明らかにされる。また、エルサルバドルやニカラグアでの内戦('80年代)などで多くの暗殺や虐殺を行った国軍将校や、現在アメリカの刑務所にいるパナマのノリエガ将軍を始め、当時のボリビアやホンデュラス、エクアドル、アルゼンチンなど中南米の独裁者や軍司令官、幹部など同校のOBたちによる虐殺や人権侵害を伝える。

(6)「経済制裁による大量虐殺」
オリジナルは'98年に編集されたものだが、150万人が死んだイラクへの経済制裁への抗議や、その違法性への訴えと共に、'58年の革命で失った石油支配を取り戻そうと目論む自国政府への非難。

(7)「東チモールの大虐殺」
アメリカが支援する同盟国インドネシアの軍事政権による東チモールでの大虐殺を、政府やメディアが長年黙殺してきたことに記者は怒る。

(8)「嘘まみれのパナマ戦争」
アメリカの機密作戦に長年協力してきたノリエガ将軍が非協力的になると、パナマ人を挑発して起こった事件を切っ掛けに、アメリカ人の命を守るという口実で始まった米軍による「嘘まみれの」パナマ侵攻('89)。

(9)「ラムゼー・クラーク 元米国司法長官」
「地球に最大の暴力をもたらしているのは我々の政府だ」とキング牧師が述べたのは'67年のことなのにと元米国司法長官と嘆く。政府ベッタリのメディアはアメリカ産業界の中核をなしているのだとある作家はいう。

(10)「ブライアン・ウィルソンの癒し」
中米への兵器輸送列車を体で阻止すると伝え、轢かれた非暴力平和運動家は「何をすべきかは、あなたの心が知っている」と訴える。

『テロリストは誰?』公式ホームページおよび「旅行人 旅シネ『テロリストは誰?』より引用)

 私たちは、この映画の上映会を開き、いま、盛んに利用されている「テロ」という言葉を本来の意味からとらえ、文字通り『テロリストは誰?』と問い直し、「テロ等準備罪(共謀罪)」をつくることこそ「国家による市民の人権弾圧」ではないか、国家権力こそテロリストではないかという認識にしたいと思いました。
 
 あわせて、トランプ大統領の外交政策、「アメリカの利益」を第一とし、これまで作り上げてきた国際秩序を壊すその好戦的な政策は、アイゼンハワーからブッシュに至る戦後のアメリカの戦争戦略に通じることをこの映画を通して明らかにしていきたいと考えます。
 武器輸出に力を入れ、平和協調的な政策をつぶそうとするトランプ政策をどうとらえたら良いのか。またその本質はどのように今明らかにされようとしているかを考える上でも、きわめて今日的な話題提起になるのではないでしょうか。

 そして安倍政権。そうしたトランプ政策の「戦争で儲ける政治」にますます追随しようとしています。それは安倍政権がもともと進めようとしていた「戦争できる国」への準備、国内抑圧強化、市民の権利の管理・制限、秘密主義、民主主義の破壊、平和憲法の破壊が重なります。
 そうした「トランプや安倍は何をしようとしているのか」を問題にし続ける上で、この映画を上映して、いまの情況を考える材料にしていくことができると思います。

 しかしこの映画は、単にアメリカ政府の過去の恥部を暴露することをねらった批判映画ではありません。映画の姿勢として、CIAの元高官なり、元司法長官が堂々と政府のやってきたことを批判的に明らかにし、自国や自分の属した組織のあり方と闘い、反戦平和を強く求め、アメリカを愛する人々の姿を伝えようとしています。昨今の日本の政治の状況に比べ、この映画を見る限り、アメリカではまだ議会や司法やメディアがちゃんと機能していることを感じます。
 これも翻訳された、きくちゆみさんが、ガイドブックに書かれている言葉、「思慮深く、献身的な小さな市民のグループが世界を変えられるということを疑ってはいけない。かつて世界を変えたものは、実際それしかなかったのだから」(マーガレット・ミード)の言葉が私たちを勇気づけます。

2004年/アメリカ/120分
プロデューサー(ビデオ編集):フランク・ドリル
日本語版プロデューサー:きくち ゆみ  日本語版ディレクター:森田 玄
制作:グローバルピースキャンペーン http:www.peace2001.org
『テロリストは誰?』公式サイト:http://www.wa3w.com/
上映会
日時:2017年7月1日(土)13:30〜16:30
会場:千駄ヶ谷区民会館集会室(東京)
一般:1000円 学生:500円
問合せ:hanasaki33@me.com

 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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