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憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>

 

映画『鶴彬 こころの軌跡』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

川柳作家、鶴彬(つる あきら)の生誕100年を記念して2009年に作られたこの映画『鶴彬 こころの軌跡』は、その完成当時、この「シネマ・DE・憲法」や「今週の一言」でも紹介されています。しかしそれから8年、共謀罪法が強引な方法で成立した今、この映画をあらためて見直し、この映画が問いかけてくるものを考えることに大きな意味を感じて紹介させていただきます。

日本が戦争への道を歩んでいった昭和初期、"暁を抱いて闇にゐる蕾"、"手と足をもいだ丸太にしてかへし"など、数多くの反戦川柳を詠んだ作家、鶴彬の29歳の生涯を劇映画として描いた作品です。とくに川柳という自らの表現方法を得、反戦川柳を詠んで治安維持法違反(反国家思想)で逮捕、獄死するまでの抵抗の作家活動を描いています。映画は鶴彬が師事した川柳作家井上剣花坊の妻、井上信子の視点から、若く懸命な鶴彬の姿をとらえています。

この映画の中でも紹介される鶴彬の川柳を知って、この時代に反戦、反軍の意志を川柳という表現方法で貫ぬいたということにまず驚かされました。川柳というと社会への風刺や少し毒のある「くすぐり」の笑いを表現するものだとは思っていましたが、鶴彬の反戦の句は、まるで刃物で刺し、血が吹き出るような魂の叫びであることを感じます。
鶴彬が軍隊に入ってなお反戦反軍の活動をやめずに重営倉入りの懲罰を繰り返します。共産主義の機関誌を軍の中に持ち込んだとして、懲役二年の刑で大阪衛戍監獄に入ります。軍隊の中でも拷問にあっても反戦反軍を変えず頑張り通したことにそのすさまじささえ感じます。
そして出獄後、さらにその反戦反軍の表現(舌鋒)は鋭くなっていき、ついに治安維持法で逮捕、獄中で赤痢になり病院で死にます。その唐突な死は、官憲による赤痢菌注射によるものだと噂されたといいますが、拷問による「獄死」であることはあきらかです。

秘密保護法制定、刑事訴訟法改悪、安保法制、そして共謀罪法と戦争する国に向けた内外への準備ととれる法律がろくな論議もしないで法律にされます。ほとんど論理が破綻しているのも同然な形で数の力で無理矢理、強行採決され作られました。その先にあるものは鶴彬や小林多喜二など懸命に反対した人々を無残な死に追いやった社会の再現のような気がします。
小林多喜二29歳(1933年死)、鶴彬29歳(1938年死)若い正義の意志から不正なものとたたかい「弱き者を見捨るな」と伝えようと表現した彼らは、その社会に及ぼす影響の強さゆえに「官憲に睨まれ」無残に壊されてしまった、昭和の歴史はそうした死体が戦場のように累々としているのだと思います。
本来なら彼らの創作や才能こそが社会を変え、新しい時代と文化を創り出す原動力になったはずなのに、いったい誰の私利私欲のためなのか、強権によって壊され失われていく、映画はそのやりきれなさに満ちています。それが過去のことでなく今また身近に迫っているということを感じて、この映画を見たとき、私たちはどうしたらよいのかと考えざるを得ません。
日本国憲法自体そのものがそうした戦争の、また戦争を最優先に強いる社会と政治による犠牲によって作られたはずです。それをもう一度しっかりととらえ、そんな世の中にしてはならない、暗く凄惨な歴史を繰り返してはならないと、この映画を見てまた強く感じました。

【制作スタッフ】
監督:神山征二郎
脚本:加藤伸代 神山征二郎
製作:平野寛 神山征二郎
撮影:伊藤嘉宏
音楽:和田薫
製作プロダクション  神山プロダクション

【キャスト】
鶴彬・喜多一二:池上リョヲマ
井上信子:樫山文江
井上剣花坊:高橋長英
渡辺尺蠖:安藤一夫
瀧井スズ(鶴の母):河野しずか
喜多喜太郎(鶴の伯父):角谷栄次
ナレーター:日色ともゑ

2009年制作 日本映画 90分 
配給:映画「鶴彬 こころの軌跡」製作委員会
公式サイト:鶴彬を検証する会 http://tsuruakira.jp/movie/

【上映の案内】
日時:2017年8月27日(日)13:30〜15:00
会場:ギャラリー古藤(西武池袋線江古田駅)・武蔵大学正面斜め向かい 03-3948-5328
参加費:800円
主催:詩と朗読「たきび」の会 takibinokai_poem@yahoo.co.jp
* 午前の部 11:00〜「川柳人 鶴彬 今に伝わるメッセージ」(60分)石川TV・2015年制作
* 午後の部 15:20〜 みんなでデスカッション(進行:乱鬼龍さん=川柳作家)

 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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