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映画『ハクソー・リッジ』(原題;Hacksaw Ridge)


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 そのスピードとアクションでかつての若者を魅了した『マッド・マックス』シリーズのメルギブソン監督の戦争映画です。「良心的兵役拒否」をテーマにした実話です。しかも沖縄戦の激戦地、浦添城址南東の前田高地の戦いを題材にしています。これは見に行かなくては、と思いました。

 銃も手榴弾もナイフさえも、何ひとつ武器を持たずに第2次世界大戦の激戦地、ハクソー・リッジを駆けまわり、たった1人で75人もの命を救った男がいた。彼の名は、デズモンド・ドス。重傷を負って倒れている敵の兵士に手当てを施したことさえある。終戦後、良心的兵役拒否者としては、アメリカ史上初めての名誉勲章が授与された。
 なぜ、彼は武器を持つことを拒んだのか? 何のために、命を救い続けたのか? いったいどうやって、奇跡を成し遂げたのか? (映画『ハクソー・リッジ』公式ホームページより)

 本年度アカデミー賞の編集賞と音響賞を獲っています。加えてCG、SFXを効果的に使っているのでしょう、戦闘のシーンはすさまじく、戦争をまったく知らない人間にも、戦闘の中に在ったら、このように訳もわからないまま人がばたばた死んでいくものなのだろうと想像させるリアリティがあります。
 しかし作り手のねらい、テーマは、「武器を持たないという信念」を持って戦場に赴き、英雄となった主人公を紹介することにあるので、どうしても「おはなし」をつくらなければならず、そのことがリアリティをだんだん失わせていくように思いました。
 そして作り手の監督も、この映画を見る観客も戦争という究極のバイオレンス・アクションを見せたい、見たいのであって、その根底に「怖いもの見たさ」があるように思ってしまいます。「なぜ、彼は武器を持つことを拒んだのか?」「ではなぜ彼は志願し、戦場に行こうとしたのか」 宗教上のことがよくわからないからかもしれませんが、彼の信念そのものが十分にわからないという気持ちが残ってしまいます。

 私たちは沖縄の「戦い」と「闘い」をこれまで主にドキュメンタリー映画で見てきました。でもこうした映画を通してアメリカ人の目で見た沖縄の戦争をとらえることができます。きっとアメリカ人は「こんなたくさんの犠牲のもとに手に入れた沖縄を簡単には返せない」と思うのだろうか、などと感じることになります。

 映画の中で、憲法が絡むところが一箇所だけあります。銃を持たないことを信念としている主人公は、銃の訓練を終えないと休暇は許可できないと言われ、命令拒否として軍法会議にかけられます。ほぼ有罪というところで、逆転させたのはアメリカ合衆国憲法です。アメリカでは軍法会議も憲法に反することができないことが確認されます。

 それにしてもハクソー・リッジ(前田高地)での戦闘シーン、どの「戦争(戦闘)映画」でもそうですが、住民や住居、生活のない砂漠や砂浜のようなところで、あたかもゲームのように繰り広げられます。兵士の死体は山ほど出てきても住民の死体はない。
 映画を見た後、家にあったアメリカ軍が撮影した写真をもとにした写真集を見直しました。『これが沖縄戦だ』(太田昌秀著)という写真集です。兵士だけでない、住民を巻き込んだ沖縄戦の悲惨さがそこにありました。

【制作スタッフ】
監督:メル・ギブソン
製作:デビッド・パーマット ビル・メカニック ブライアン・オリバー ウィリアム・D・ジョンソン
脚本:ロバート・シェンカン アンドリュー・ナイト
撮影:サイモン・ダガン
美術:バリー・ロビンソン
衣装:リジー・ガーディナー
編集:ジョン・ギルバート
音楽:ルパート・グレッグソン=ウィリアムズ
視覚効果監修:クリス・ゴッドフリー

【キャスト】
アンドリュー・ガーフィールド:デズモンド・ドス
サム・ワーシントン:グローバー大尉
ルーク・ブレイシー:ドロシー・シュッテ
ヒューゴ・ウィービング:トム・ドス

配給:キノフィルムズ
オフィシャルサイト:http://hacksawridge.jp/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=w20WhNIxySk

2016年制作アメリカ・オーストラリア合作映画・139分

第89回アカデミー賞(2017年) 編集賞 録音賞

 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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