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映画『もうろうをいきる』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 目が見えない、耳も聞こえないって、どういう世界なのだろう、想像できない、どうやってコミュニケーションをとったらいいのだろう。子どもの頃から、障がいをもっている人を目の前にすると、気持ちでは何かしてあげたいと思っているのに、戸惑い、あせってしまって、どうしたらよいかわからなくなって何もできないということがありました。
 『もうろうをいきる』。この映画は「もうろう(盲聾)」の人たちの何気ない生活の日常をありのままに撮影していきます。目も見えない、耳も聞こえない人の世界がどのようなものか、どのように人と人とがつながっていくのかを、私たちに豊かに想像させ、考えさせます。

 食事の支度でも、洗濯でも、柔道の練習でも、この人は目も見えない、耳も聞こえないというのに、どうしてこんな風にてきぱきとできるのだろう!「目に見えない人はどんなに生活することが難しいのだろう」とあらかじめ考え、先入観で見ていると、まず裏切られます。

 「もうろう」の人たちの日常のありのままを見ていくことで、映画を観る前からあった「戸惑い」がゆっくりと溶けていきます。「もうろう」の人たち、家族、支援する人たち、そうした人たちと一緒にずっとその場に居合わせていたような、身近に生活してきたかのような気持ちになります。「あはは、うふふ」と「もうろう」の人たちの笑い声を聞くと、とてもうれしく、しあわせな気持ちになっていきます。
 そうした周りの人たちも「もうろう」の人たちと接することによって、どのようなよろこびが得られているのかもだんだんわかってきます。気持ちが通じたときのよろこびや、よろこんでもらえた時に得られる気持ちの豊かさのようなものがわかってきます。
 
 コミュニケーションの方法が指点字や触手話しかないことで、「もうろう」の人たちやその周りの人たちにとって、つながることがより切実です。生きることにより豊かで確かなものを得ているようにも感じます。

 圧巻はお二人とも「ろうもう」のご夫婦の食事のときの触手話です。お二人に表情はありません。静かです。
 食事の支度を待っている間、ご主人は姿勢を正して静かに待っています。表情がまったく変わらないので、何だか怒っているかのようにも見えます。でも奥さんが食事の支度ができたこと、食事の内容を知らせようとご主人の手をとったとたん、待ちかねたように二人は、手を取り合っていそがしく指先の会話を始めるのです。
 二人の間に、愛情に満ちたコミュニケーションがほとばしるようで、それが見えるようです。一口、二口食事をとってから、今度はご主人が奥さんの手を探して「おいしいよ」と話しかけます。何だか目に見えない熱いものが二人の間を流れているのを感じます。

 監督は『わたしの自由について-SEALDs 2015』(作品の詳しい解説は「シネマ・DE・憲法」2016年10月3日にも)という映画で、学生団体シールズSEALDsの始まりから、その活動の広がりを描いた西原孝至さんです。
『わたしの自由について-SEALDs 2015』の詳しい記事は「シネマ・DE・憲法」2016年10月3日にも)

 『わたしの自由について-SEALDs 2015』でも感じたのですが、この作品でも西原さんは気負わない、淡々とした人々のありのままの日常を見つめ、カメラでとらえていきます。
 熱いものを静かにとらえ、見る人を引き込んでいきます。いつの間にか、見る者が参加させられてしまう映画です。
 ナレーションは監督自身です。肩に力の入った物言いでない、声高には言わない。でも監督がこの映画を作っていく中で伝えようとしたことが、しっかりと伝わってくる作品と思います。
 映画の案内に次のようにあります。「私たちが生きていくことの原点が、盲ろうという"障がい"の中につまっていることをこの映画から発見してほしいと願っています。」

『もうろうをいきる』製作・上映支援プロジェクト

【スタッフ】
製作・配給:シグロ
企画・製作:山上徹二郎、大河内直之、北岡賢剛
プロデューサー:小町谷健彦、山上徹二郎
監督:西原孝至
撮影:加藤孝信、山本大輔、西原孝至
録音:小町谷健彦
整音:若林大記
編集:西原孝至
編集協力:金子尚樹、上田浩行
音楽:柳下美恵 テーマ曲:桜井まみ(寝耳に銀の刺繍)「今日」
協賛:NPO法人バリアフリー映画研究会
協力:社会福祉法人全国盲ろう者協会
   NPO法人東京盲ろう者友の会
   東京大学先端科学技術研究センター・福島研究室
   NPO法人メディア・アクセス・サポートセンター(MASC)
   Palabra
宣伝・配給お問合せ:シグロ03-5343-3101
2017年・91分

【上映情報】
2017年8月26日(土)ポレポレ東中野にてロードショー

 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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