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映画『戦ふ兵隊』『日本の悲劇』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 今年2017年は日中戦争80年です。1937年7月7日盧溝橋事件から始まった"日華事変"で日本軍は中華民国政府軍を追う形で侵略の兵を進め、南下し、12月南京大虐殺を引き起こします。
 私たちはこの日中戦争がどのようなものであったか、戦争に負けた後、その戦争を日本人はどのようにとらえたのかを知り、日本人の戦争に対する認識について考えたいと思いました。そこで亀井文夫監督が戦中と戦争直後に監督した二つのドキュメンタリー映画を上映することにしました。
 『戦ふ兵隊』は、1939年戦意高揚を期待する陸軍省の後援でつくられました。亀井監督みずから戦地の赴いた武漢での従軍記録です。しかし内容が厭戦的と問題になり、検閲によって上映は不許可になり、公開禁止となった作品です。

 戦禍における人間の普遍性に焦点を当てた戦争ドキュメンタリーの原点であり最高峰。
日中戦争における戦意高揚を目的として、陸軍からの要請により制作された「プロパガンダ映画」のはずが、出来上がったのは映画史上特筆すべき「反戦映画」であり、またドキュメンタリーとしての魅惑に満ちた作品だった。亀井文夫は兵士の勇猛さではなく、兵士たちの人間性や、中国人の悲しみを徹底的に見据え続ける。検閲により上映不許可となり、長く幻の作品となっていた「亀井の原点」であり最高傑作。(Cinefil『戦ふ兵隊』解説より転用)

 『日本の悲劇』は敗戦の次の年の1946年制作、戦争遂行の目的で製作された既存のニュースフィルムをモンタージュして、過去の歴史を批判的に叙述した作品です。GHQの検閲を一旦通過して公開された後、吉田茂首相の圧力により、再検閲の結果、公開後1週間でフィルムは没収、上映禁止となりました 。

 なぜ、日本は破滅の道に突き進んでいったのか。「侵略行為」を問う亀井の野心的実験作
1945年8月、日本は近代史上最悪とも言える歴史的な敗戦を喫した。なぜ、日本は勝てる見込みのない戦争に踏み込み、数え切れないほど多くの生命を奪う/失うこととなったのか。亀井文夫が日本の"侵略"行為を、さまざまなニュース映像を再編集することであらためて振り返ったドキュメンタリー。ラスト、昭和天皇が軍服姿から制服姿へとオーバーラップするシーンは圧巻で、公開後1週間でフィルムが没収・上映禁止とされた問題作。(Cinefil『日本の悲劇』解説より転用

 私たちはこの二つの作品を並べてみていくことによって、当時の日本人がこの戦争に対して、どのような認識を持っていたかを知りたいと思いました。二つの作品はどちらも極めて政治的な意味合いから上映不許可、上映禁止となった映画であって多くの日本人には当時見られることのなかった映画です。しかしながらこれらの二つ映画を通してみると、当時の日本人が戦争に対してどのような気持ちをもっていたのかが、亀井文夫監督という戦争に対して極めて批判的な目をもっていた監督によって、そうした社会的の空気を描きだしていたのではないかと思ったのです。

 『戦ふ兵隊』に出てくる兵士たちはその表情から疲れ切っているように見えます。生気がなく精彩がないように見えます。それはねらってそうした表情を撮ろうとしてのではなく、むしろありのままの従軍の風景として撮っていたことから来ることなのかもしれません。私ははじめてこの映画を見たとき、案外戦争もこんな風な日常の繰り返しが大部分なのかもしれないと思いました。それが戦場というのとは別な意味でリアルに伝わってきます。そしてそうした兵士の日常の合間に中国の人々の困惑しきった表情を交えていきます。そのことが日本の兵士たちにどこか、自分たちのやっていることに自信の持てない、なんでこんな所に来てこんなことをやっているんだろう、と思っているかに見える表情に映るのかもしれません。

 そしてそのような中国で、戦争をしてきて戦争に負けて国に帰った兵士たちがこの戦争に対して考えたであろうことが『日本の悲劇』に現れています。「なぜこんな戦争をやってしまったのだろう」「どうしてこんな戦争を防げなかったのだろう」「誰がこんな戦争をはじめたのだろう」「もう戦争はこりごりだ」。それがこの映画の「戦争をつくり出したものへの責任追及」となって現れます。この時代の人々の"平和への強い希求の意志"そして戦争そのものへの疑問が、第9条「戦争の放棄」をもつ日本国憲法への同意となったのではないかと思います。それは私たちが歴史から学ぶ日本人の意志であり疑問です。
 日本国民は先の戦争をどのようにとらえたのか、とらえることをしなかったのか、そうしたことが現在と未来にどのようにつながり、どのようなものを投げかけているのか、私たち、自分たちの問題として問い直そうと考えています。

【スタッフ】

映画『戦ふ兵隊』(1939年/66分/モノクロ)
監督・編集:亀井文夫
撮影:三木茂 撮影助手:瀬川順一
録音:金山欣二郎 現地録音:藤井慎一 
音楽:古関裕而 製作:松崎啓次
製作会社:東宝文化映画部

映画『日本の悲劇』(1946年/39分/モノクロ)
監督:亀井文夫 編集:亀井文夫、吉見泰 
録音:東亜発声 製作:岩崎昶 製作会社:日本映画社

【上映案内】

第37回 憲法を考える映画の会
日時:2017年8月27日(日)13:30〜16:30
会場:千駄ヶ谷区民会館 集会室(渋谷区神宮前1-1-10 原宿駅10分)
映画『戦ふ兵隊』
映画『日本の悲劇』
参加費;一般1000円 学生500円

 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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