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映画『笑う101歳×2笹本恒子 むのたけじ』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 映画を見終えたとき、端正で、とてもきれいな映画を見せていただいたという気持ちになりました。それはこの映画のお二人の「生き方」の姿勢が正しく、しっかりと筋が通っていることを感じたからかもしれません。

日本初の女性報道写真家と伝説のジャーナリスト。女と男。カメラとペン。
二人の生き方を見つめた希望のドキュメンタリー映画、ニッポンの100年を駆け抜けた女と男。その生き方には学ぶべき自由な知恵が詰まっていた。
2014年4月。まもなく100歳を迎える二人が対面するシーンから始まる。同じ時代を生きてきた笹本恒子とむのたけじ。笹本は日本初の女性報道写真家であり、むのは孤高にして伝説のジャーナリストだ。その日、出会いの記念にと笹本が赤いバラを贈ると、むのは「赤いバラが好き。いのちを表す花だ」と目を輝かせて笑った。(『笑う101歳×2笹本恒子 むのたけじ』公式ホームページより)

 笹本恒子さんが生まれたのは1914年(大正3年)。第一次世界大戦が起こって日本もそれに参戦した年。むのたけじさんが生まれたのは1915年(大正4年)。中国に21か条の要求を突きつけ、満州に手を伸ばした年。
 つまりお二人はこの国が、戦争の荒波にさらされ、巻き込まれていった時代に青年期を迎え、報道写真家と新聞記者という社会の変化をつぶさに見つめる職業を選んだわけです。そして、戦争への道を歩む政治と社会のほぼ最前線に立つことになります。そのことがそれからのお二人のやらなければならない仕事になり、「生き方」を決定づけて行きます。「戦後も、戦争にこだわり続けた」。それぞれの方法で、それこそ世界から戦争を無くすことに命がけで突き進みます。
 そしてその生き方、人生への向かい方は過去の話ではありません。早稲田大学を訪れ、ひ孫のような学生たちと討論するときのことばの強さ。戦争が実感として自分たちのものにならないという学生に「人類が戦争を始めたのはいつからですか?」と学生への質問で返します。「戦争は家族を守るなんてことから始まったのではない、権力が発生し、国家を生み、国家権力が戦争をする。誰も国家に戦争をしていいなんて許していない」

 病床にある、むのさんの姿をあそこまでとらえるのはやはり見ていてつらいと思いました。もし早稲田大学での学生たちに話しかける、あるいは有明での憲法集会で話す、むのさんの姿などで映画が終わりにしたら、その元気な強い姿のまま、私たちの記憶の中で生き続けるのにとも思いました。
 しかし、私が見た上映会の後で、むのさんの次男の武野大策さんのお話を聞く機会があって「そうだったのか」と考えが変わりました。「確かに『あの場面はつらいから、いらない』とか、そうした意見も聞きます。でも父は『自分はジャーナリストだ。死んであの世の様子を伝えたい。今まであの世の様子を伝えたジャーナリストはいないのだから』と言ってあのような場面になりました」。茶目っ気さえ感じさせるむのさんの話に、息子の大策さんは続けます。「だから父のお棺の中には原稿用紙とか、葉書とか入れたんです。まだ返事は無いのですけど」

 老いること、死については笹本さんも象徴的なことを言っています。
 「不老不死になって死にたい。それが目標。」
 この映画を見ていると、死が目的地ではなくて、あたかも通過地点の一つとしてとらえられているようにさえ思えてきます。そうした一貫した姿勢が死んだ先にも貫かれていくような生き方が示されているように思います。それはつねに社会の問題に対して現役で、いまを生きてからなのでしょう。
 「命がけでやる」「死にものぐるいでやる」というのが、むのさんの好きなことばと言います。「年老いてしまったからかな」と、取り返しのつかないことにおびえ、めそめそしてしまう世代にとっては、「まだまだある、これからだ」と言っているような先輩の後ろ姿を見せてもらったような気がします。

 むのたけじさんが、その時その時の社会を見つめて、全力を注いで命がけで書いたものを読みたいと思いました。笹本恒子さんがファインダーの中にとらえ、シャッターを切って写してきたものをあらためて見てみたいと思いました。そう思わせる映画です。「生き方」について、自信に満ちた見事なことばが何気なく散りばめられている映画です。

 『あなたは自由を守れ 新聞はあなたを守る』。むのさんが作ったというこんな標語はとにかく自分の仕事について生き方について、考え抜かないと、つくれないと思います。

【スタッフ】
監督:河邑厚徳
プロデューサー:平形則安
脚本:河邑厚徳
撮影:中野英世 海老根務 河邑厚徳
編集:荊尾明子
音楽:加古隆
音楽監督:尾上政幸
音響効果:尾上政幸
語り:谷原章介
制作:ピクチャーズネットワーク株式会社
配給:マジックアワー・リュックス
2017年/日本映画/91分

公式ホームページ:http://www.warau101.com/about/
上映:関東地区では横浜「シネマ・ジャック&ベティ」で2017/9/9など全国劇場公開中。

 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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