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映画『米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 映画を見終わった時、この映画は瀬長亀次郎という傑出した活動家を描くだけでなく、戦後を通して、瀬長さんと共に差別と人権の蹂躙と闘って、民主主義を獲得しようと闘っている沖縄県民の映画だと強く思いました。
 そして映画の作り手もまた、カメジローという人間の魅力に取り付かれながら、「あの沖縄の人々の闘うパワー、何かあればすぐに10万人もの人々が集まり、声をあげ、抗議する力はどこから出てくるのだろう?」を知りたいと求めていることがはっきりしていて、その視点、姿勢はとても好ましいものを感じました。

 第二次大戦後、米軍統治下の沖縄で唯一人"弾圧"を恐れず米軍にNOと叫んだ日本人がいた。「不屈」の精神で立ち向かった沖縄のヒーロー瀬長亀次郎。
 民衆の前に立ち、演説会を開けば毎回何万人も集め、人々を熱狂させた。
 彼を恐れた米軍は、様々な策略を巡らすが、民衆に支えられて那覇市長、国会議員と立場を変えながら闘い続けた政治家、亀次郎。その知られざる実像と、信念を貫いた抵抗の人生を、稲嶺元沖縄県知事や亀次郎の次女など関係者の証言を通して浮き彫りにしていくドキュメンタリー。(公式ホームページより転載)

 日本の政治の戦後を振り返って、あるいはこの頃の政治の現場で行われていることを見るにつけて、「民主主義や国民主権がほんとうに自分たちのものになっていなかったのではないか、豊かさの中で飼い慣らされた家畜のように、政治意識も政治参加のレベルもとても低いことと嘆いていました。しかし、この映画を見て、そんな風に見ていたことがとても恥ずかしく感じました。沖縄の人の戦後の闘いこそが、平和と民主主義を求めて、いわば日本国憲法の実現するために一貫して闘い続けてきたではないか、ということに改めて気づかされたからです。そうせざるを得なかった沖縄の厳しい現実があったからです。その中にあって、まっすぐに少しもひるむことなく、彼らを引き寄せ、いっしょに闘うことを呼びかけ、教えてきたのが瀬長亀次郎さんです。

 米軍の統治に抗議し、基地に反対し、団結しての闘いを呼びかける瀬長さんたちに対して、統治者であり、権力者である米軍が表に裏に、策略を労してなりふりかまわず瀬長さんの追い落としにかかります。最後は法律を曲げてでも(投獄されたことがあるという過去を理由に、被選挙権をも剥奪する「布令」の改定)政治の舞台から追い落とそうとします。
 そうしたやりかたは、いまの日本政府が辺野古や高江での力尽くで基地建設をごり押しし、翁長知事に対する脅しとしか思えないような制裁の横車にダブって見えてきます。
 いまの安倍政権を支える自民党、公明党の人たちはこの映画をどのように見るのでしょうか?そうした瀬長さんや沖縄県民の闘ってきたことを知らないから、力で押さえつけようとあのような暴挙をやっているとしか思えません。その無知を恥じるべきです。

 瀬長亀次郎の闘いは民主主義を勝ち取るための闘いです。
 統治者である米軍もまた瀬長の力を認め、恐れていたことが、いくつもの文書の中でわかります。彼らはむしろ、こうした基地反対や抗議が本土に及ぶのを恐れていたということが語られています。「彼を殉教者にしてはならない」そうした言葉にそれは表れています。
 この映画を見て、戦後の日本の政治と沖縄の関係をもっと知り、それを自分のこととして考えなければと思います。
 映画のラスト近く瀬長さんが国会議員になってからの場面です。当時、沖縄の「返還」を前にしていた佐藤栄作首相との国会での論争。日本国憲法のもとに入ったはずの沖縄がどうして法の下の平等を守られないのか、核持ち込みの疑惑に満ちた返還協定、安保条約への疑い、瀬長さんの25年戦い抜いてきた強さに満ちた質問に、佐藤首相は明らかに逃げています。そしてここで瀬長さんが質問した沖縄からの基地問題は、今なお続いている、さらにそのひどさを増して何ら改善されずさまざまな問題を起こしていることを考えさせます。

 映画そのものの話ではありませんが、映画のパンフレットに瀬長さんの次女の方の文章が載せてあります。その中の瀬長さんの日記の中で「母の日」「洗濯」について書いているところが紹介されています。瀬長さんの人柄が感じてとても身近さ、やわらかさを感じます。その日記に書かれていることを機会があったら味わって読んでみたいと思う文章でした。闘士・瀬長さんの闘いを支えていたその人柄、家族や生活への考え方、生き方にもう少し近寄ってみたいと思ったからです。

制作スタッフ
監督:佐古忠彦
プロデューサー:大友淳 秋山浩之
撮影:福田安美
テーマ音楽:坂本龍一
編集:五島亮太
音声:町田英史
エグゼクティブプロデューサー:藤井和史
配給:彩プロ

キャスト
出演:瀬長亀次郎
ナレーター:山根基世 大杉漣

2017年/日本映画/107分
公式ホームページ:http://www.kamejiro.ayapro.ne.jp/
予告編:https://www.youtube.com/watch?time_continue=4&v=ECh6sSRvVgM

渋谷ユーロスペースで8月26日より公開中、全国順次公開予定


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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