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映画『いのちの岐路に立つ 核を抱きしめたニッポン国』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 原水爆反対と原発反対、それらの運動を結びつけて、つながりをもってとらえた映像作品は、これまで、ありそうであまりなかったように思います。そのつながりのキーワードとして、この映画が話の軸に求めたのは「放射能の危険」です。
 私たちの国は、三度、四度、それ以上、放射能によってたくさんの人がいのちを失った国です。それにもかかわらず政府は、国民に、放射能が危険であることを「知らせていない」「知らそうとしていない」事実が一貫していることをこの映画を見て強く感じます。
 それは戦後すぐ、つまり原爆がヒロシマ・ナガサキに落とされて数十万人の犠牲者が出た直後から始まります。その時はGHQの指示があったとはいえ、この国の権力層はそれからも一貫して放射能の危険を隠し、過小宣伝し、「コントロールして使えば安全・安心で、繁栄の役に立つものだ」と言い続けてきました。
 そしてフクシマ原発事故。それでもなお、隠し、被害に対しシラを切り、安全だと言い続け、国民の安全をないがしろにし続けているのが、私たちの国の政府のやっていることです。

被爆・被曝者らが迫る「核が問いかける、戦後日本の隠された真実」とは何か、
日本の核開発からフクシマまでを辿ると、「核を抱きしめたニッポン国」の輪郭が浮かぶ。
反核運動の分裂を経て、屈折した核をめぐる歴史に「平和」の内実を問い、融合・和解の道を探る。8月6日夕刻、「安らかに眠れません 核兵器廃絶の日まで 全原発廃炉の日まで」と記した"とうろう"が広島・元安川の川面を流れていく・・・。(案内チラシの紹介文より)

 この映画は、戦後の年表をたどって、広島、長崎の惨劇から、ビキニ環礁の水爆実験による第5福竜丸の悲劇、そして原発での作業に携わる労働者の置かれている極めて危険な情況を、直接の被害者(被爆者・被曝者)や、原水爆反対、反原発、原発誘致反対を闘う人たちを訪ね、その切実な話を聞いていきます。

 広島の被爆者で「伊方原発運転差止広島裁判」原告団長の堀江壯さんは「核兵器と同じく原発による被爆をも拒否することは『広島の使命』、被爆地ヒロシマが被曝を拒否する、と語ります。同じく被爆者で原告副団長の伊藤正雄さんは、中学生の時に見た「原子力平和利用博覧会」で「核の平和利用」と「安全神話」について洗脳されていたと語り、「原子力の未来に夢を抱き続け、福島原発の事故があるまで『安全神話』が揺らぐことはなかった」と笑います。
 長崎の原爆投下の瞬間を知る西岡洋さんは、爆心地へ救援に向かい、水筒の水を欲した避難民に「一滴もやらなかった」ことが今も心の傷としてうずくと言います。大学時代に丸木位里・丸木俊の『原爆の図』を見て、その全国巡回展の活動に参加し、詰めかけた観衆に自分の被爆体験を話して歩きました。
 第五福竜丸甲板員として水爆被爆し、死の淵をさまよった大石又七さんは「一生を台無しにしてしまった悪魔と言える水爆」、核廃絶を訴える活動を進めています。
 物理学者で東大核研究所教授、早稲田大学理工学部研究所長に就任した藤本陽一さんは1976年、『原発黒書─日本における原発推進の実態』を発表します。「科学者としてあたりまえのことをしただけ」。一橋大学名誉教授の加藤哲郎さんは『日本の社会主義─原爆反対、原発推進の論理』を刊行し、「核なき世界」への切開を試み続けます。
 報道写真家の樋口健二さんは。被爆労働者を追って43年。「原発は人を殺す産業だ」と公言。この映画のとくに後半、原発労働者の実態を写真という武器でもって知らしめ続ける姿とその写真は圧倒的な迫力があります。
 「原発を阻止するにはどうしたらよいか」、原発立地計画を断念させた元阿南市市会議員の椋本定憲さんはその闘い方について、「原発は国策で背後に国家権力があって、住民運動だけでは限界がある。市長や市議会、つまり行政を反原発派で動かさない限り勝てない」。同じ阿南市で漁師を営む太居雅敏さんは、蒲生田原発計画反対を闘った父親と、今日も漁場で網を仕掛け続けています。「海が放射能に汚されたら、ここで暮らせんけん」
 広島で疎開作業をしていたクラスメイトの全員を失った関千枝子さんは、そのクラスメイトたちが、準軍属として靖国神社に合祀され「最年少の英霊」となっている事実を問い直し、告発し続けます。

 彼らの話のひとつひとつが、それぞれの原爆、原発、戦争責任というつながりの中で語られます。そして全て現在進行形で活動が続いていることがわかります。そしてそうした闘いが今こそ闘い続けなければならないものであることを、私たちに訴えてきます。

 原爆の悲惨さを語り伝え、原発の危険を訴える人たちのインタビューが続く中で、印象に強く残ったのは、原発で働く労働者の寡黙さです。ふと彼らの姿に日中戦争に従軍した兵士たちの戦後の寡黙さを重ねてしまいました。
 原発労働者のその数は60万人と言われます。彼らはその過酷な経験を語ろうとしない、いや語れないのだと思います。そのようにたくさんの人々がそのような過酷な情況の中で労働し、体を壊し、あるいはその仕事が原因でいのちを失っても、彼らはそれを語れない。
 隠し続け、だまし続けているのは誰だ。「あったことを、なかったこと」にし続ける権力の姿がここにも見えてきます。そしてそれを知っていながら何も問題としていないことで加担しているメディアの姿が見えてきます。
 侵略戦争や原爆被爆、原発被曝の事実に対して、まともな責任をとらず、都合の悪いことは知らぬふりをしたところから、この国の政治は、うそで塗り固められ、その信用を国民から失わせた。そうした政治をよしとしている人は、みずから真実を見ようとしていない人間であることを痛切に感じます。

【制作スタッフ】
プロデューサー:矢間秀次郎
監督・編集:原村政樹
撮影:一ノ瀬正史 原村政樹
録音:金田弘司
音効:徳永由紀子
ポストプロダクションマネージャー:原田修
映像技術:呉ヨンジン 杉田広毅
整音:丸山晃
地図:長越順子
題字:原村慶子
録音スタジオ:モイ
法務:竹澤克己
語り:中村敦夫
2017年/日本映画/ドキュメンタリー/110分 
上映の問い合わせ:「いのちの岐路に立つ」製作委員会 TEL:042-381-7770
【上映案内】
■大阪:シアターセブンで2017年9月23日(土)より上映
■広島:2017年10月7日(土)17:00〜 喫茶さえき(中区紙屋町1-4-25)主催:ママデモ
連絡先:080-1948-5097魚ずみ
■名古屋:10月21日〜11月3日、1日1回上映、シネマスコーレ(名古屋市中村区椿町8-12 アートビル 052−452-6036)
■東京:2017年11月25日(土)13:40〜16:30 武蔵小金井:宮地楽器ホール


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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