法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>

 

映画『禅と骨』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 数奇な人生を辿った日系アメリカ人、ヘンリ・ミトワの生涯を追ったドキュメンタリーです。晩年の彼の生き方をとらえた映像からは、彼の過剰とも思えるような日本の文化への思いの強さが感じられます。それは彼が日系アメリカ人であって、戦争をはさんだこの時代の中で、日本とアメリカの二つの国の間を行き交わざるを得なかった生き方から来るものでしょうか。
 映画は、その人生がどのようなところから始まり、どのような変遷を辿って生き方としての「いま」に至るかを辿っていくことになります。

【映画の解説】
京都嵐山・天龍寺。
世界遺産にも登録されているこの名刹に、一風変わった禅僧がいた。名はヘンリ・ミトワ。
1918年、横浜でアメリカ人の父と新橋の芸者だった母の間に生まれた日系アメリカ人である。1940年、単身渡米。戦時中は敵性外国人として、日系人強制収容所で過ごした。戦後、ロサンゼルスで幸せな家庭を築き、1961年、帰国。時代の波に翻弄されながらも、日本文化をこよなく愛し、茶道・陶芸・文筆にも優れた才能を発揮したヘンリは、古都の多彩な文化人や財界人に囲まれ、悠々自適の晩年を楽しむ…はずだった。
「"赤い靴"をモチーフにした映画を作りたい!」、80歳を目前に突如、追い求めた夢によって、家族や周辺の人々を巻き込み、彼が築き上げてきた"青い目の文化人"という地位から大きく逸脱していく…。(オフィシャルサイト「解説」より)

 彼の人生を翻弄したもの、そして日本への強い思い、それは生き別れた日本人の母への思慕につながるものであることがわかってきます。それが、彼の中で、晩年「童謡『赤い靴』の映画化」へ向けた情熱と執着を生み出すものになったのでしょう。
 はじめ、彼がなぜそのように、この童謡「赤い靴」の話を映画にしたいと思うのか、それがよくわかりません。その映画化実現の第一段階として、彼のドキュメンタリーをつくることを託されたこの作品の監督にとっても、おそらくそれはよくわからないものでした。だから彼がなぜ「赤い靴」をつくりたいのかを探し求めるために彼の歩んだ道を辿ることがしばらくこのドキュメンタリー映画の主題になっていきます。
 
 この「童謡『赤い靴』」の映画化」、それはヘンリ・ミトワの中で、なにか自分の人生を振り返り、やり残したものへ深い悔恨と共に突き進んできたものが見えてきます。
 
 日本人としても、またアメリカ人としても、その両方に住んで、なお落ち着けない、自分のアイデンティティを求める気持ちから日本の文化により以上にあこがれ、創作への情熱、あるいは「禅」に求めるものになったのでしょうか。

 国とはなにか、その中での個人とは何か、私たちがあまりあらためて感じることのないこのような問いかけを、この映画は日系人の人生を描くことを通して考えさせます。否応なく個人に意識と生き方を強いてくる時代とは何か、歴史はその生き方や人生にとってどう関係するのか、それを超えるものは何なのか…。

 映画を見ると、彼はずっとつねに行動の人であったようです。とくに年をとってからの行動、つまりこのドキュメンタリーを撮り始めた頃からの彼の「生き方」に関わる行動は、そのためにまわりはえらい迷惑をしているのがわかり、ユーモラスでもあります。それでも彼は突き進み、遠慮をしない。まわりに怒りをぶつける。そこに自分のやりたかったこと、「やってきた、」それでもまだやりきれなくてもがいている。ヘンリ・ミトワ自身のもだえのようなものを感じてしまいます。

 映像の表現としては再現ドラマあり、アニメありの多彩なそして柔軟な表現を盛り込んだドキュメンタリーです。前段は童謡『赤い靴』を映画化しようとしているちょっと変わった日系アメリカ人のヘンリ・ミトワを探すために、映画の作り手自身がヘンリミトワの来し方を探し求めた進み方ですが、後段はまさしくその結果である彼の「いま」がどのようになっているかを彼によってぶつけられたドキュメンタリーになっています。
 前段はコマーシャル映像のようなシャープな映像と切れの良い編集、音や音楽の合わせ方が、時に諧謔的なノリにも合わせてテンポ良く進んでいきますが、後半、インタビューや取材を拒絶されたあたりから、にわかに作り手が途方に暮れたような長回しの「そのまんま」映像のいわゆるドキュメンタリー調です。その困惑・混乱はまた作り手側が「いま」を生きるヘンリ・ミトワにぶち当たった「もだえ」と言えるかもしれません。
 作品の中にかつてミトワが、そこで「生きた」日本人収容所のあった場所を訪ねる場面があります。ここでも、私たち自身「知らなかった」、知ってはいてもどこかで目を向けようとしなかった時代と歴史がありました。それらもまた「戦争」と同じように、人をどうしようもないところに追い込み続けるものであるが感じられました。

【スタッフ】
監督 中村高寛
構成 中村高寛
プロデューサー 中村高寛 林海象
アニメーションキャラクター原案 今日マチ子
音楽 中村裕介 エディ藩 大西順子 今野登茂子 寺澤晋吾 武藤健城
ナレーション 仲村トオル

【キャスト】
ヘンリ・ミトワ
ウエンツ瑛士(ドラマパート出演)青年時代のヘンリ・ミトワ
余貴美子(ドラマパート出演)ヘンリの母
利重剛(ドラマパート出演)志村基
伊藤梨沙子(ドラマパート出演)
チャド・マレーン(ドラマパート出演)ジョン・ミトワ
飯島洋一(ドラマパート出演)
山崎潤(ドラマパート出演)
松浦祐也(ドラマパート出演)
千大佑(ドラマパート出演)
小田島渚(ドラマパート出演)
TAMAYO(ドラマパート出演)
清水節子(ドラマパート出演)
ロバート・ハリス(ドラマパート出演)ヘンリ・ワットソン
緒川たまき(ドラマパート出演)貴婦人
永瀬正敏(ドラマパート出演)近藤和男
佐野史郎(ドラマパート出演)石井辰夫
製作年 2016年 製作国 日本
配給 トランスフォーマー
上映時間 127分

オフィシャルサイト:http://www.transformer.co.jp/m/zenandbones/
予告編:https://www.youtube.com/watch?time_continue=111&v=4sXh6awPbsM

上映館:東京:ポレポレ東中野ほか上映中


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]