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映画『憲法を武器として 恵庭事件 知られざる50年目の真実』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 恵庭事件は1962年、北海道恵庭町自衛隊島松演習場近くで酪農を営む野崎牧場の兄弟が自衛隊の通信線を切断したことに始まります。長年、戦闘機や大砲の騒音被害を受け、牛の乳量が落ち、家庭の健康が損なわれ、約束が守られなかったことから、やむにやまれぬ実力行使でした。
 しかし、国(検察)は、自衛隊法121条「防衛の用に供するもの」違反事件で起訴、「自衛隊の公然化」を国民に突きつけるものとなりました。

 映画の大半は裁判の経過がどのようなものであったか、再現によって描かれていきます。
 映画を見てまず感じたことは、ここまで自衛隊の憲法判断をめぐっての論議をやっていながら、それが判決にいかされなかったこと、つまり最終的には自衛隊法の「防衛の用に供するもの」にはあたらないという憲法に触れることを避けた「肩すかし判決」になったことは、後々日本国民にとっても取り返しのつかない大きな損失だったということです。それは、国民の権利を守るための論議の場である「司法」そのものが失なわれたといえるかも知れません。三権分立の中で、司法は憲法判断を避け、逃げ、憲法を使って、国民にとって適切な判断をしていく役割を果たそうとせず、放棄したのだと思いました。
 それが上(政権・政治)からの圧力の結果であったとしても、こうした論議を避けて、きちんとした論議をしてこないまま、曖昧にしてきたことが憲法の力を失わせ、その問題を解決しないままに自衛隊をなしくずしに既成事実化してきたと強く感じました。
 それはある意味、国民自身が憲法を、或いは自衛隊を自分たちのものとすることができなかったことにもつながります。では自衛隊は誰のものなのでしょうか?

 いま、自衛隊を軍隊として役立てるために「憲法自体を変えてしまえ」という本末転倒のごり押しを政権が推し進め、国会議員の8割以上が支持しているという情況です。そうした改憲することだけが目的化し、本来の政治的なあるいは論議もせずにイメージだけでおし進めてしまおうという動きです。

 自衛隊法自体を正しく憲法判断とするために5年もの間、闘い続けた野崎被告、弁護団の闘いの姿には感動します。この裁判の当事者への取材インタビューは熱意が少しも衰えていないことを感じます。
 そして裁判官自身の悩み、迷い続ける姿も変につくりものとせずに描いたところに好感がもてました。よりわかりやすく、よりおもしろく伝えようとすれば、もっと違った演出もあったのでしょうが、きっと裁判記録にあるものだけで話を作ることにこだわったのでしょう。

 裁判がどのように進められたのかは、とてもわかりやすく描かれていたのですが、よくわからないところもいくつかありました。
 裁判所側が検察側に勧告した論告求刑を取り下げないかという提案、それがどのような意図を持ったものだったのか、憲法判断を避けようとした裁判所側のメッセージだったのか。そして判決の直前に何があったのか。
 上からの圧力があったことは辻裁判長の娘さんの証言や当事者へのインタビューなどでも明らかにされていますが、直接のものではありません。直接、そのことを知っている唯一の三人目の裁判官は「公判途中であったことは口外しない、墓場までもっていくと言っています。」
 しかし自衛隊そのものの存立の論議をしないまま、自衛隊自体を憲法に名前だけ付け加え、空洞化し軍隊としての役割を認めさせようとする今の政治情勢の中で、それでいいのかと思います。今こそ、戦後の憲法論議がどのようなものであって、どうしてそれが実効的なものにならなかったのか、今こそ明らかにしたいし、知りたいと思います。それを今後の憲法をめぐる論議の中で活かしていきたいと思います。
 
 これからの憲法論議、とくに「第9条の自衛隊追記のまやかし」と闘うとき、そして、今も、辺野古や高江はじめ各地で繰り広げられ、続けられている日米軍事基地との闘いをどのようにとらえていくかを考えるときに活かされる映画ではないでしょうか。
 「憲法に『自衛隊』」と付け加えることの何が悪い」と言わんばかりの安倍政権の加憲のまやかしと闘うとき、『憲法を武器として』の映画は、まさに武器となると思います。

【スタッフ】
監督:プロデュース 稲塚秀孝
撮影:中堀正夫
編集:矢船陽介
音楽:足立美緒
後援:日本平和委員会  北海道平和委員会
協賛:学校法人 東放学園
語り:仲代達矢

【キャスト】
松崎謙二(野崎健美)
村上新悟(野崎美晴)
無名塾、劇団男魂、C.A.Wほか
2017年制作 日本映画 110分

【上映情報】
◆12月3日(日)13時30分〜
 文京区民センター3A会議室(文京区本郷4-15-14・地下鉄春日駅/後楽園駅下車)
 憲法を考える映画の会でも2018年1月上映予定
◆上映申し込み先:株式会社タキオンジャパン
FAXかメールでお願いします。
FAX:03-6712-6341
inazuka@takionjapan.onamae.jp
◆問い合わせは:担当稲塚宛
03-6712-6344か090-3576-6644


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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