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映画『ザ・思いやりパート2 〜希望と行動編〜』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           


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 映画の副題に「〜希望と行動編〜」とあります。「今、求められているのはこれだ!」と思いました。おそらく「パート2」で最も訴えたいところと思います。
 『ザ・思いやり』パート1で、とんでもない税金の使われ方をユーモラスに暴き出したバクレー監督。パート2では、在日米軍が世界でどんなことをしているかを、コミカルに、シニカルに、さらけ出します。
 「思いやり予算」がとても変なものであること、そんなものに莫大な税金(5年で8911億円!)が支払われている。それももう40年もそうしたことに使われている。そのことは『ザ・思いやり』パート1を見てわかった。腹も立った。さあこれからどうしよう。パート2では「『おかしい』『やめろ!』と声をあげよう。態度で示そう。行動に表そう。」と訴えます。
 映画の中にもいくつか具体的な突飛な「行動」が示され、笑いを誘い、そこから考えさせます。

【米軍のためのクリスマス思いやり募金】
 横須賀の米軍基地(軍港)前のクリスマス募金募集の歌声呼びかけは、それ自体やっている側が楽しそうでもあり、それを見ている米兵たちも憲兵も文句がつけられず、困ったもんだとあきれている風でとげとげしたものを感じさせません。
 観客は大笑いしながら、バクレーさんの言わんとする「おかしいでしょう?普通じゃないでしょ?」が伝わり、それが自分たちの問題であることに気がついていきます。

【膨大思いやり予算のそろばん対決】
 単純に「思いやり予算」の数字を並べるだけでなく。そろばん競争で、時間をかけ、笑わせ、その莫大さと中味のひどさを見る人の頭の中にたたき込みます。
 前回のパート1でもそうでしたが、バクレー監督のこうした描き方の巧みさに感心します。
 その描き方と行動にはウイットがあり、にくめない明るさがあります。どうしたらいちばん効果的か、最も伝わるものになるか知恵を絞り、それが見ている人にどんな思いを引き起こすか計算し、工夫しています。きわめてざっくばらんな風体と語り口の中に、緻密さが感じられます。

【希望と行動している人に会いに行く】
 気がついてみるとバクレーさんは自分ではあまり声高に何かを主張することはしていません。自分が「不思議だな」と思ったこと、素朴に「どうしてだろう?」と思ったことを、それぞれ基地のまわりで困っている人や苦しんでいる人、怒っている人、闘っている人のところに訪ねて行って聞き出していきます。
 沖縄の普天間基地、建設中の辺野古、高江の基地建設現場、厚木基地、横田基地。三沢基地の近くの青森市の街頭でも、若い人たちに「三沢基地の攻撃機がシリア、ヨルダンまで行って空爆をしていることをどう思うか」、話を聞きます。……

【三沢基地の航空祭のパイロットに突撃インタビュー】
 三沢基地の航空祭に出かけて行って、若いパイロットに突撃し、わたしたちの「身近な」米軍基地がいかに戦争に直接結びついているかを聞き出します。彼ら屈託のない若者が、ここにある武器や兵器を使って子ども達を含む多くの人びとを殺す「人殺し」になっていることをじわじわと想像させていきます。
 在日米軍は世界で、日本で何をやっているのか、米軍の基地を拠点にさまざまな国でどれほど多くの市民、子どもや女性にまで被害を与えてきたか、歴史と現実を知ってほしい。日本を守るどころか、逆に米軍基地があるから日本が戦争に巻き込まれ、攻撃対象となりかねない、ということを自ずと考えさせていきます。

 映画の後でバクレー監督は、自分の英語塾の建物に指定暴力団が入っていたことを例に話していました。つまり外で乱暴狼藉、無差別に人殺しをするような暴力団に、わたしたちは部屋を貸し、彼らにおべっかを使い、上納金を渡してさえいれば、いざというときわたしたちを守ってくれるはずだ、と思っている脳天気でこざかしい家主なのです。そしてそれは、結果的にわたしたちの税金が、世界の子ども達や一所懸命に生きている人たちを殺すために使われていることになるのです。何の「思いやり」なんでしょう!
 日本を守るために米軍基地があるわけではない、その結論はすでに出ています。そればかりでなく日本に関係のない戦争にまで出て行って人殺しをすることを勧められている。日本人の無知と勘違い、都合の良いようにしか考えない考え方が、「思いやり」予算を40年以上続け、その関係をますます強めようとしているのです。

【戦車を止めた相模原の人びと】
 希望を持ってあきらめない、いまもこれからも行動する人への聞き込みは、歴史をもさかのぼります。1972年、相模原補給廠からベトナム戦争に送られる戦車を100日にわたって止めた闘いがありました。座り込み闘争の当事者へのインタビューと当時の様子を伝えるニュース映像は、かつて私たちのまわりでもこのような闘争があったこと、闘って勝ち取る希望があることを鮮烈なイメージを持って伝えます。
 そしてそれは「いま、どう行動したらよいか」考えている人たちに希望と行動の考え方を与えるものになります。
 映像、映画の役割とは、そのようなところにあるのではないでしょうか。

 映画の終わりの方で、バクレーさんは「ではどう行動したらよいか」についても呼びかけています。「署名活動をしよう。」「集会に参加しよう。」「デモに行こう。」「ビラを配ろう。」。「上映会をしましょう。」これにはちょっとくすぐったい気持ちになりました。上映会は、わたしたちの考えている行動、「映画会運動」そのままだからです。
 「映画会を市民運動に役立てましょう」「地域で、地方で上映会をして、話し合いの場を作りましょう」と呼びかけているわたしたちにとってはとても励まされました。 

 この映画、1万円から借りて上映できます。10人集まれば映画を見て話し合う機会が作れます。「変なアメリカ人が面白そうな映画をつくったから、いっしょに見に行こうよ」と気軽に誘える映画です。話合いもきっと盛り上がると思います。あなたもわたしも希望と行動に役立てましょう!

【スタッフ】
製作:平沢清一 リラン・バクレー 佐藤 契 
監督:リラン・バクレー   
撮影:高尾徹 伊藤ニコラ
編集:伊藤ニコラ
音楽:ダレン・チルトン

【出演】
横井久美子(歌手) 松元ヒロ(コメディアン) 前泊博盛(沖縄国際大学教授)ほか 
希望をもって行動している沖縄をはじめ全国のみなさん 
日本映画/90分/2017年制作
【配給】「ザ・思いやり」事務局
あなたのグループ、地域で上映会の企画をしませんか? (上映料1万円〜)
【問合せ】090-2625-8775(佐藤契)zaomoiyari@hotmail.co.jp

公式ホームページ・上映情報:https://zaomoiyari.com/

法学館憲法研究所事務局から

今週の一言
「『ザ・思いやりパート2〜希望と行動編〜』シリアスだがコミカルにあきさせない映画で米軍基地問題を問う」(2017月7月17日)  リラン・バクレーさん(映画監督)

シネマDE憲法
映画『ザ・思いやり』(2016月4月25日) 


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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