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映画『密偵』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 韓国で750万人の人が見た大ヒット作品です。 
 わたしたちの映画会に来てくれた人が「日本統治時代の朝鮮の抗日闘争を弾圧する警察権力を描いたものだが、アクションとしても、エンターテイメントとしても楽しめる作品だ」と薦めてくれました。

 朝鮮人でありながら日本の警察に所属するイ・ジョンチュルは、義烈団を監視しろ、 と部長のヒガシから特命を受ける。義烈団のリーダーであるキム・ウジンに近づき、 ウジンと懇意になるジョンチュル。しかしそれは、義烈団の団長チョン・チェサンが イ・ジョンチュルを"義烈団"へ引き込むための餌だった。 義烈団と日本警察の情報戦が展開する中、義烈団は上海から京城(現ソウル)へ向かう 列車に日本の主要施設を標的にした大量の爆弾を積み込むことに成功。敵か味方か、 密偵は誰なのか、互いに探り合いながら爆弾を積んだ列車は国境を越えて京城へ向かうが、 そこで待っていたのは・・・。(映画『密偵』オフィシャルサイトより)

 確かに十二分にアクションとサスペンスを楽しめる活劇です。二重スパイ、陰謀、謀略、そして題名にもなっている「密偵」、黒々とした闇の世界にうごめく人間ドラマが描かれます。
 ソン・ガンホをはじめとする俳優陣の演技は重厚で、ドンパチのアクション部分と謀略の心理戦が交互に表れ、見る者をその暗い、緊迫した世界へ引きずり込んでいきます。
 モダン・クラシックタッチというのでしょうか、1920年代、大正時代の京城や上海に舞台をつくった美術はある意味、新鮮で魅力的です。

 しかしながら私がこの映画を見たいと思った個人的な関心は、「朝鮮半島の統治の実態がどのようなものであったか」を知りたいというところになりました。おそらくこの映画はそうしたものに応える映画という意味ではちょっと違うのだろうと思います。
 しかしたくさんの韓国の人びとがこの映画を見て、どんな風に「朝鮮半島統治、日本の帝国主義による植民地化の時代」がイメージとして残るのでしょうか。そちらに関心があります。
 逆に私たち日本人があまりにも、そうした加害の歴史をイメージしない、想像しないままに来てしまっていると感じざるを得ません。あまりにも朝鮮の虐げられた歴史を知らないままに、それを侵したのが私たちの国家であるであることを知らないままにいるとあらためて実感されました。

 キム・ジウン監督はインタビューに答えて言っています。
 「この映画は反日映画ではない。日本の帝国主義を目の当たりにして失われた祖国を探し求めようとする朝鮮の抗日武装団体の話であり、その時代の一番矛盾した人物を通して時代の矛盾と暗い影を描こうとした。」
 「時代の矛盾により生じた人びとの存在意義を本作で表現した。それでありながら若さと生命を快くさらけ出す人間の純粋な情熱を同時に描いてみたかった。」(映画「密偵」パンフレットより)

 韓国の作り手の人たちの時代認識と歴史を見る目、その中に何を見いだそうとしているのか、を感じます。

 日本人の悪役というか敵(かたき)役を、一手に引き受けいるのは、鶴見辰吾が演じる日本警察警務部の部長ヒガシです。彼の描き方も通り一遍、ステレオタイプではなく、その中に潜む矛盾をよく表しています。しかし、私が知りたいと思っている「なぜこのような権力の歴史になったのか」日本帝国主義の侵略統治を背負っていくのは彼ひとりでは無理があります。
 その裏にある巨悪の原理にもう少し目を向けていきたいと思いました。
 もっと知り、問いつめていきたい。今につながるわたしたち自身につながることとして見ていきたいと私は思いました。

【スタッフ】
監督:キム・ジウン
プロデューサー:チェ・ジェウォン
脚本:イ・ジミン、パク・ジョンデ
撮影:キム・ジヨン
照明:チョ・ギョユン
編集:ヤン・ジンモ
美術:チョ・ファソン
音楽:モグ
衣装:チョ・サンギョン
ヘアメイク:キム・ソヨン

【キャスト】
イ・ジョンチュル:ソン・ガンホ
キム・ウジン:コン・ユ
ヨン・ゲスン:ハン・ジミン
ヒガシ:鶴見辰吾
ハシモト:オム・テグ
チョ・フェリョン:シン・ソンロク
チュ・ドンソン:ソ・ヨンジュ
キム・サヒ:チェ・ユファ
ルドゥビク:フォスター・バーデン
キム・ジャンオク:パク・ヒスン
チョン・チェサン:イ・ビョンホン

2016年制作・韓国映画・140分 

オフィシャルサイト:http://mittei.ayapro.ne.jp/

予告編:https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=HAWRo_M7E0U

シネマート新宿ほかで全国ロードショー中


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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