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映画『共犯者たち』(英語タイトル:Criminal Conspiracy) 


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

メディアはその内側を伝えてこなかった
 こんなことがお隣の韓国のメディアの内部で行われていたなんて知らなかった、関心をもっているはずのメディアのことについて、知らないでいた自分にまず驚きました。
 それも、ついこの間、意識して関心をもっていろいろな情報を集めていたはずの時期のできごと。共に生きた時代、親しみを持っていたはずの韓国の人たちがこんな状況の中にあることを何も知らないでいた自分が恥ずかしい思いがしました。
 それは、日本のメディアを通してしか、私たちは情報を知り得ないでいるということをあらためて実感させられるものでもありました。さらにそうしたメディアの問題を乗り越えて韓国のジャーナリストの人たちが道を開いてくれたという事実でもありました。

 韓国ドキュメンタリー映画『共犯者たち』は李明博政権から朴槿恵政権にかけての約九年の間、公共放送KBSと公営放送MBSを政権の「広報基地」に転落させた主犯と共犯者たちの実態を明らかにし、それに抵抗したジャーナリストたちの姿を描いて、韓国で大反響を呼びました。(『共犯者たち』上映シンポ実行委員会「政治権力vsメディア 映画『共犯者たち』の世界」はじめに より)

主人公は市民
 映画を見た後、崔承浩監督の話を聞く機会がありました。
 その中で「この映画の主人公は市民、この映画を拡げたのも市民」という話がありました。その言葉を聞いたときに、なんとも言えない爽快な気持ちになりました。
 つまり不当な弾圧を加えた政権と闘ったのは、自分たちメディアの人間だけではない。
そしてその闘いに勝利したのは、市民に訴え、市民と一緒になって闘ったからだ、ということでしょうか。
 そもそも、この『共犯者たち』のドキュメンタリー映画の制作の出発点は、「市民がジャーナリズムへの不信感を募らせている」ことを市民の活動の現場で、切実に感じたことから、といいます。そして「ジャーナリストにもう一度チャンスを」と求める気持ちがこの作品を生んだと言います。
 そうしたことから映画完成後、制作者たちは、まず市民に見せていく努力を重ねました。その結果、映画館で26万人、YouTubeを通じては250万人の市民がこの映画を見たと言います。市民はこの映画を見て、「私たちはテレビ局の中で、こんなことが起きていた、こんなに闘っている人がいるということを知らなかった。すまなかった。一緒に立ち上がりましょう」という声が寄せられたと言います。そうした市民と一緒になって闘うことを通してKBS、MBCのストライキは勝利し、さらに朴政権そのものを倒す力になっていったと言います。映画がその市民の闘いの中で大きな役割を果たしたと言えます。
 私たち(憲法を考える映画の会)でも、ささやかながら映画の上映活動を市民運動としていくことをずっと目標としていたので、映像の作り手、伝え手と市民運動の連帯をめざす運動の形がここにあると感激しました。

記者が質問できなかったら国は滅びます
 映画を見て、驚いたことはもうひとつあります。
 組合弾圧の経過であるとか、その抗議の交渉であるとか、それらを問いただす突撃取材の過程であるとか、ずっとカメラがまわっていることです。映像に残すことを活動のひとつの方法としている、いわば「取材」という方法を武器としていると言うことでしょうか。
 「日本のメディアでは、こんな取材は許されないのではないか」と確かめもしないで、頭から思ってしまうのは、それだけ飼い慣らされていて、「訴えていかなければならないという切実さ」が欠けていると言うことでしょうか。
 でもそうした「取材」の蓄積が、こうして残されたものがこの映画になって、それが隠されていることを明らかにし、それに「闘う意志」を伝え、それらを共有して市民と一緒に闘っていくことにつながったのだと思います。

記録だけでも意味がある
 「記録だけでも意味がある。」映画の中で元MBC記者が言います。
 「暗黒の時期に沈黙していなかった。それだけでも十分に意味がある。」
 記録だけでも残せば、歴史を明らかにできる。記録は未来の財産になる。
 いっぽうで記録を残す意味は、今、まさにわが国の政治の中で最も問題になっていることです。どれだけ目先の利益のために公的な「記録を作らない」「記録を捨てる」ということが平然と行われているか、それが歴史を壊す、歴史を作れなくすることにつながるか。政治も含めた文化という国民の財産を壊していく犯罪的なことであるのか、そのようなことをもこの映画は考えさせてくれました。
 是非、NHKの職員のみなさんは、安倍さんの直接的な干渉や圧力から始まって、籾井会長の時代に何があったのか、どのような圧力がかかってきたのか、そしてその中でNHKの人たちは「報道の自由」を守るためにどう闘ったのかを記録に残してほしいと思います。間違いと失敗と敗北を繰り返さないための材料としてほしいと思います。

今、闘っている人を孤独にするな
 KBSとMBSの労働組合、テレビ局の違いを越えて連帯して抵抗し闘っていったことが勝利につながったと思います。しかし、それとともに、それぞれの形で、それぞれの工夫でひとりひとりが個人個人の行動の形を示す姿を映画はとらえています。
 それを一人だけのものにしないこと。
 今、私の回りに強力な権力を相手に、孤独に闘っている人はいないだろうか。まず身の周りから見回してみよう、そう言う気持ちにさせる映画です。

【スタッフ】
監督:崔承浩(チェ・スンホ)
脚本:チョン・ジェホン
助演出:チョン・ジェヨン
撮影:チェ・ヒョンソク
音楽:チョン・ヨンジン
製作:ニュース打破(韓国探査ジャーナリズムセンター)
提供/配給:(株)アットナインフィルム
日本語版上映:「共犯者たち」東京上映実行委員会
日本語字幕:安田幸弘
105分/韓国映画/2017年

公式Facebook : https://www.facebook.com/film.newstapa
公式インスタグラム:https://www.instagram.com/film.newstapa



 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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