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映画『OKINAWA 1965』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 1965年に、はじめて沖縄を訪ね、沖縄の現実を見た報道写真家、嬉野京子さんが、戦後沖縄の実際と、それが今の沖縄の現実につながることを話すことがこの映画の軸になっていると思います。
 若い世代のこの映画の作り手は、またそうした沖縄の戦後についてほとんど知らないでいたこと、その初々しさがこの映画をつくる「こだわり」になっているし、スタンスにもなっているようです。

 沖縄の戦後史を語る三つの事件、運動、当事者に話を聞くことで、この映画は構成され、展開します。
 一つは1963年に始まる「祖国復帰運動」。ここでは写真家、嬉野京子さんが、その運動に参加し、当時の沖縄の現実をとらえる多くの写真を撮っています。その運動がさらに盛り上がっていくきっかけともなった「米軍トラックによる女児轢死事件」の写真も、この運動参加中に嬉野さんがとらえたものでした。
 もうひとつは1966年米軍海兵隊として沖縄で訓練を受け、沖縄からベトナム戦争に派兵された一人であるアレン・ネルソンさん。アレン・ネルソンさんは自身がベトナムで人を殺してしまった事実から、「軍隊とはなにか」「戦争とは何か」を考え続けます。1995年に再び沖縄を訪ねたときに、沖縄がベトナム戦争当時と全く変わっていないことに驚きます。そして日本国憲法9条に出会い、これこそ戦争の傷に苦しむ自分を含め、世界から戦争をなくし、平和をつくるものだと考え、布教活動のように日本国中を講演して歩きます。
 三つ目は米軍基地に土地を奪われた人々の伊江島の基地反対闘争とその非暴力運動に徹した阿波根昌鴻さんの思想。その考え方は、「福祉と平和の村」をめざした伊江島の「わびあいの里」に今も生き続けています。

 嬉野京子さんの1965年の写真は、沖縄の置かれている現実を表した報道写真として衝撃的でした。「ああ、この写真を撮ったのが嬉野さんだったのか」と映画を見ながら、この写真をはじめて見たときの衝撃を思い返しました。
 映画の中では、何といっても、嬉野さんが伊江島と沖縄から脱出するときの話がもっとも印象的でした。
 報道写真を撮りながら伊江島の反基地闘争に参加していた嬉野さんは米軍に拘束されてしまいます。米軍基地の憲兵大佐による尋問を受けます。あくまで自分は伊江島の人間だと主張する嬉野さんに、憲兵隊長はキレて言い放ちます。「もう行っていい。用はない」「あなたが沖縄にいる限り、あなたの生殺与奪の権利はわれわれ米軍が有しているということを覚えておきなさい」と。それは脅しではありませんでした。
 伊江島闘争を闘う人たちに守られ、漁船の船倉に隠れ伊江島を脱出し、飛行機が沖縄海域を出るまで生きた心地がしなかったことを語る嬉野さん。言わば逃避行の末、米軍が制空権を握っている北緯27度を飛行機で超えた時に、嬉野さんは考えます。「自分はこうして逃げ帰ればいいわけだが、沖縄で闘っている人たちには文字通り逃げ場はない」と。
 沖縄の人は逃げるところもないし、逃げることができない、このことが沖縄の戦後の、そして今も続いている沖縄の闘いを否応なく作り、続けられているのではないか、と強く感じました。

 この映画はある意味で、外から沖縄を訪ねた人、外から沖縄を見た人の視点で捉えた沖縄の戦後の実際であり、「今の沖縄のたたかい」であると言えそうです。映画の作り手も、内地の、それまで沖縄を知らないできた世代の人たちです。
 これまで沖縄の基地闘争を描いたドキュメンタリーはたくさんありますが、その闘争の描き方に違和感を感じてきたことを彼らはその著作の中で語っています。
 「…実は正直なところ、僕はこれまでに作られてきた高江や辺野古のゲート前を中心とした沖縄のドキュメンタリー映画が苦手だった。これらの映画は運動の内部に入り込み、時間をかけた取材がなされているので、日々のたたかいのディテールや人々の思いがダイレクトに伝わる良さはあるのだが、その反面、運動に入り込みすぎて、全く予備知識のない人たちにとっては暴力的な印象や悲壮感だけが印象に残ってしまい、結果、フラットな立場にいる人たちを遠ざけていってしまっているのではないか…」
 「それは違うのではないか」と感じることもあると思うし、「では、作り手の立ち位置がどこにあるのか」と疑問に思うところもあるかと思います。そうしたことを含め、この映画を見る私たちは、戦後これまでの沖縄といまの沖縄に対してどう考え、自分のものとしてとらえていくか、そうした課題を投げかけている映画だと思いました。

【スタッフ】
企画・製作・監督:都鳥伸也
企画・製作・編集:都鳥拓也
撮影:都鳥拓也・小野寺享・都鳥伸也
整音:若林大介
現場録音・助監督:藤崎仁志
ナレーター:小林タカ鹿
朗読:太田いず帆・悠雲
タイトルデザイン:堤岳彦

【登場人物】
嬉野京子
謝花悦子
具志堅隆松

2017年/日本映画/95分
配給:ロングラン・映像メディア事業部
オフィシャルサイト:http://longrun.main.jp/okinawa1965/
予告編:https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=co2-Oxuqwok
https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=4bQY7MqGppI

上映:アップリンク渋谷・横浜シネマリンほか全国自主上映中



 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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