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映画『モルゲン、明日』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           


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 ドイツは福島原発事故の3ヶ月後、脱原発宣言を行います。
 「2022年までにすべての原発を廃炉にする」というものです。この映画の監督の坂田雅子さんはそのメルケル首相の決断に驚きます。「どうしてドイツにできて、日本にできないのか」。その答えを求めて、ドイツに旅して、多くの人々の話を聞き歩いたのが今回の映画です。都市で、村で、学校で、教会で出会ったのは、脱原発と自然エネルギーへ情熱を燃やし、実践する多くの人々でした。
 それは国の政治の力と言うより市民運動、住民運動がどれだけ熟成した土壌を持っているかにあったのではないかと考えます。そうした土壌は、いつ、どこでつくられたのか。それは先の戦争で民主主義を壊し、ナチスの支配を許し、その結果、歴史上、例のないユダヤ人の大量虐殺をしてしまった国民としての反省から発しているようです。
 「わたしたちは、独裁政治を経験しているから政府や権威に対して批判的なの」「自分の行動は自分で考えて決めるの」反原発運動の集会に参加した女性へのインタビューの答えです。
 とくに60年代後半の学生運動。単に党派的、政治的な対立ではなく、生活そのもの生き方について考えていこうとする土壌ができていったことがわかります。1968年の学生運動をきっかけに芽生えた反原発・環境保護の意識と情熱を政治に反映し、次世代につなげようとしている彼らの姿は、世界は市民の手で変えられると教えてくれます。

 私はこの映画を見て、単に原発に反対する、あるいはその代替エネルギーを探して生活の中に取り入れるという運動の形だけでなく、環境を破壊しない方法を選ぶということ自体がいかに生活を楽しむ充足感に満ちたものをもたらすのか、そうした精神的なものが人々の気持ちの底流にあるということを感じることができました。
 自然エネルギーにすべて切り替えたホテルの経営者がインタビューの終わりに言います。「いい気分でよく眠れるんですよ」。なんとなくその気分が分かる気がします。
 ひとたびそうした快感を実感してしまったら、それに反したことをすると、もう気持の安らぎを得ることはできません。これはエネルギーだけの問題ではありません。わたしたちが、今、何か落ち着かない、満たされないものを感じてその正体がわからないでいる気持に、ある意味一つの答えを得ることができたような気がします。それは民主主義がまもられていないということでもそうですし、また不正を隠すことがまかり通ってしまうとか、人権が侵されたまま放置されているとか、そういったことにも同じようなものを感じるはずです。既にそういったおかしいことを感じてしまうと居ても立ってもいられない、そんな社会はイヤだ、変えていきたいと思ってしまうのです。変革を求める気持です。そのような感じ方です。

 この映画はまた民主的に地道に、生活の中から変革を進めるということがどういうことであるか、ということも問いかけています。そうした意味で、わたしたちの市民運動、住民運動にもサジェスションを与えてくれます。しかもその実践者の市民から。
 変革、社会を変えていこうとする力、わたしたちが生活していくのに望ましい社会をつくっていこうとする力、その実感と充足感が共通しています。それをまた未来に伝えていくこと。それは責務であるとともに、さらに未来の人たちといっしょに創っていくこと、積み上げていく社会の実感なのだと思います。そう感じてすがすがしい思いがしました。『モルゲン、明日』とタイトルを付けた意味はそうしたところにあるのではないか、と考えました。

【制作スタッフ】
企画・監督・撮影:坂田雅子
編集・構成:大重裕二
整音:小川武
撮影:Maja Wadin、 Falko Sedel
コーディネーター・通訳:福澤啓臣
チェロ演奏:柳田耕治
2018年制作/日本映画/日本語・英語・ドイツ語/71分

配給・宣伝・問合せ:リガード
E-mail:info@regard-films.com

【公式サイト】  http://masakosakata.com/
【予告編】    https://www.youtube.com/watch?v=H8NPoRiLrtY
【上映情報】   2018年10月6日(土)?14日(日)
         東京シネマハウス大塚にて9日間限定上映 ほか全国順次公開予定




 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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