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政党助成金違憲訴訟
T・O記

 1995年から、政党助成法が施行され、一定の要件(所属する国会議員が5名以上もしくは直近の国政選挙で得票率5%以上)を満たした政党には、所属議員の数や得票数に応じて、政党助成金が国庫から支払われます。政党助成金の総額は、人口に250円をかけた額とされ、2007年度は319億4000万円となっており、1995年からの総額は4000億円を超えます(なお、日本共産党は、政党助成法が憲法違反だとして、政党助成金を受け取っていません)。

 国民はそれぞれの思想・信条に従い、特定の政党を支持したり、あるいは支持しなかったりします。また支持の度合いも人によってさまざまです。しかし、この政党助成金は、そうした国民の多様性に配慮せず、一人当たり250円を毎年支出するという制度です。そこで、こうした制度は、思想・良心の自由を保障した憲法第19条に反するなどとして、埼玉県の住民113名が訴訟を提起しました。

 政党助成金は、思想・良心の自由を侵害するという問題だけではなく、政党が助成金に依存してしまい、国家との関係が強まる一方で、国民との関係が弱まってしまうおそれがあります。また、上記の要件を満たさない政党が集合離散を繰り返すという問題も指摘されています(郵政民営化問題で自民党を離れた議員の復党も、政党助成金が目的ではないか、との指摘もあります)。その使途が不明朗であることも問題視されています。上記の要件を満たさない小政党や無所属議員には支給されないという問題もあります。

 こうした問題があるにもかかわらず、2004年2月25日に言い渡された東京地裁判決、および、2005年1月17日に言い渡された控訴審判決は、政党助成金が原告らの思想信条の発露を強制するものではないなどとして、原告らの訴えを斥けました。原告らは上告しましたが、最高裁は2006年4月13日、憲法問題ではないとの理由で上告を棄却しました。

 この政党助成金制度を、「民主主義のコスト」として正当化する議論があります。しかし、そもそも政党とは、国の機関ではなく、私的結社です。それゆえ、そのコストは、その政党の党員やその政党を支持する人たちが負担すべきではないでしょうか。それこそが「民主主義のコスト」であるように思われます。

 この政党助成金の問題から、民主主義の本来あるべき姿というものを、改めて考えてみる必要があるように思います。

<投稿>「政党への寄付の自由」はどのように保障されるべきか
―「政党助成法違憲訴訟」の最高裁判決についてー

大久保賢一(原告弁護団・埼玉県在住)

「政党助成法違憲訴訟」の提起
 02年3月、埼玉県飯能市周辺の住民113名が、政党助成法に基づく政党への税金交付は「政党への寄付の自由」を侵害するとして、「政党助成法違憲訴訟」を提起した。
 政党に寄付するかしないか、どの政党にいくらするかは、国民一人ひとりが自主的に決定することであって、それは憲法19条が保障する「思想・良心の自由」の政治的場面における一つの形態であり、「政党への寄付の自由」として保障されなければならない。ところが、現行の政党助成法は、強制的に徴収した税金を各政党に自動的に配分するもの(税金の「自動流出装置」)であって、原告の自主的判断が排除されているから、原告の「政党への寄付の自由」を侵害するという主張である。

下級審の判断
 東京高裁は、「政党への寄付の自由、すなわち、政党に寄付するかどうか、どの政党にいくらするか等は、国民が政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であり、それは思想及び良心の自由(憲法19条)の一側面であるということができ、このような自由権はすべての個人が享有するものといえる。」と、「政党への寄付の自由」という言葉を用い、その根拠を憲法19条に求め、且つすべての個人をその享有主体とした。しかし、政党助成法は、国民個人に直接何らかの作為又は不作為を求めるものではないから、国民に特定の政党に対する寄付を強制しているとはいえないので、「政党への寄付の自由」は侵害されていないと結論した。

最高裁に問いかけたこと
 そこで問題は、「政党への寄付の自由」を憲法19条の保障の下におきながら、国民に直接政党への寄付を強制していないということだけで、政党助成法は違憲ではなくなるのか。国民は税金の徴収を免れることはできないし、法や予算の制定と執行に直接関与することもできない。本来、自分の政治的思想、見解で自主的に判断されるべき「政党への寄付の自由」は、国会における多数決原理で奪うことのできない個人の自由ではないのか、ということになる。

最高裁の判断
 ところが、最高裁は憲法問題ではないとして上告を棄却した。憲法19条の一形態である「政党への寄付の自由」の保障のあり方が問われているのに、憲法問題ではないというのである。そもそも「政党への寄付」を「市民として自主的に判断すべき事項」として位置づけたのは最高裁であった。強制加入団体である税理士会は、さまざまな政治的見解を持つ構成員がいるのだから、政治献金をしてはならない。なぜなら、政治献金をするかどうかは税理士個人の自主的判断によるという論理である。
 しかし、最高裁は、政党助成法の制定と執行が国民個人の「政党への寄付の自由」を侵害するかどうかについて、判断を拒否したのである。なんとも情けない無責任極まる態度である。政党助成のあり方は、思想・良心の自由と民主主義のあり方にかかわる憲法上の基本的テーマである。最高裁の憲法感覚が根底から問われなければならないであろう。(07年5月9日)