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千葉(2)

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障害者差別禁止千葉県条例
千葉県条例を第一歩として
太田修平(日本障害者協議会 理事 企画委員長)

多くの市民が

 「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」が昨年9月成立し、今年施行された。障害を理由にする差別を禁止するという、自治体としては画期的な条例である。
 この条例の特徴は、「なくすべき差別等」を具体的に規定していることである。「福祉サービスにおける差別」「医療における差別」「商品及びサービス提供における差別」「労働者の雇用における差別」「教育における差別」「建物等及び公共交通機関における差別」「不動産の取引における差別」そして、「情報の提供等における差別」などと定義を明確にしている。また、「合理的な配慮に基づく措置」も明記され、「障害のある人が障害のない人と実質的に同等の日常生活又は社会生活を営むために必要な合理的な配慮に基づく措置を行ないこともまた差別であるとの認識に立ち、当該差別の状況に応じて必要な合理的な配慮に基づく措置を行わなければならない。」としている。
 アメリカのADAが成立して20年近くが経つ。日本にも“障害者差別禁止法を”という訴えは、障害当事者・関係者からずっと提起され続けているが、未だに実現に至っていない。「障害があるから」ということで、差別されたり嫌な経験をした人は障害者であればすべてである、といっても過言ではない。
 ところで、千葉県では条例制定に向けて、県民から「差別に当たると思われる事例」を募集し、教育、雇用など広範な分野に当たり、約800事例がよせられ、それを皮切りに、「障害者差別をなくすための研究会」を設置し、様々な角度から検討を加えていった。タウンミーティングの開催などを通して、条例案は詰められていったが、一時は一部の経済界をはじめとする人たちの反対もあり、廃案の危機にさらされたが、条例を求める市民の強い働きかけもあって、改めて議会に再上程、可決に至った。あらゆる階層の市民を議論に巻き込むことにとって、この条例は成立することができたということができる。
 さて、この条例の大きな問題点を挙げるとしたら、加害者の罰則規定を盛り込みきれなかったことと言える。これは、条例の限界かもしれない。基本的には国レベルの障害者差別禁止法が必要なのである。
 
差別禁止法に向けて

 昨年国連では「障害者に関する権利条約」が採択され、118カ国が署名し、12カ国がすでに批准している。(2007年12月14日現在)今、国内法を権利条約の視点から検証、再構築することが求められている。権利条約の第4条(b)では、「障害者に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し、又は廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとること。」が明記されている。
 権利条約が採択され、風向きはだいぶ変わってきたものの、私たち障害者団体と政府とのこれまでの協議の中で、障害者差別禁止法の制定はそう容易くない状況にはかわりはない。
 国連の動きというグローバルな流れとともに、千葉県の条例にみられるように、地域の声の高まりということも、障害者差別禁止法を勝ち取っていく大きな力となってくる。
 各地域、自治体で「障害者差別禁止条例」をつくるアクションを起こしていくこと、国をも動かすという認識にたつことが重要である。

<寄稿>

21世紀は差別の無い社会に

坂下共(障害者・患者9条の会事務局)

「障害者」という定義をどう考えるのか、統計などの数字も大きく変えてしまうこのテーマについて、日本は欧米と大きく異なっています。遅れていると言っても差し支えありません。
そもそも日本における障害者福祉は、戦争による傷痍軍人へのリハビリテーションがその始まりでした。その後、知的障害者が加わり、近年になって精神障害者もその対象として位置づけられるようになりました。しかし、難病やアルコール依存などの人は未だに福祉の対象とは見られておらず、先般施行された障害者自立支援法でもこれらの人は対象から外されています。これは医学モデルに基づく、障害者を少なくカウントするための仕掛けといわざるを得ません。
一方、欧米では薬物中毒者なども福祉の対象であり、時には妊婦やけが人までも一過的な障害者として認識されています。そのため、日本では10%と言われている障害者数も、欧米では20%から30%というのが常識となっているわけです。
「障害者を締め出す社会はもろくて弱い社会」こんな文言が国連の決議に出てきます。日本でも詩人である金子みすずが謡った「みんなちがって、みんないい」そうした思いが共有されている社会こそ、21世紀に私たちが目指すべき社会ではないでしょうか。二度の大きな戦争を経験した私たちは、あらためてそのことを胸に刻まなければいけません。その第一歩が、国連で採択された障害者の権利条約であり、国内で言えば千葉県のような差別禁止条例の取り組みだと思います。これまで目をそらしてきた「差別」というテーマに向き合っていく、その端緒になることを期待しています。