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石川(2)

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「高」訴訟(生活保護費減額処分取消請求訴訟)について
高眞司第1次訴訟原告訴訟代理人
弁護士 奥村 回(金沢弁護士会所属)

1 事件概要
  原告の高 眞司氏は、24時間介護の必要な身体障害者である。障害年金と生活保護により、施設へは入らず、アパートで一人暮らしをしていた。
  その高氏が、石川県心身障害者扶養共済年金(月額2万円)の支給を受けたものの、それが生活保護で収入認定されたため、生活保護費が、その金額分減額されることになり、審査請求、そして訴訟となった。
  訴訟は、上記扶養共済年金を生活保護法4条により収入認定(生活保護費を減額すること)が可能かどうか?生活保護における介護扶助の内容(他人介護料の特別基準)に上限を設けることができるかどうか?その金額は?そして高氏に保障されるべき介護は?そもそも高氏が一般社会で暮らす権利と必要な保障は(高氏のような重度の障害を有する者は、施設での生活を選択すべきではないか)?等が問題となった。
2 主な経過
 95. 7.18 訴訟提起
 99. 6.11 第1審(金沢地裁)判決 原告勝訴
 00. 9.11 控訴審(名古屋高裁金沢支部)判決 被控訴人(原告)勝訴
 03. 7.17 最高裁第一小法廷が上告不受理の決定 原告勝訴の確定 
3 判決
  判決は、原告高氏の生活実態を詳細に認定し介護料が不足していること、障害者の権利(自立)等に関する国際的・国内的な法や制度の流れを認定した上で、収入認定を規定する生活保護法4条及び8条の法解釈により、原告勝訴を言い渡した。但し、他人介護料の基準そのものの問題については、国の裁量を大きく認める判断に終わった。
  生活保護関係訴訟では、第一審、控訴審そして最高裁と全てに勝訴した初の訴訟となった。
4 本件訴訟の成果等
  第一に、一審及び控訴審が認定した障害者への支援等の流れそして障害者においても、施設ではなく通常の社会で生活していく権利があり、それが最大限尊重されなければならないとしたこと等は、障害者関係立法、諸施策の基本を確認し、障害を有する者が障害を有しない者となんら変わらない人間としての基本的権利(憲法14条、22条等)を有することを確認したものと評価できる。
  第二に、被告側は、終始、生活保護行政の行政裁量を、強力に主張してきたが、裁判所は、生活保護法4条の収入認定についてではあるが、被告側の裁量論を認めなかった。これは、法の支配の確保、誰もが国を相手としても裁判で対等に争うことができること(憲法31,32条)をも前進させたものと考える。
  第三に、生活保護関係訴訟は、いわゆる朝日訴訟以降、多くの裁判が闘われたが、勝訴・敗訴の結果だけではなく、国や自治体の施策そして法の形成に影響を与えてきた。
  本件は、一審、控訴審、最高裁で勝訴して、生活保護法4条の収入認定についての流れを大きく規定していくものと考えられ、生活保護行政へ一石を投じるとともに、生活保護そして憲法25条の生存権保障の充実に資するものと考えられる。

以上