法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp


 

愛知

<<戻る
進む>>
一覧表へ>>
愛知における5/3市民のつどい
本 秀紀(愛知憲法会議事務局長・名古屋大学教授)

 1965年、改憲状況が厳しさを増す中で愛知憲法会議(憲法改悪阻止愛知県各界連絡会議)が誕生して以来、愛知では毎年5月3日の憲法記念日に、全国有数規模の「市民のつどい」を開催してきました。今年で43回を数えた「つどい」を振り返ってみると、時代状況に応じてゲストやスタイルが変化してきたのがわかります。

 第1期(1965年〜70年代後半):革新自治体の伸張を背景に、主に自治体の首長と法学者をお招きして、講演していただきました。毎年のテーマや講演内容も、地方政治の革新にくわえ、小選挙区制反対、大学の自治擁護、沖縄返還問題など、時どきの政治課題を直接に扱うものが目立ちます。中でも、美濃部亮吉・東京都知事と蜷川虎三・京都府知事を講師に迎えた1968年は、なんと12000人の市民が大集結。会場に入りきれず周りを取り囲む参加者のために、スピーカーで音声を流したという「伝説」が語り草となっています。

 第2期(70年代末〜80年代後半):70年代後半以降の「右傾化」に対し憲法の視点から応戦しつつも、井上ひさしさん(作家・79年)、木下順二さん(劇作家・83年)、山田洋次さん(映画監督・85年)らをお招きし、少し腰を落として文化と憲法をじっくり考えるというコンセプトを取り入れました。講演だけでなく演劇などの上演を試み始めたのも、この時期の特徴です。

 第3期(80年代末〜90年代):第2期の流れを大きく発展させて、憲法施行40周年の1987年には、日本を代表する作曲家の外山雄三さんと林光さんに「交響曲〈五月の歌〉」を委嘱。外山さんの指揮、名古屋フィルハーモニー交響楽団の演奏をバックに、約400名の市民大合唱団が「憲法のこころ」を歌い上げ、3500名の参加者に大きな感動をもたらしました(記念講演は評論家の加藤周一さん)。こうした記念講演と音楽・劇・コントなどの組み合わせは、「市民のつどい」の基本的なスタイルとして定着し、山田太一さん(脚本家・91年)、永六輔さん(放送タレント・93年)、小田実さん(作家・97年)などをお迎えして、現場の視点から日本社会の問題状況を鋭く読み解いていただくとともに、「N響アワー」でおなじみの池辺晋一郎さん(作曲家・94年)に自作の指揮をしていただいたり、ザ・ニュースペーパー(98年)の憲法コントを楽しんだりしました。

 第4期(2000年以降):国会の両院に憲法調査会が設置された2000年以降は、第3期のスタイルを継承しつつも、改憲論議がクローズアップされる中で、憲法状況に対し、より直接的に向き合うことを意図して企画してきました。講師は、辛淑玉さん(人材育成コンサルタント・01年)、辺見庸さん(作家・02年)、高橋哲哉さん(哲学者・03年)、憲法の生みの親・ベアテ・シロタ・ゴードンさん(05年)など。上條恒彦さん(歌手・03年)の平和コンサートも感動を呼びました。この時期は、改憲状況への危機感からか、以前にも増して参加者が増え、とくに政治学者の姜尚中さんをお招きした今年は、会場定員をはるかに上回る3500人が集い、第2会場・第3会場に同時中継をするという盛況ぶりでした。

 このように時代状況に応じた変化はあるものの、一貫して心がけてきた変わらぬものがあります。それは、幅広い分野で活躍されているゲストが、必ずしも憲法問題を直接論じなくても、それぞれプロの現場から見た日本の問題状況を活写していただくことで、平和で人間らしい暮らしを求める憲法のこころと自ずと響き合うというコンセプトです。常に憲法のこころに立ち返るというこの構えこそが、一過性の集会やイベントにとどまることなく、いわば栄養補給のために5月3日は毎年「市民のつどい」に出かけようという愛知の市民文化を形成してきたのだと自負しています。

 来年は、一段と厳しい憲法状況に鑑みて、今まで以上にビッグな企画を準備中です(憲法フェスティバル2008inあいち―「交響曲〈五月の歌〉」の再演、精神科医・香山リカさん、憲法学者・森英樹さんの講演)。多くの市民の皆さんが足を運んで下さることを願ってやみません。