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島根

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島根県における憲法運動の現状と課題
岡崎勝彦(島根大学名誉教授・愛知学院大学法科大学院教授)

はじめに

 周知の通り、現在島根県は東京一極集中政策のもと、その「周辺」地域として、少子・高齢化、過疎・限界集落、その上、欲しくも無い原発等々、人も金も奪われ「格差社会」の極みにあるともいえる現状にあって、長年竹下・青木と続く与党自民王国にあまんじてきた。
しかし、先の参院選において、なんと自他共に青木の後継者と目されていた景山候補を国民新党の新人で民主党推薦の女性候補が3万票の大差で破るという、反自民のなだれ現象を県民はやってのけたというのが、島根県の直近の政治現象である(地元紙の直前調査によれば、自民40.4、民主11.9、公明4.4、共産1.1、社民党1.3、国民新党1.2、支持政党なし29.5%)。
十分には憲法、とりわけ九条問題を争点には出来なかったものの、いまや、「王国」の崩壊と「改悪阻止」の粘り強い闘いが益々密接不可分の課題となってきている。

運動の経過と現状

 2007年5月3日松江市での憲法集会(メイク・ピースの集い)は、「憲法改悪反対! 5・3実行委員会」(代表・原田豊己松江カトリック教会神父)主催で県民会館に500人が参加して開かれた。実行委員会には憲法の改悪を許さない島根ハトの会、島根県憲法会議、しまね労連、平和フォーラムしまね、ぴぃすうぉ〜く松江など、平和・市民団体、労組など30団体が党派をこえて参加している。従来別々に開かれていた5・3集会が2004年から統一して開かれることになり、憲法運動の全県的な発展をはげましている。新聞意見広告も実行委員会形式などでとりくまれている。
 島根県憲法会議は、島根大学教官なども参加して2002年に結成され、18回の市民憲法フォーラムなどにとりくんできた。また、9・11米同時多発テロ、小泉内閣登場のもとで、自衛隊派兵・有事法制反対県共同センターが発足、いまは憲法と平和を守る島根県共同センターとして、「新テロ特措法案反対、守れ憲法9条」などを求める木曜日ごとの定例宣伝署名行動などを続けている。各地域・職場・分野の憲法運動の全県交流集会を2回開催してきている。
 島根県内の「9条の会」もまた、66(12地域、13分野、41職場)に広がっている。9月9日には高遠菜穂子さんを迎えて島根大学内で「9条まつり」(150人)を開催。 映画「日本の青空」上映会は松江、出雲、大田3市で開かれ、1300人が観賞。県内各地でも準備が進んでいる。しまね労連は、県民過半数署名を目標にかかげ署名推進委員会を設置して、県民的な共同を推進しようと呼びかけている。県弁護士会は(現在、37人)、その小回りのよさを逆手に当初の課題別憲法学習講演会や会員による憲法劇の企画ものを踏まえて、今や若手会員を中心に県下各市町村単位での出前講義に軸足を移している。

今後の課題

 改憲反対の一致点で政治的立場をこえた共同をさらに大きく広げることである。@「9条の会」など思想信条をこえた共同の組織を、県内各職場や全市町村に、また都市部では校区ごとにつくっていく。A「島根9条の会」結成を展望しつつ、県レベルの交流・ネットワークづくりを進める。B住民過半数署名をめざして各職場・地域・分野で目標を決め、対話、交流を広げる。C各団体や「9条の会」などが学習活動を進めることは運動の前進に不可欠。戦争体験を聞く会、地域戦跡めぐり、憲法にかかわる映画の上映運動など多彩な形でとりくむ。D宣伝活動は県内全市で定期化し、「9の日」宣伝活動をひろげ、リーフ・ビデオなども活用する。Eそのためにも、県共同センターなど運動の推進体制の確立、強化が急がれる。

おわりに

 このほど、自民の敗北を受けて開かれた自民党県連の会議で、青木会長は「全国に誇れる保守王国が絶対に崩れないよう、もう一回立て直したい」との決意を早速に表明、その思いには並々ならぬものがある。また、先ごろは、二大党首間にあって国連のお墨付きさえあれば、国会にかけることなく政府の意思で世界のどこにでも自衛隊の海外派遣を可とする恒久法制定の密室合意に達していたという「解釈改憲」の重い現実を踏まえ、私たちもまた、より一層したたかに「平和バネ」をしなやかに利かせつつ、変革は常に「辺境」から始まるという歴史の教訓を胸に、この地の伝統ある平和と進歩の火を燃やし続けていきたものである(なお、運動の現状等につき渡部節雄島根県憲法会議代表委員にお世話になった)。