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島根(2)

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竹島問題
H.T.記

 竹島(たけしま)は、日本海に浮かぶ総面積約0.23平方キロメートルの小さな島です。東島(女島)、西島(男島)と呼ばれる二つの小島とその周辺の総計37の岩礁からなります。日本領の隠岐島と韓国領の鬱陵島の間に位置します。周囲は断崖絶壁で人が常駐できる環境にはありません。周辺海域は対馬暖流と北からのリマン寒流の接点になっており、魚介藻類の種類、数量とも大変豊富な漁場です。

 日韓両国がこの島の領有権を主張し、外交問題となっていることは周知のとおりです。韓国ではこの島を独島(トクト)と読んでいます。領有権をめぐる現在までの経過は以下のとおりです。

 日本では古くは「松島」の名によって今日の竹島が文献、地図に表れています。例えば、1650年代に伯耆藩(鳥取)の大谷、村川両家が「松島」を幕府から拝領し経営していたという記録があり、また、刊行日本地図として最も代表的な「改正日本輿地路程全図」(1779年)には現在の竹島の位置関係が正しく記載されています。

 他方、韓国の15〜16世紀頃の古文献にも、于山島又は三峰島という名前で竹島の記述があります(但し、これが「竹島」を指すかは争いがあります)。現在の韓国の中高の歴史教科書では、17世紀末に韓国の漁民安龍福がこの島を朝鮮の領土であることを認めさせるために日本に渡ったと記載しています。

 明治時代になり、日本は1905年に閣議決定と島根県告示で領有権を確認しています。

 日本の敗戦後、GHQは竹島を沖縄や小笠原諸島と同様に、日本の行政権から外しました。同時に、日本漁船の操業区域を規定したマッカーサーラインの外に置かれました。

 その後1952年1月18日、李承晩(イ・スンマン)韓国初代大統領は海洋主権の宣言ライン、いわゆる「李承晩ライン」を設け、韓国は竹島周辺海域の水産資源を得るとともに、竹島を固有の領土であると主張します。これに対して日本政府が抗議し、竹島の領有権が両国間の争いとして顕在化しました。韓国はさらに、1954年に沿岸警備隊を常駐させ、灯台や無線電信所を設置して実力をもって支配しています。

 65年、日韓条約が締結され、両国の関係は正常化されました。しかし、竹島の帰属については意見が一致せず、その際取り交わされた紛争解決に関する交換公文は、外交上の経路を通じて解決されなかった紛争は調停によって解決を図ることにしました。もっとも、韓国は、竹島問題は交換公文でいう「紛争」ではないという立場を採っています。

 この問題は、1996年から97年にかけて、国連海洋法条約による200海里経済水域の設定問題を受けてエスカレートしました。両国の間では領有権の問題と経済水域の設定交渉は一応切り離すことで合意がなされていますが、他方、韓国は領有問題を討議すること自体に反対しています。

 2005年3月、島根県議会は、2月22日を「竹島の日」とする条例を制定しました。1905年に竹島を同県に編入した告示がなされた100周年を記念して領有権の早期確立をめざした運動を進めることを内容としています。

 これに対して、韓国政府は、条例の即時撤廃を求める抗議声明を出しました。そして、1905年の日本政府が竹島の領有権ありとした閣議決定は、日本軍によって韓国の外交権が奪われている状態のもとでなされたものであり無効だとし、歴史問題と領土問題を結びつけた主張をしました。

 こうした中で文部科学省は、本年7月14日、竹島について初めて明記した中学校社会科の新学習指導要領解説書を公表しました。この地理部分の解説書では「固有の領土」という記述は避けましたが、「北方領土と同様にわが国の領土・領域について理解を深めさせる」と明記しました。「北方領土はわが国固有の領土」と記載しつつ、竹島を「北方領土と同様に」とすることで、日本の領有や韓国による占拠を間接的に説明した形となっています。これに対して韓国政府は駐日大使を一時帰国させる措置を取りました。

 日韓両国の間には、歴史をどう見るかなど、竹島の問題以外にも多くの課題があります。竹島の問題は、真の友好関係を樹立するために、両国の国民の相互の理解を総合的に深める中で解決されなければならないでしょう。
 この問題は、実質的には漁業を営む経済水域の問題という性格が濃厚です。争いとなっている水域において、時期によりどちらがどの程度漁業を営んできたかを厳密に確定することが可能かという問題もあります。共存し共栄する道を探ることが肝要ではないでしょうか。グローバル化で国境という垣根が持つ意義が日増しに小さくなってきている現在、「国民国家」の範囲の争いで両国の関係を悪化させることはお互いに賢明ではないと思われます。