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岡山(2)

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金剛山歌劇団会場使用事件 ― 公の施設の使用不許可は憲法違反である
奥津 亘(原告代理人弁護士・岡山県弁護士会)

 金剛山歌劇団は、1955年に在日朝鮮人の音楽舞踊家により、在日朝鮮中央芸術団として設立され、朝鮮半島の民族的舞踊・音楽・歌劇を公演し、その舞踊等を広めると共に在日コリアンと日本人との友好と交流を図っている音楽団体である。
 金剛山という名が付いているが、日本国内における在日コリアンの団体である。
 岡山県においては、かねてより岡山市と倉敷市とで交互に毎年公演を実行していた。
 公演は、在住岡山県下のコリアンを中心として実行委員会を結成し、この実行委員会が中心となって広く県下に呼びかけ、賛助広告を募り、その広告料によって運営していたものである。残った広告料は、在日朝鮮学校に寄附されていた。
 2006年までは、毎年行う公演について、岡山市民会館・岡山シンフォニーホール・倉敷市民会館という、いわゆる公共施設は何ら問題なくその使用を許可していた。
 ところが、2006年10月13日、財団法人倉敷文化振興財団(倉敷市長から公の施設の倉敷市民会館の管理者として指定された指定管理者)は、それまで許可をしていた倉敷市民会館の使用許可を取消した。
 その理由は、公演当日およびそれまでの間に、公演に反対するものによる妨害活動が激しくなり、施設の管理上支障が生じるというものであった。つまり、街宣車を連ねて朝鮮人民民主主義国(北朝鮮)を批判し、在日朝鮮人への攻撃を繰り返す団体の宣伝活動により、施設のみならず施設の周辺の人々が迷惑を被り、施設の管理ができない、というものである。
 このような理由で公共施設の利用ができないというのは、極めて不当である。
 そこで、公演準備をしていた人々は立ち上がり、岡山地方裁判所に使用許可の取消処分に対する抗告訴訟と取消処分の執行停止を求めた。
 裁判所はこれを認めて、使用許可の取消を停止するとの裁判をした。これにより、2006年倉敷公演は無事開催することができた。
 2007年、同じことが岡山市におけるシンフォニーホールについても生じた。
 2007年は、岡山市において本公演を開催するため実行委員会を結成し、岡山シンフォニーホール(財団法人岡山シンフォニーホールが岡山市から指定を受けた指定管理者)に公演の使用申込をした。
 ところが、財団法人は、使用不許可とする処分を行ったのである。
 理由は、倉敷市と同じく、本公演に対する反対行動をとる者達の行動により、シンフォニーホールの他のテナントに営業的損失を与えるおそれがあること、ホール周辺の交通も混乱すること、ホールを利用する他の利用者に多大の迷惑を被らせ市民に不安を与えるというものであった。
 倉敷と同様、主催者には関係のない第三者の迷惑行為により公演ができないことは、集会・結社・表現の自由に対する重大な権利侵害であるとして、岡山地方裁判所に許可をするよう求める義務付け訴訟を提起し、急を要するので、仮の義務付けもするように申立をした。
 幸い、裁判所はこれを認めて、シンフォニーホールの使用を仮に許可せよとの裁判をした。これにより、この年も無事公演をすることができた。
 裁判所は次のようにいう。
 管理者が正当な理由もないのにその利用を拒否するときは、憲法の保障する集会の自由、表現の自由の不当な制限につながるおそれがある。主催者が集会を平穏に行おうとしているのに、これに反対する者が、これを実力で阻止し妨害しようとして紛争を起こすことを理由として施設の利用を拒むことができるのは、警察の適切な警備によってもなお混乱を防止できないなど、特別な場合に限られる。本件公演については、そのような特別な場合とはとうていいえないので、使用させないのは正当な理由があるといえない。
 裁判所の適切な判断で公演ができ、集会の自由という憲法上の権利が守られた一つの事例となった。