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法学館憲法研究所

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2011年

 
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東日本大震災
H.O.記

 2011年3月11日、14時46分、宮城県沖東南約130km、深さ約24kmで、日本の観測史上最大のマグニチュード9.0という超巨大地震が発生しました。宮城県北部で震度7を記録したほか、宮城県、福島県、茨城県、栃木県などで震度6強、北海道から九州地方にかけて震度6弱から震度1の揺れが観測されました。本震後にも広い範囲で余震が多発しました。この地震により、各地で波高10m以上、最大遡上高40 mにも上る津波が発生し、東北地方と関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害が発生しました。この災害による死者は19,630名(関連死を含む)、行方不明者は2,569名(2018年3月1日時点。消防庁発表。)となり、阪神・淡路大震災を上回る戦後最大の災害となりした。
 震災発生直後、約40万人が避難を余儀なくされました。この地震で、建築物の全壊・半壊は40万戸を超え、停電世帯は800万戸、断水世帯は180万戸を超えました。道路損壊、山崖崩れ、液状化現象、地盤沈下、ダムの決壊なども発生し、各種インフラが寸断されました。
 避難者等の数は震災後7年となったいまも約7万人を超えており、約3万人の被災者が不自由な仮設住宅等での暮らしを余儀なくされています。

 この間震災復興のための諸政策がとられてきましたが、何よりも被災者の生活と生業の再建が重要となります。しかし、いまなおそこには多くの課題が残されています。その住居の手当て、住宅再建支援の改善・拡充、農業や水産業、中小企業・小規模事業所等の復興・再建支援などが求められます。政府は「復興期間」を2020年度までの10年間として、復興策の打ち切り・縮小がはかられようとしていますが、被災者をめぐる現実をふまえた手立てが講じられる必要があります。被災者の高齢化も進んでいることもふまえ、心のケアも含め、その一人ひとりに対するきめ細かい「人間の復興」が求められます。
 復旧・復興の課題としては、高台での市街地建設や下水道、道路や河川の整備なども残されています。なお、ハード面の復旧においては大型開発が大企業の参入の場になっているという批判があります。諸課題は、被災者など地域の人々の実情や要求をふまえて進められねばなりません。

 地震発生後、東京電力福島第一原子力発電所(以下、福島第一原発という)において、放射性物質が漏出する重大事故が発生しました。原子炉の電源が津波の浸水により故障し、さらに原子炉建屋内で水素爆発がおきるなど、炉心溶融の危険性が生じることになりました。政府の原子力災害対策本部は、福島第一原発から半径20キロメートル圏内を警戒区域に、事故発生1年間の積算線量が20ミリシーベルトに達する恐れのある区域を計画的避難区域に指定し、約11万人が避難を余儀なくされました。2012年からは「帰還困難区域」「居住制限区域」も設定されました。福島第一原発周辺の除染は進められていますが、いまなお5万人を超える住民が帰還できずにいます。
 事故はまだ収束していません。福島第一原発は廃炉となりますが、その工程は遅れ、廃炉費用も増大し、また汚染水の流出も生じています。周辺地域の除染にも時間がかかっており、汚染した土壌の最終的な処分先もまだ決まっていません。福島の農作物や海産物などの風評被害も残っています。福島の再生には困難な課題が山積しています。いまも各地で事故の被害への賠償を求める裁判が行われています。

 国民はこの事故で原発事故の恐ろしさを痛感することになり、事故直後から「脱・原発」を目指す運動が大きく高揚しました。数万人の集会が開催され、毎週国会周辺で大規模なデモが行われました。戦後の大衆運動は労働組合などが中心でしたが、ここには主婦や学生などを含め多くの市民が参加しました。
 しかし、経済界などの意向も受け、政府の原発推進政策はなかなか改まらず、こんにち安倍政権は停止していた原発の再稼働を進めています。また、インドなど諸国への原発輸出を推進しています。2017-年、小泉・細川両元首相などが原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟を設立し、原発ゼロをめざす法案を提案しました。「脱・原発」への新たな動きとして注目されます。

 自然災害の予防・備え、復旧・復興、原発政策などはいずれも、生存権、環境権、地方自治などの憲法の規定とその理念から検証され、そしてそのあり方や今後の計画が検討・具体化されなければなりません。それは東日本大震災の教訓を活かす道となります。
 なお、震災を経て、自然災害などの非常時のために、憲法に緊急事態条項を設けるべきとする憲法「改正」論が唱えられるようになっています。しかし、震災対応の遅れなどが憲法に起因しているわけでもありません。冷静な判断が必要になります。