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2017年

 
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「一強」と野党第一党の終焉…政界の迷走
H.O.記

 2017年、安倍政権とそれに対峙する野党をめぐって様々な政治的激動がありました。
 第一に、第二次安倍政権発足から4年ほど安泰だった安倍「一強」体制が大きく揺らぎ始めました。2017年7月の東京都議会選挙で、自民党は小池百合子・東京都知事率いる「都民ファーストの会」に蹴散らかされ、議席を57から23へと大きく減らすことになりました。自民党の惨敗には、森友学園問題(注1)と加計学園問題(注2)、いわゆる「もりかけ」問題が大きく影響しました。安倍政権は、その疑惑を隠そうと野党の臨時国会開催要求から逃げ続け、そして9月にようやく開会するも、その冒頭に衆議院を解散するという挙に出ました。そして、小池・東京都知事が結成した希望の党が勢いを増そうとする中で、その選挙準備が整わないうちに総選挙を実施したのです。その結果安倍政権は284議席(追加公認を含む)を獲得し、引き続き政権を担当することになりました。しかし、それでも安倍首相の自民党内での求心力は落ち、その後も支持率は低下していきました。安倍首相の自民党総裁選で3選と、念願の憲法「改正」への道に暗雲が立ち込めることになったのです。

(注1)森友学園の学校設置にあたってその土地が財務省近畿財務局から極端に安く売却された問題。その学校には安倍首相夫人が名誉校長を務めていたことから行政が歪められたと批判されることになった。
(注2)加計学園・岡山理科大学の獣医学部新設にあたって、加計学園理事長が首相の長年の友人であったことから、特別の便宜がはかられたのではないかと批判された。

 
 第二に、2009年に政権交代を実現した民主党が中心となってその後に生まれた、野党第一党・民進党が総選挙を通して"瓦解"しました。総選挙の直前、小池・東京都知事が希望の党を旗揚げしました。民進党は総選挙で希望の党に吹き飛ばされる危険を察知し、希望の党に「合流」することを即座に決断することになりました。こうして野党第一党は希望の党に"飲み込まれ"てしまいました。
 ただ、小池・東京都知事は民進党議員を希望の党に"招き入れる"際に、憲法や安保政策で選別・排除する立場をとり、小池人気は一気に失速することになりました。結局、総選挙では希望の党も躍進できず、野党第一党の座には、希望の党に参加しない議員たちで結成した立憲民主党が座ることになりました。

 2016年に東京都知事選で当選した小池氏はその人気をふまえ、その後築地市場の豊洲移転問題や東京オリンピック・パラリンピック(2020年)開催計画の"無駄遣い"などをめぐって、それまでの自民党都議団との対立構図を強調しながら旋風を巻き起こし、多くの都民・国民がその姿を喝采することになりました。この「小池劇場」の勢いが、都議選での自民党の惨敗を招き、安倍「一強」体制を大きく揺るがし、また野党第一党を瓦解させることになりました。こうして政界の構図が一変したのです。
 結局小池人気は失速することになり、国民はまたしてもポピュリズムの危うさを実感することになりました。過去の行政や周囲の誰かを悪者にして、マスメディアを引きつけながら、「しがらみを壊すためにたたかう」といって主役として振る舞う姿は、最近でも小泉元首相や橋下元大阪市長などにもみられました。そして国民はそのパフォーマンスに絶叫してはその結果に落胆してきました。今回もその繰り返しだったということでしょうか。
 「小池劇場」のキーワードとしては「ファースト」がありました。東京都議選で「都民ファーストの会」が大勝した時期、全国各地に「〇〇ファーストの会」が乱立しました。そのネーミングは2016年に米大統領選で当選したトランプ氏が掲げた「アメリカ・ファースト」にあやかったのではないでしょうか。ただ、「ファースト」には「第一主義」という意味もあります。そこには仲間うちの利益だけを優先する排外主義的な考え方が潜んでいるといえるでしょう。トランプ大統領の登場や英国のEU離脱などから、「〇〇ファースト」の広がりはいま世界的な傾向であるとも指摘され、その危険性に目を向ける必要がありそうです。
 民主主義によって権力を得た為政者による独裁、ということをどう阻むのか、そのためにはどのような政治制度にすべきか、国民の政治リテラシーをどう向上させるのか、いまあらためて考えてみなければなりません(参考:浦部法穂「『もう一人のファシスト』はいらない!」)。