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論稿「憲法訴訟の現代的転回―憲法的論証を求めて」

H・T記


 日本では、民主主義国家としては違憲判決が極めて少ないと指摘されています。裁判所が司法権の独立(76条3項)に基づいて違憲立法審査権(81条)を行使していれば、日本はずっと自由で民主的な国になったであろうとも言われています。本論稿は、憲法訴訟、すなわち当事者が事件に適用されている法律等の違憲性、などを主張している訴訟に関する裁判所、特に最高裁の姿勢の変遷を示し、あるべき憲法訴訟を追求しています。読者として予定されている法曹を目指す方々には是非十分に読み込み、論証方法を自分のものとしていただきたい論稿です。一般の方は、難しい学問上の概念を一つひとつ理解しようとすると大変ですが、その点は留保しつつ、判例の論理の大きな流れを把握するのに役立つでしょう。

 初期の最高裁は、抽象的概念である「公共の福祉」(13条)を決め手に人権制約を正当化し、立法府の判断を追認してきました。これに対する批判を受けて、人権を規制することによって得られる利益と失われる利益を比較衡量して判断するようになりました。学界はこれに対して、それでは判断基準が極めて不明確で思考過程が不透明であり、人権保障に薄い結果になることには変わらないと批判し、裁判所は精神的自由権が問題となっている場合などはより厳格に審査すべきであるなど、権利の性格に応じた判断基準を提示しました。違憲審査基準論であり、いわゆる二重の基準論です。最高裁はこれを受けて、労働基本権の制限が問題になった1966年の全逓中郵事件で、規制目的と規制手段の合理的関連性と目的達成のための必要最小限度の制約手段の選択が必要であるという厳格な発想(いわゆる目的手段審査)に転じました。しかし、精神的自由権や労働基本権等の分野ではその傾向は長くは続きませんでした。公務員の政治的行為の禁止を合憲とした最近の堀越事件でも援用されている、猿払事件の最高裁判決(1974年)の論旨は大変あいまいなものとなりました。

 憲法の解釈論を答案で明確に示さなければならない法曹志望者にとっては大変辛い状況が続いています。学界からは、目的手段審査では、あいまいな比較衡量論を理論的に明確に制約できないとして、「三段階審査」が提唱されるに至っています。筆者が「現代的転回」と称するゆえんです。憲法を専門的に学ぶ人たちにとっては選択肢が増えました。

 本論稿は憲法解釈のあり方をめぐる学界と裁判所の攻防を解剖しつつ、憲法判断の方法を筆者の切り口で整理しています。詳細で親切な説明です。次号3月号はいよいよ「三段階審査」の意義(と限界)に入ります。

【論稿情報】論者:駒村圭吾 法学セミナー2010年10月号〜2011年2月号所収(連載中)日本評論社発行 定価は各号1,200円(税込み)

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