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書籍『いま、憲法は「時代遅れ」か ―〈主権〉と〈人権〉のための弁明(アポロギア)』

H・T

 

 比較憲法学者として日本の憲法を世界的な時間と空間の中で議論してきた著者が、日本国憲法の全体的な問題状況を分かりやすく解説しています。氏は、現在政治の世界では、憲法を「国民の行動規範」と捉え直す作業が進行していることを冒頭で紹介しています(民主、自民両党の改憲構想)。「人権」については個人単位でなく、ジェンダー・子供・老人・少数民族という類別の単位として人権を理解しようという新しい流れが出ており、「主権」についてもグローバリゼーションの波で国家の決定権は大変限定的になってきていることを受けて、国家単位ではない新しい構想が必要ではないかという問題提起がなされていると述べています。

 本書は、今や憲法ないしこれまでの憲法論は時代遅れになっているのかという指摘に対する「弁明」ないし「反論」の形をとって、主に二つのことを述べています。

 第1に、個人を単位とする「人権」保障のために「主権」を持つ国家の権力を縛るという「立憲主義」は、時代遅れどころか益々重要になっていることを確認しています。19世紀の末から1970年代までかけて積み上げられてきた経済社会のあり方に関する憲法史が逆転して、ホッブスのいう人間の自然状態というべき欲望に基づく市場が暴走している、これに対してロックを源流とする「政治的市民」が国家権力を使っていかに歯止めをかけるかが重要であると述べています。

 第2に、主権や人権など憲法の諸原則は当初からある意味で理屈の世界で作られたタテマエでありフィクションだったことを直視しなければならないと強調しています。タテマエでありフィクションであることを認識しつつ、17世紀に遡るばら色の目標を追求し続けることが、第1で述べた憲法の基本を固めるためには欠かせないという主張は極めて重要だと思われます。

 「核と人間」「官から民へ」「官から政へ(政治主導)」「小さな政府へ」「政権交代」「愛国」「世間という抑圧者」「競争」「自粛」など近年のキーワードについても、近代以降の思想を踏まえて説得的に語っています。憲法の基本原則を確認しつつ現代を読み解くのに大変役立つでしょう。

【書籍情報】 樋口陽一著 平凡社 2011年5月刊行 定価:1575円(税込)




 

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