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論文「『個人の尊重』を考える」

T・S

 

 前週に引き続き、浦部法穂論文を紹介します。法学セミナーの特集「震災・『オウム』で憲法入門」所収の論稿で、阪神・淡路大震災の翌年に書かれました。阪神・淡路大震災の発生直後から1年あまりを振り返り、その様相から憲法13条の「個人の尊重」を問い直しています。
論稿は、阪神・淡路大震災における政府の初動が遅れた原因として、政府に入った第一報の死者数が20数名だったことをあげています。たいした人数ではないと認識されたということです。ひとの命の重さを数字の大きさでしか認識しない行政や国民の感覚の問題点を指摘します。
 そして、被災者支援に「個人の尊重」原理が貫かれていない事例をあげます。例えば、仮設住宅の入居者の選定で、お年寄りの優先したことです。善意の判断だったのでしょうが、お年寄りを地域から引き離し、それが多くのお年寄りの孤独死につながってしまいました。本当に一人ひとりの事情を考慮した対応が求められると問題提起します。また、仮説住宅のかわりにとクルーザーやゴルフハウスの提供の申し出があったのに行政がそれを拒絶した事例を挙げています。一部の人たちだけにぜいたくな施設を提供することは公平性に欠けるということが理由でした。しかし、住むところを失った人が目の前にいる時、公平性を理由にその人を放置してよいのかと問題提起します。厚生省が被災地の自治体に無償で送った医薬品の取り扱いの問題も挙げています。無償で届けられた医薬品が病院で使われなかったのです。無償の医薬品の患者への投与も医療保険の点数になったら、医療保険制度の適正な運営が妨げられるとの理由だったようです。これも医療保険制度を守ろうとするあまり、目の前にいる患者の命や健康を軽視する事例だと問題提起します。浦部教授は、被災者の住宅再建・生活再建のための「個人補償はできない」と言いつつ、一方で、住専の不良債権処理に公的資金投入した行政の論理の矛盾も指摘します。
 これらの指摘は、今回の東日本大震災においてはどうなのでしょうか。
 人々の間に不公平感が生じることのないようにしつつ、同時に一人ひとりに手を差しのべるということは難しいことではありますが、常に「個人の尊重」原理を念頭に入れた対応の重要性を説く論稿です。

【論文情報】法学セミナー1996年4月号所収 執筆は浦部法穂氏

<法学館憲法研究所事務局から>
当研究所は11月3日(木・祝)にシンポジウム「震災と憲法」を開催します。ここで浦部法穂顧問が「被災者支援と震災復興の憲法論」と題して講演します。こちら




 

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