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書籍『人権という幻〜対話と尊厳の憲法学』

H・T

 

 著者の遠藤比呂通さんは、1996年、36歳で東北大学法学部の憲法学の助教授を辞め、その2年後に大阪・西成の労働者街「あいりん地区」(釜ケ崎)で弁護士事務所を開業しました(朝日新聞2011.11.13)。20代から人間と憲法に対する深い洞察で注目されていました。

 著者は、弁護士として担当した、野宿のテントを強制撤去されたホームレス、夜間中学の学校運営を批判して卒業文集の作文を勝手に修正された在日韓国人女性、日の丸・君が代の強制に反対して処分された小学校教師、冤罪に苦しむ狭山事件の石川さんなど社会的に排除された様々な人々の「原風景」を出発点としています。担当したこれらの事件の当事者の生の声や裁判内容を紹介しつつ「人間の尊厳」という憲法の核心的な課題がないがしろにされている現実を浮かび上がらせています。
 そこから、「人権は、理論的には正しいけれど、実践には役立たない」という、専門家、そして私たち自身が持っている傾向や態度を鋭く告発しています。「学問」の世界では理論的な作業には先鋭に興味を示すが実践は「専門外」だとして回避している一方、実務家は「人権は御守りに過ぎない。勝てない事件は引き受けない。」と。

 「人権」は実際には機能していない「幻」のように見えます。しかし、著者は「幻」が実践と結びつき行為することによって、トマス・モアが描いた「ユートピア」が実現するという希望を熱く語っています。「幻」とは希望であり、「幻なき民は滅ぶ。」(旧約聖書)。

 本書の目的として、人権の理論と実践を歪めている現代正義論、国家主権論、民主主義論に批判的解釈を行うことが掲げられています。正義論では、国旗国歌の強制問題やキング牧師の非暴力不服従などを紹介しつつ、信頼の限界としての抵抗が社会の紐帯を形成すると語っています。主権国家の名の下では戦争さえ許され国家は生殺与奪の権限を持つこと、民主主義を理由に外国人が人間として様々な権利を奪われていることが語られています。近年の著名な憲法訴訟を当事者の目線から緻密に学ぶという点でもお薦めです。

【書籍情報】
2011年9月、勁草書房から刊行。遠藤比呂通著。本体2,700円+税



 

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