法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

憲法情報Now<憲法関連書籍・論文>

 

書籍『子どもと保育が消えてゆく』

H・T


 保育の問題とともに、社会保障のあり方、さらには日本の経済、政治や憲法のあり方まで突っ込んで考えさせられるブックレットです。

 これまでの保育は、子どもの尊厳の保障を目的とし、子どもの心身ともに健やかな成長、育成、愛護を理念としてきました(憲法13条、児童福祉法、子どもの権利条約)。子どもは社会全体で育てるという考え方で、国や自治体の公的責任の下に、親、保育士、地域などが力を合わせて、一人ひとりの子どもの個性と良さを大事にして伸ばすというものでした。共働きで2歳の娘さんを公立保育園に預けている著者は、家庭の延長のような温かさのうえに、保育士の専門性と愛情によって子どもが伸びやかに成長している今の保育所の様子を生き生きと描いています。

 しかし、現在の保育態勢にも数々の問題が放置されていることが紹介されています。1980年代から自助努力が強調され社会保障費の抑制政策の下で保育所もつぶされ、「待機児童」も増えてゆきます。残る保育所も安上がりと詰め込みの「政策」が採られてきました。そのため弁護士として著者が担当し紹介している事件のように保育中の事故死も増えてきました。

 この問題の多い現在の保育の制度が、「子ども・子育て新システム」「幼保一体化」の名の下に、消費税増税の「ダシ」の形で、実相が国民に知らされないまま急ピッチで「ビジネス化」「市場化」されつつあるという危機感から本著は生まれました。現行の児童福祉法は改正され、子どもを主体とする保育から儲けの対象とする商品にするシステムへと転換されようとしています。
 準備されている法案によれば、保育を市町村の窓口に申し込む仕組みから、親と保育を営む民間企業等との私的な個別契約に変わります。すると、利益は役員報酬や株主の配当などにも回され、保育の質の劣悪化、保育所格差拡大、保育料の高騰などにより今以上に子育てと仕事の両立が困難になることが予想されます。システム転換は子どもと親、ひいてはこれかの日本の将来にとって重大な事態を招くことが警告されています。

 「税と社会保障の一体改革」という名の下で消費税を増税し、高齢者への給付を減らして浮いたおカネをこれからの時代を担う子どもの福祉に回すという解説がマスコミを含めて盛んです。これに対する著者・川口創弁護士の回答は本書の題名のとおりです。

【書籍情報】
2012年2月28日刊行。かもがわブックレット。川口創著。本体600円+税



 

[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]