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論文「『経済大国』と改憲論」(紹介文・その1)

H・O


 1994年に刊行された『「憲法改正」批判』(労働旬報社)に収載された、浦部法穂・神戸大学教授(当時。現在は法学館憲法研究所顧問・神戸大学名誉教授)の論文です。
 1990年代、東西の冷戦は終焉しましたが、湾岸戦争が勃発し、日本はアメリカから軍事的役割を果たすことを求められ、自衛隊の海外派遣を始めるようになりました。そして「憲法改正」の動きが俄然勢いを増すことになりました。そうした時期に、浦部教授ら6人の憲法学者が「憲法改正」の動きに警鐘を発しようと、この本が出版されました。浦部教授はこの本に、その時期の「憲法改正」論の背景にある、日本の大国化・「豊かな社会」化の構造を検討し、日本人の生活のあり方自体の再検討を試みる論文「『経済大国』と改憲論」を収載しました。

 浦部教授はこの論文は次のような構成になっています。
 「一、「経済大国」日本の改憲論」:90年代に叫ばれ始めた改憲論の内容と特徴の分析。
 「二、「経済大国」と大国化路線」:大国化路線の諸相の整理・分析。
 「三、「経済大国」の維持は何をもたらすか」:日本は本当に豊かなのか。「経済大国」化の地球経済全体における問題点。
 「四、「豊かさ」の幻影をこえて」:人類の生存のための課題。

 浦部教授は「一、「経済大国」日本の改憲論」で90年代の改憲論の特徴と吟味すべき問題点を明らかにします。1980年代までは「改憲といえば自民党と相場が決まっていた」が、90年代は「自民党以外の政党からも改憲論が唱えられるにいたっている」「政党レベル以外でも、読売新聞が・・・キャンペーンをはり、・・・「護憲」派学者等の一部にも従来の「護憲」論への懐疑が広まりつつある」、という状況に注目します。
 そして、90年代の改憲論は「「経済大国」という日本の現状を前提に、その地位にふさわしい国際的な役割として軍事的「貢献」の必要性を説く点で、共通している」と、その本質的特徴を指摘します。さらには、「「『護憲』の立場を発展させ、憲法の創造的展開を図る」・・・ものとされる「創憲」論においても・・・日本の国際的地位と役割という基本的前提に関しては、じつは、改憲論とほとんど異ならない立場がとられている」と切り込んでいます。
 こうして浦部教授は、日本が「経済大国」を維持する目的から憲法「改正」問題が語られる状況に強く警鐘を発します。

続く

【法学館憲法研究所事務局から】
 浦部教授(当時。現在は法学館憲法研究所顧問・神戸大学名誉教授)の以上の分析・指摘は、その後経済の停滞を招いているこんにちの日本社会においても重要な意味を持っていると言えるでしょう。財界人や政治家が、中国やアジアでの経済成長の中で日本が生き残る必要性を謳い、国民の多くもそれに「同意」する状況があります。この論文執筆から18年を経過したこんにちの状況を浦部教授はどう分析しているのか、5月に開講となる連続講座「生活と憲法」は日本の経済・社会の根本問題を問う機会になります。



 

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